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Presented By SORCERIAN Next team.
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2017-2020, SORCERIAN Next Team
0 **「ネコを探してくれませんか」** -- 「此度も期待以上の活躍をしてくれたものよ。さすがはソーサリアン」 ここはペンタウァの王宮。あなたは任務を一つ終え、大臣に報告をしたところだ。十分な報酬をもらい、城をあとにする。 街道では様々な人が行き交う。擦り切れ、ボロボロになったマントをまとう旅人、大きな声で客引きをする商人。 あちらでは2台の荷馬車が、ぶつかったの何だのと言い争いをしている。賑やかなものだ。 それらを軽く眺め、あなたはこれからの計画を立てる。仕事終えた後だ。今はゆっくりしたい。お金もある。かねてより買いたかったあれを…… 「あのっ」 物思いにふけっていると、声をかけられた。くるりと目を巡らすと、そこには年端もいかない少女がいた。かすかに震えた声色。けれどしっかりこちらの目を見つめ。訴えた。 「ネコを探してくれませんか」 [次へ](3) 2 **無骨な主人が店番をする工具屋だ。** -- 「へい、らっしゃい」 様々な道具が展示された工具屋だ。だが、今日曜大工を始める予定はない。 シトリンは、向こうで大きなバケツに興味を持っている。覗き込み、頭にかぶったりしている。 そのままにして置いていこうとすると、バケツを被ったままのおばけが、たったと駆けてきた。 --☆☆☆-- ひとまず、戻ろう。 [戻る](5) 3 **ネコと言ったか。ネコと。** -- ネコ。 ……? ネコと言ったのだろうか? 聞き間違いではなく? 「お城から出てきたもの。偉くてすごい人なんでしょ? わたしのネコを探してほしいんです……」 王宮から命ぜられる数々の任務をこなしてきたソーサリアン。評判を聞きつけ、このように市井の人々から懇願されることもある。 だが、よりにもよってペット探しとは。 先の任務の疲れもある。あなたはやんわり断ろうとして少女を見下ろし、固まった。 涙を浮かべ、肩をか細く震えていたのだ。少女よ。それはずるいぞ。 その姿を見て、拒むことなど出来ようものか。断ろうものなら、明日の目覚めが悪くなるというものだ。 嘆息をひとつ。あなたは依頼を引き受けることにした。 [次へ](4) 4 **下水道の柵をすり抜けて行ってしまったネコ** -- 「わたしはシトリンと言います。ネコの名前は、メイシー」 「メイシー、ネズミに驚いて逃げ出しちゃったの」 なんと、それではあべこべではないか。よほど臆病なネコなのだろうか。 少女に案内されながら進む。向かう先は路地裏を通り、階段を降りて下水道へ。途中、小さな小屋を見かけた。管理小屋かなにかだろう。 --☆☆☆-- 「ここをすり抜けて行っちゃったの」 なんと、そこには頑丈な鉄格子。鍵がかかっており、簡単には開きそうもない。 格子の隙間は空いているものの、人が通るのは不可能だ。周りを見回す。鉄格子の高さは人2人分ほど。ご丁寧に、鋭く切った鉄線がむき出しにされており、ちょっと触りたくない。 どうしたものか。 [一端、階段を登る](20) 5 **ここは賑やかな大通り。奥には公園が見える。** -- 様々な店が立ち並ぶ、商店街。目を引くきらびやかな服、武人なら思わず手にとって確かめてしまいそうな業物の武具。甘い匂いの漂ってくるパンケーキ屋…… 歩いているだけでも右へ左へ、視線が目移りしてしまう。傍らのシトリンも、目を輝かせ、大変楽しそうだ。 「あの、あの冒険者さん。疲れたでしょう。お荷物持ちましょうか?」 無駄。 あなたはすでに必殺技、“何も聞こえません” を発動しているのだ。わかっているぞ。わざとらしい恩着せ、何かをせびろうとしているな? ぶうぅ、と膨れるシトリン。 また、奥の方には開けた、緑が見える。ちょっとした公園になっているようだ。 --☆☆☆-- どこへ行こうか。 [↑ 工具屋へ向かう](2 "-f01") [↑ 工具屋へ向かう](7 "f01,i03") [↑ 工具屋へ向かう](25 "i01") [→ 公園へ向かう](8 "-f02") [→ 公園へ向かう](9 "f02,i03") [→ 公園へ向かう](10 "i01") [← 下水道方向の路地裏へ向かう](20) 6 **管理小屋にはフガフガした老人が!** -- 市街からも外れたこの立地。ただの民家ということもあるまい。 下水道の管理人と当たりをつけ、あなたは小屋の玄関を叩く。 ところが、だ。 出てきた老人を見て、あなたはたまげる。 「フガフガ……」 目を見開き、体を震わし、開いた口からはよだれ。ただ事ではない……! 何かの奇病か、邪悪な呪術師の悪行か。あなたは次なる波乱の予感に、身構える。 こうしている間にも、どこかで新たな被害者が……! 「おじいちゃん、あごが外れたの?」 あご。 「フガフガ」 うなずく老人。 うむ。そういうこともあろう。 大事なくてよかった。いや、顎も大変だが、正体不明の奇病とかでなくて、ほんとに。ともかく、このままでは話をするのもままならない。 「ねえお願い、とんかちを持ってきて!」 シトリンがあなたに訴える。 「もう、何ぼうっとしてるんですか! あごが外れたらとんかちでしょ!」 そう、とんかちである。昔から、顎ハズレを治すにはとんかちと相場が決まっているのだ。 そうだっけ? なんだかよくわからなくなってきたが、立ち止まってはならぬ。手に入れるのだソーサリアン。とんかちを。明日を掴むために……! [戻る](20) 7 **無骨な主人が店番をする工具屋だ。とんかちは……見当たらない。** -- ヤスリや鋸、巻き尺……すぐにでも大道具づくりが初められそうな品揃えだ。 だがしかし。 店内をくまなく見回せど、なぜだかとんかちだけ見つからない。これだけ品揃えのよい店にしては、異常とも言えよう。 あなたは店主に尋ねる。 「ああ、ハンマーかい。悪いね、さっき子供に売ったので在庫が切れちまったんだ」 台帳をめくり、めくり。 「次に入荷するのは、ええと、3ヶ月後だね」 3ヶ月! そんなに待ってはいられない。 そんなに経ったら、老人の顎は地面まで伸びてしまうだろう。 それに、ネコも心配だ。シトリンも、泣きそうな顔をしている。 なにか他の手はないだろうか。 [戻る](5) 8 **公園を覗いてみる。ちびっこたちが何やら建造中だ。** -- 繁華街にそっと用意された緑。小さいながらも、民の憩いの場となっているようだ。 「何だあんたたち! ここはおいらの基地だぞ!」 おや。 あなたに向かって声を荒げるは、ちびっこ3人組。その後ろには、木切れや麻糸で組み上げられた幌のような何か。 なるほど基地。 平和そうに見えた公園も、実は戦時中だったというわけだ。 「帰れ帰れ!」 これは失礼した。あなたは、良識ある大人なので、ちびっこの罵声など涼しく受け流す。 痛て。 おでこに何かがぶち当たる。これは木の実……? 「帰れ~~!」 なんと。子どもたちの手には枝を組んだ武器。ぱちんこ。危ない。相手があなたでなければ悲惨な事件になるところであった。相手は子供と言えど激怒、大怪我をさせていたに違いない。 あなたは良識ある大人なので、鬼の形相で3人を追いかけ、泣かしておいた。 --☆☆☆-- ここには何もないようだ。 [戻る](5) 9 **公園を覗いてみる。ちびっこたちが何やら建造中だ。** -- 繁華街にそっと用意された緑。小さいながらも、民の憩いの場となっているようだ。 「何だあんたたち! ここはおいらの基地だぞ!」 おや。 あなたに向かって声を荒げるは、ちびっこ3人組。その後ろには、木切れや麻糸で組み上げられた幌のような何か。 なるほど基地。 平和そうに見えた公園も、実は戦時中だったというわけだ。 あなたはとんかちのことを尋ねる。工具屋で買っただろう。何に使うつもりか。まさかそれで人を殴ったりはしていないだろうな……? 「ちがうよ! 秘密基地を作るのに必要だったんだ!」 「貸して……? ダメダメ、これからもっと大きくするんだから」 拡張計画まであるとは。なんという長期プランか。しかし困った。君たちの未来の城には興味があるものの、悠長にそれを待っているわけにはいかない。 腕を組み、思案を一つ。 それでは、こういうのはどうだろう。君たちの手伝いをしよう。秘密基地拡張の手伝いをするから、その後でその道具を貸してくれまいか。 ちびっこたちは大きくうなずく。 --☆☆☆-- とっかんとっかん。 よく晴れた日に、半袖一枚になって子供らと一緒に秘密基地を作るソーサリアン。 これは思った以上に重労働だ。もしもあなたの年齢がADULT以上だった場合、大変な腰痛で悩まされることになろう。だがそれは後日の話。 おかげで無事、とんかちを借りることができた。さあ、ご老人のもとに急ごう。 [戻る](5) 10 **公園を覗いてみる。ちびっこたちがすぐさま駆け寄ってくる。** -- 「また来てくれたの! じゃあさ、じゃあさ、次はトンネル作ろうよ!」 目をキラキラさせながら駆け寄ってくるちびっこたち。大変だ。また労働力として骨まで搾取されてしまう。待ち受けるは過酷な労働の日々。 あなたは一目散に逃げた。 [戻る](5) 11 **とんかちは手に入れた。老人の顎を治そう。** -- 「おじいちゃん!とんかち持ってきたよ!」 シトリンは、ためらいなく老人の顎に向けてとんかちを振り上げた。 硬い金属が御老体の柔肌に突き刺さる! ごすっ 鈍い音がして、老人の顎がパクパクと動く。 「あ~あ~治った。助かったよお嬢ちゃん」 あなたはほっとため息をひとつ。さすがはとんかち。外れた顎を治すには、とんかちと相場が決まっているのだ。 ようやくと言ったところだが、改めて事情を説明した。下水道にネコが逃げ込んでしまったこと。鍵がかかっていて入れないこと。 「あの中に入っちゃったのか! 実は下水道の奥は魔物が発生していてね。 それで鍵をかけていたんだ」 「普通の人には危なくて貸すことはできないが、見たところ君は腕が立ちそうだ。 今日中に返してくれると約束するなら貸してあげよう」 鍵を貸してもらえることになったが、不穏な話を聞いてしまった。シトリンと出会ってから、すでに半日が経過しようとしている。ネコは無事だろうか……? --☆☆☆-- 下水道に急ごう。 [戻る](20) 12 **ついに下水道の中へ。そして聞こえる不穏な音!** -- 鉄格子の前まで来た。カシャリ。回る鍵。 ギギイ……きしむ蝶番。サビ臭い匂いがして、鉄格子が開いた。 中に入り、下水道を進む。澱んだ水、鼻をつく匂い……少女にはきつかろう。外で待っていることも勧めたが、一緒に行くと言って聞かなかった。 それよりも魔物である。か弱き猫が今も無事でいるか、そんなに期待はできなかろう。あなたはそれをシトリンに告げるか悩む。 むやみに怖がらせてもいけないが、最悪の場合に受け止めるだけの緩衝が欲しいものだ。 逡巡。思い悩むのはいつものこと。どれだけ悩んでも、いつだって、間違える。 正しい道なんて選べやしないのだ。そして、その時間すら、与えられないのだ。 気配を感じ、ハッと奥の暗がりに目を凝らすあなた。 ギラリ。輝く赤い光。そして、ズリズリという耳障りな音……! [次へ](13) 13 **奥から現れたのはムカデのような怪物** -- 「やだ! 気持ち悪い!」 わさわさと多数の足を蠢かせ、生理的な嫌悪感をもよおわせる。 あなたはシトリンを背にかばい、戦闘態勢を取る。ペンタウァの地下にこんな魔物が潜んでいたとは。 闇の活躍もこれまでだ。ここで倒してやる。 こちらの覇気に呼応するかのように、襲いかかってくるムカデもどき。 待ち受けるあなたのもとへ、ものすごいスピードで迫りくるその攻撃は――しかし届くことはなく。 さらに後ろから現れた巨大な影に包み込まれ、轟音、振動……くぐもった悲鳴。 [次へ](14) 14 **怪物は瞬く間に弑された。そしてついに――** -- 何が……起きた? ようやく我に返り、前を見やると、そこは。 中程からちぎられ、半分は壁にたたきつけられて絶命したムカデもどき。暗がりからゆったりと姿を現したのは、 巨大な、虎……? 真っ白な体毛、琥珀に輝く瞳。剣すらも噛み砕きそうな、鋭き牙。その口には憐れ、ムカデもどきの残骸がぶら下がっている。 新たに現れた怪物に、困惑する。敵か味方か。 ムカデもどきを倒してくれはしたものの、こちらを貫く視線に友好的な色は感じられない。今にも襲いかかってきそうだ。 「メイシー!」 シトリンが叫ぶ。メイシー。それは猫の名前だったはず。慌てて周りを見回すが、猫など見当たらない。かわいそうに、恐怖で幻覚を見てしまったのか。 「どこ見てるんですか。メイシーはこの子」 そういって指差す先は。どうみても虎の怪物。 ネコ……? 知らない間に幻覚を見ていたのは、こちらの方だったのか。ネコとはいったい何だったのか。あなたが、自身の今までのネコ像を崩したり組み立てたりしている間に、シトリンは猫のそばに近寄っていく。 「よかった無事で……心配したんだよメイシー!」 微笑ましいシーン。無事に飼い主のもとにたどり着いた猫。 なのに――悪寒。違和感。 それは、虎の顔つき。肩を怒らせ、険しい顔。とても、主人との再開を喜ぶ様子は感じられない。 危ない! あなたは声を張り上げ。それと虎の口が大きく開くのは、ほぼ同時。 [次へ](15) 15 **ネコ=虎??** -- ガブリ。噛み合わされる牙。 それはシトリンの顔、わずか拳一つ前の距離で行われたこと。あなたが後ろから掴んだ襟首、それがシトリンの命を救ったのだ。 ほっと胸をなでおろす間もない。あなたは自分の予感を信じ、シトリンを抱え、横っ飛びに跳躍する。 そこに飛び込む重量級の旋風。間一髪。虎は今まであなたがいた場所に突っ込むと、その勢いのまま壁に激突する。 飼い主までも見境なく襲うとはどういうことだろうか。やはり、ネコのフリをした虎ではないのか……! 「違うよ、ほんとにメイシーだもん! 今はちょっと興奮しているだけ……お願い、傷つけないでください」 難しい注文を出す。仕方あるまい。 ならば、その興奮だかなんだかを解いてやらねばならない。 虎、メイシーは、壁をぶち抜いて刺さった頭を無理やり引っこ抜き、首周りについたガレキを振り落としているところだった。振り向きこちらを睥睨、大きく息を吸い込み。 「GOAAAAAAAAAAHH!!」 ビリビリと震える空気。 今まで、本当にどうやって飼ってたの? 「いつもすっごく大人しいんだから。 あ、でも前に暴れちゃったときは、お屋敷の男の人が10人くらい集まってくれて、 落ち着かせてくれたんです」 大惨事か!軽いめまいを感じつつ、気を引き締める。 ともかく、ここは足場が悪い。加えて一本道。後ろから別の魔物が現れようものなら、一巻の終わりだ。 ならば、取りうる手は―― [逃げる!](16) 16 **逃げる! しかし――** -- シトリンを小脇に抱え、あなたは一目散に駆けだす。 後ろから低い咆哮、ドスンドスンという地響きが聞こえる。絶対に振り向きたくない。 下水道の入り口の鉄格子が見えてきた。そうだ! あなたは扉をくぐると、鍵をガチりとかけた。あの体格のことだ、もしかしたら破壊されるかもしれない。だが時間稼ぎはできよう。 「あ、あっ意味ないですそれ!」 シトリンが叫ぶ。どういうことだろうか。 そのとき、追いついたメイシーが鉄格子前で軽く歩を止めたかと思うと。重心深く沈み込み。 姿が消えた。 ……上だ! 跳躍したのだ。あまりに高く飛んだメイシーは。鉄格子と天井の隙間を超え、あなたの前に、再びその巨躯を見せしめた。 …… 『ここをすり抜けて行っちゃったの』 思い返すは、シトリンとの以前の会話。 すり抜けて。……天井と、鉄格子の隙間を。 間違ってないけども! 間違ってないけども! うろうろと、闊歩するメイシー。無理だ。もう、背など向けられない。向ければ最後、その背中に噛みつかれる未来が、ありありと想像できる。 なにか、なにかないのか。メイシーをおとなしくする何かは! 「10分だけ耐えて! お願い! すぐ戻ってくるから!」 そう言って階段を駆け出すシトリン。止める暇もない。 一体、どこへ? ちらりと脳裏に疑惑。まさか、逃げる気では……? いや。 あなたはかぶりを振る。今はシトリンは関係ない。どうあれ、メイシーを町の中に入れるわけには行かないのだ。ここで食い止めるのだ。覚悟を決め、武器を構えるあなた。 [次へ](17) 17 **逃げられないのなら、ここで決着をつけるしかない** -- ぐるぐるぐる……口を歪ませ、鋭い歯をのぞかせながら唸る獣。ガッ、ガッ、ガッ……前足を石畳に叩きつけ、白い粉を巻き起こす。 ……本当にネコか? ペットとして、人と本当に暮らしていけてるのか?餌、人間とかじゃないよね? いろいろと不安になってきたが、もう後には引けない。あなたが戦士ならば武器で、魔術師ならば魔法で耐えしのぐ。 ただ戦うだけではない。シトリンの顔が浮かぶ。あの顔を悲しみに沈ませるわけにはいかない。怪我や、命に関わる攻撃をするわけには行かない。 なんとしても、しのぐのだ。 そう思った矢先、眼前に鋭い爪。戦場での逡巡は命取り。 ふと意識をそらしたすきに、息がかかる距離まで近づかれていたのだ……! とっさに、重心をずらし倒れ込むようにしてかわす。 頭上を通り過ぎた爪は、その勢いのまま、床に叩きつけられた。直撃は免れたが、細かい礫があなたの顔を襲う。 ……前言撤回。少しくらい、怪我させてもいいよね……? でないとこちらが殺されてしまう! [次へ](18) 18 **戦い疲弊するあなたに、救いの手……!** -- 迫りくる牙と爪をなんとかいなし、耐えしのぐあなた。合間に反撃を入れるも、ひるむ様子もなく。タフ極まりない。 疲労も激しい。これ以上は持たないぞ……! そのとき―― 「これを使って!」 聞き慣れた声。宙を舞う、キラリと光る筒状のもの。思わずキャッチ。 シトリン……! 戻ってきたのか。 あなたは拳を開き、彼女が投げてよこした物を見つめる。これは……缶詰? 可愛らしい猫柄のデザインが―― 「だめ! 持ってたら! 早く放って!」 あなたが事態を飲み込むより早く、キラリと光る肉食獣の両目。 今までの比ではないスピードで襲い来るメイシー。あなたは叫び声をあげるだけで精一杯だ。 持っているものが「猫缶」だと気づいたときには、すでにメイシーにのしかかられ、あなたは座布団になったあとだった。 にゃぁ~~~ごぉ~~~~! 確かに聞いた。甲高い鳴き声。果たしてそれは、メイシーのものだったのか。それとも、座布団になった誰かのものだったのか。 [次へ](19) 19 **そして戦いは終わる。寝ているメイシーを荷台に、ペンタウァの街を歩く。** -- 「大変な目に巻き込んじゃって、ごめんなさい」 全くだ。満身創痍のあなたは肩をすくめる。 ここはペンタウァの街道。いつしか日も落ちる時間。町を赤く染める赤い夕日に、今日の疲れが思い返される。 下水道での壮絶な戦いは、終わったのだ。あの後メイシーはと言うと、猫缶に喜んでむしゃぶりついた。ガリゴリ、ガリガリ、缶詰のままかじりついていたような気もするが、もう細かいことは気にしない。 そして、満足したのか昼寝を始めたのだ。 今は車輪のついた荷台にメイシーを乗せ、街道を歩んでいたところだ。すれ違う人々がぎょっとした顔をするが、ええいもう知らん。堂々としていればよいのだ。 「お願い、聞いてくれてありがとうございます」 隣にならぶシトリン。ペコリと頭を下げる。 「今度問題起こしたら、もう一緒にいられないからって、 父様も母様も」 どことなく沈んだ表情。事情があるのだろうか。 励ましの一つでもかけてやりたいところだが、何も知らない身ではできることもなく。とても、歯がゆい。 「でもそんなのは嫌だったから……メイシーと離ればなれになるなんて考えられない」 あなたに声をかけられてよかったと。シトリンはそう言うと。 「見ず知らずのわたしのために力を貸してくれて 本当に嬉しかった……! ありがとう!」 ああ、ああ。何ということだろう。 花が咲くような笑顔。 これが見られたのなら、今までの苦労がすべて吹き飛ぶ――とまでは言えないが。それでも。 価値があったんじゃないかと。そう思えるような。 そんな、波乱あふれる小冒険だったのだ―― 20 **人の気配の少ない路地裏にて** -- 近くには管理小屋と思われる奥屋、下水道へと向かう階段が見える。 路地の向こう側には、人の行き交う商店街が見える。 [↑ 管理小屋を訪ねる](6 "-f01") [↑ 管理小屋を訪ねる](23 "f01,i03") [↑ 管理小屋を訪ねる](11 "i01,i04") [↑ 管理小屋を訪ねる](21 "i02") [→ 商店街に向かう](5) [← 階段を降りる](22 "-i02") [← 階段を降りる](12 "i02") 21 **管理小屋にて。ソーサリアンは見た……!** -- 今更この小屋に用はあるまい。窓から中を覗いてみる。 ご老人は座椅子に腰掛け、鉢に入ったまんじゅうを頬張っている。平和そうなことだ。 かと思うと、次は人の頭ほどの大きさもありそうな、木の実をかじりだした。ゴリゴリ、こちらまで音が聞こえてくる。 おい! また顎を外すぞ! 今度は面倒見ないからな! 食欲旺盛なご老人を置いて、先を急ぐ。 [戻る](20) 22 **下水道にて** -- 鉄格子の前まで来た。 やはり鍵がかかっており、扉は開きそうもない。 [戻る](20) 23 **管理小屋ではフガフガした老人が、あなたを待つ** -- 「フガフガ」 小屋を訪ねると、相変わらずの姿の老人が、期待に満ちた顔でこちらを見つめる。 うむ。わかっているよご老人。事は一刻を争うと。 「わたし、きっととんかちを持ってくるからね……!」 涙ながらに駆けていくシトリン。美しい光の軌跡がキラキラと輝く。 [戻る](20) 24 25 **工具屋だ。もうここに用はないだろう。** -- 「へい、らっしゃい」 工具屋に来た。冷やかし同然に何度も訪れているというのに、愛想よく対応してくれる店主。 だがすまんな親父。欲しいものはすでに手に入っているのだ。 [戻る](5)