SGML(Sorcerian Gamebook Markup Language) Initialized...
Presented By SORCERIAN Next team.
シェア
Tweet
2017-2020, SORCERIAN Next Team
0 666年に一度訪れる数多の災厄が退けられ、ペンタウァに平穏が戻ったのも束の間だった。 辺境のマスグレーヴ神殿が謎の軍勢によって陥落したという報告、さらにはあのキングドラゴンが復活するという噂で、王都は浮足立っていた。 王様は方々にソーサリアン達を遣わし、事態の収拾に努めたが、一度人々を襲った不安の火種は、なかなか打ち消すことができない。 「ドラゴンの大群が襲ってくる」「アゾルバ王国でクーデターが起きたってよ」「もうすぐペンタウァは陥落するぜ」「早く逃げなければ……」「いっそ王城を乗っ取って……!」 今や王都は、いつ暴動が起きてもおかしくないほどの不穏を呈していた。 しかし、希望もあった。 名もなき孤島でドラゴンスレイヤーが発見されたというのだ。 ドラゴンスレイヤー。神にも等しい生命力を持つというドラゴンたちを屠ることのできる、世界でただ一つの武器。 ペンタウァの人々は、ソーサリアンがドラゴンスレイヤーを持ち帰るのを、今か今かと待ちわびていた。 そんな、底なしの不安と一握りの希望の混在する空気の中で、王様に謁見を願い出た一人の人物がいた。 ** このシナリオでは、主人公の職業(ステータス画面のJOBの欄に設定されている職業)が展開に影響します。** ** プレイ中、指示がある場合を除いては、主人公の職業を変更してはいけません。** ** 主人公のCLASS(種族及び性別)/AGE(年代)によって、就ける職業の内訳は異なります。** ** どんな主人公でもシナリオをクリアすることは可能ですが、主人公によって難易度や攻略ルートが変わります。** [その頃あなたは……](2) 2 あなたはちょうど冒険から帰還して王様に事の次第を報告するところだった。 「うーむ、状況は芳しくないようじゃの。やっとの思いで災厄を打ち破ったばかりじゃというのに……」 普段はどんな困難を目の前にしても決してめげることのない王様ですら、表情を曇らせている。 「とにかく、できることをするしかない。キングドラゴンの襲来に備えて、ペンタウァの防備を固めるのじゃ」 「その役目、儂が仰せつかった!」 突如として、あなたの背後から野太い声が響き渡った。 振り返ると、一人の男が立っている。 薄水色の長いローブをまとった長身の人物だ。肌は浅黒く、その顔に刻まれた無数の傷は、男が平穏無事とは程遠い人生を送ってきたことを雄弁に語っている。 ターバンから漏れ出る男の眼光を見て、王様の顔色が変わった。 「そなたはまさか……」 「ふふ、老けたな、ペンタウァの王よ。まさかこの顔見忘れたわけではあるまい」 砂漠王ルワン。 不老不死と噂される強力なウィザード。かつて砂漠のオアシスに呪いをかけ、一帯の覇権をかけて王様と争ったこともあるこの男は、今も交易都市ヴァラージの実質的な領主として長く君臨している。だが最近は自分の屋敷から出ることは滅多にないという話だった。 「ルワン……そなた一体、何をしに来た」 訝しがる王様に向かって、ルワンは不敵な笑みを浮かべる。 「言っただろう。ペンタウァ、いや、この世界を救ってやろうというのだ」 ルワンは仰々しく両手を広げる。 「祭壇を用意しろ。そうすれば儂の魔力で、ペンタウァ全域に結界を張ってやる。そうすればキングドラゴンとて恐るるに足らず。あとはゆっくりと討伐軍でも組織すれば良かろう」 「ふうむ……」 王様はルワンを信用したものかどうか迷っているようだ。 [様子を見守る](20) [ルワンに襲い掛かる](4) 3 あなたはペンタウァの王城の中にいる。 城内は静まり返っている。普段は衛兵や商人たちでごった返している通路もがらんどうだ。 まるで、あなた以外の全員が異世界に転送されてしまったかのようだ。 それとも、あなた自身がペンタウァ城そっくりの別の場所に転移したのか。 不安を抑えながらあなたは目的地へと向かう。 [衛兵の詰所に向かう](43 "-f03") [衛兵の詰所に向かう](59 "f03") [厨房に向かう](24) [宝物庫に向かう](22 "-i01") [宝物庫に向かう](57 "i01") [王様の謁見室に向かう](45) [中庭に向かう](39) [城の外に出る](13) 4 ルワンはかつてゴールドドラゴンの幻を使ってヴァラージを混乱に陥れた男だ。信ずるに値せず。あなたは有無を言わさずルワンに襲い掛かった。 「馬鹿め、死に急ぐとは!」 ルワンは身を翻して体勢を整え、懐からナイフを取り出した。 [ルワンを倒した](5) [HPかMPがゼロになった](55) 5 「ぐは……っ!」 あなたの一撃でルワンはがっくりと膝をついた。 「お、愚か者め……この国の危機に、人間同士で争って、なんとするというのか……」 不老不死とはいえ、致命傷を受ければ生きてはいられないようだ。 ルワンの最期の表情は、苦悶でも憎悪でもなく、どこか諦念を感じさせるものだった。あなたは一抹の虚しさに襲われながらその亡骸を見下ろした。 その瞬間だった。 「馬鹿なヒューマノイドどもが……!」 戦いに集中していたあなたは背後に迫る殺気に気付けなかった。 暗闇に響き渡るようなしわがれた声。 その主を目に留める間もなく、あなたの体は、跡形もなく消し飛んでいた。 6 どうやらこれまでのようだ。 あなたは薄れゆく意識を少しでもつなぎとめようとしたが、努力の甲斐なくばったりと倒れ伏した。 闇の中で、あなたは誰かのあざ笑う声を聞いたような気がした。 それははるか地の底から響き渡るような、おぞましい悪意に満ちた声。 声はすべてを飲み込み、ペンタウァ中を駆け巡って聞く者を傷つけていく。 死神にその身を委ねつつあったあなただが、声がその安らぎに水を差した。 脳裏にペンタウァの人々の映像が浮かぶ。 これは終わりではない。否、このままで終わるわけにはいかないのだ。 あなたは渾身の力を振り絞って目を開けた。 [すると、そこには……](3) 7 金竜が下を向くと同時にあなたは急上昇した。両手に構えた武器をまっすぐ頭上に掲げ、光の矢のごとくに突進する。 その行く手には、ちょうど首を屈めた金竜の喉元があった。 ドラゴンの喉には逆鱗という逆向けた鱗がある。 炎のブレスを吐くために酸素を取り込むための仕組みだとか、かつて鰓呼吸をしていた名残だとか言われているが、定かではない。 逆鱗とはドラゴンにとって、唯一固い鱗に覆われておらず、しかも重要器官に直結している、絵に描いたような弱点なのだ。 金竜は喉の周りに瘴気をまとって弱点をガードしていたが、あなたの度重なる攻撃で瘴気は既に霧散していた。 「ま、さか……」 その無防備な逆鱗に、あなたの武器が深々と突き刺さった! 「グワーッ!」 断末魔の咆哮を上げて金竜は悶えた。体中から瘴気を放ち、声ならぬ声は大地をも震わせる。 バランスを失ったあなたは弾き飛ばされ、天守閣の直下にある塔の壁に叩きつけられた。 全身が軋むように痛むが、ここで倒れるわけにはいかない。 あなたは塔の壁を蹴って再び空中で金竜と対峙する。 「ソーサリアン!……もう許さんぞ!造物主によって与えられたこの力をもって、ペンタウァもろともお前を消し去ってくれる!」 そう叫び、金竜は全身の鱗を逆立てた。長い体躯をうねらせて大きく息を吸い込む。 火炎のブレスが来るのだろうか。今から突撃しても間に合わない。かといって避けたら王様に当たってしまう。そんな考えが一瞬にしてあなたの脳裏を駆け巡った。 だが、次に見た光景は、あなたの思考のすべてを吹き飛ばした。 金竜はブレスを吐いた。 だがそれは、炎や氷ではなかった。 物理的な力ではない。力、そのものの塊だった。 暴力的なエナジーがあなたに向けて叩きつけられた。 [耐えた!](40) [HPかMPがゼロになった](52) 8 チャンスは今しかない。あなたは宙を駆って金竜の顔元へと躍り出た。 「こしゃくな!」 竜が体躯をのけ反らせる。炎の息を吐くための下準備だ。 だが、金竜が大口を開けて喉から業火をほとばしらせるより一瞬早く、あなたは両手に構えた武器をその柔らかい舌に叩きつけた。 「ぐ、ぐおっ……」 金竜が再びのけ反った。今度は顔に苦悶が浮かんでいる。 蜂の一刺しにも満たない一撃だが、敵の気勢を削ぐ程度の役には立ったようだ。 金竜が体勢を立て直す前に次の攻撃に移らねばならない。 [金竜の胴体を狙う](33) [金竜の眼を狙う](27) [金竜の髭を狙う](26) [金竜の逆鱗を狙う](38) 9 幸い、あなたにとってこの程度の鍵開けは慣れっこだ。 試行錯誤すること数分、かちゃりという小気味良い音とともに、掛け金の抵抗がなくなった。 あなたは慎重に扉を開く。 宝物庫は思ったよりも狭いものだった。儀式のときだけ用いられる「王様の杖」を筆頭に、いくつかの伝説のアイテムが陳列されているが、金銀財宝の類はほとんど収められていない。ペンタウァ王家は最近あまり資金繰りがよろしくないとの噂だが、既に主だったものは処分してしまっただのだろうか。 それに、ここに来た目的は決して火事場泥棒ではない。この状況を打開するためのアイテムか手がかりを得るためなのだ。あなたはそう自分に言い聞かせつつ、宝物庫を見て回った。 すると、あなたはおかしなものを見つけた。 飾り棚に置いてあるそれは、太く短い棒だった。表面には光沢があり、黒く輝いている。明らかに魔力を帯びているのがわかる。 あなたは吸い寄せられるように近づき、その棒を手に取った。 次の瞬間、棒が一条の光を放ち、にわかにその形状を変えていく。 それを見て、あなたはこの棒の性質と使い方を完全に理解した。 この棒は、名前を「ミリアード」という。持ち主の意志に呼応してその形を変えるのだ。剣でも、斧でも、杖でも、はたまた防具でも自由自在だ。 だが、一度形状を固定させてしまうと、しばらくは変更させることができない。 ** あなたはこのミリアードを何に変化させるかを、ここで決めることにした。** ** 以下のいずれかを選ぶこと。** **・武器:あなたのSTRに3を加えること** **・指輪:あなたのINTに3を加えること** **・小手:あなたのDEXに3を加えること** **・サークレット:あなたのKRMに3を加えること** あなたはミリアードを装備した。もうここには用はない。 [宝物庫を後にする](3) 10 「何奴!」 扉の向こう側には、声のした通り、衛士長ともう一人兵士がいた。 あなたはとっさに言い訳しようとしたが、相手は聞く耳を持たない。手に手に剣を抜いて襲い掛かってきた。 ペンタウァの兵士とやり合うのはできれば避けたいが、この先にとらわれている人物と接触するにはどうしてもここを通り抜けなければならない。それに、この兵士達が果たして本物かどうかもわかったものではない。あなたは覚悟を決めて得物を抜いた。 [兵士たちを倒した](30) [HPかMPがゼロになった](6) 11 拘置所に監禁されていたのが本物のエスメレーなら、ここにいるのはエスメレーに化けた何者かということになる。あなたは警戒しながら学院の中を探った。 果たして、学院の図書室のカウンターの向こうには、エスメレーの姿が見える。 「ソーサリアン……」 その人物はあなたに驚いて声を発する。顔かたちも声色も本物そっくりだ。 ${if i03} だが、プレーンマスク越しに見ると、驚いたことにその顔がまったく見えない。あなたは背筋に寒気が走るのを感じた。 ${/if} あなたは武器を構えてカウンター奥の女性に突きつけた。 「どういうおつもりですか?」 相手は身じろぎ一つせずにあなたを見つめてくる。そのつぶらな瞳に幻惑されそうになるが、あなたは慎重に距離を取りながら相手を問い詰めた。 「……フフフ、なるほど。あのエルフの魔女も見た目ほど愚かではなかったということですね」 彼女の口調が変わった。軽やかな声質は同じだが、その音色には人を人とも思わないような冷徹さが込められている。 「どうやらあなたも術が解けかけているようですね。でも、目覚めの時までにはまだ時間がありますよ。もうしばらく、ゆっくり休むと良いでしょう。そう、取り返しがつかぬことになるまでね!」 そう言って彼女は懐から一つの宝石を取り出した。見事にカッティングされた大粒のダイヤモンドだ。だがその宝石は、光を反射して七色に輝いている。そのあまりにも美しいきらめきに、あなたの目はくぎ付けになってしまう。 この宝石を何とかしなければ、相手の術中に落ちてしまう。あなたの頭の中にどんどん霞がかかっていく…… [なす術もない](46) [目覚めの薬を飲む](49 "i02") [この宝石は本物ではない!](31 "xほうせきさいくし") 12 あなたは長老の家に入った。 普段は白い顎髭を生やした長老が出迎えてくれるはずだが、家の中には誰もいなかった。 それどころか、ここには人の住んでいた気配すら感じられない。まるで絵本か何かの中に紛れ込んでしまったようだ。 室内をざっと見まわしたが、めぼしい手掛かりは見つからない。 諦めて家を出ようとしたとき、あなたは長老の部屋の机の上に、見慣れぬ黒い仮面が置かれているのに気付いた。 舞踏会で使うような、手の込んだ装飾の施された仮面だ。両目を覆うようになっていて、二つのレンズがはめ込まれている。 試しに装着してみると、レンズを通して見た光景は若干色あせて見えるが、特に変わった様子はない。 どこかの国には、隠し通路が見えるようになる代わりにモンスターが見えなくなる仮面があるという噂を聞いたことがあるが、これはそれとは異なるようだ。 特に呪いの力を感じるわけでもなく、外そうと思えば難なく外すこともできる。 だが仮面がなんとなく気に入ったあなたは、装着したまましばらく探索を続けることにした。 あなたは知る由もないが、実はこの仮面は「プレーンマスク」と呼ばれる秘宝で、レンズを通して異世界の存在を見ることができるのだ。どこで、どんなものを見ることができるのか、それはあなたの行動次第だ。 [長老の家を出る](13) [家の中をもう少し観察する](42) 13 あなたは、ペンタウァの城下街にいる。 普段は道行く人でごった返している大通りだが、今は動く影の一つもない。 まるで時間が止まってしまったようだ。それとも、蜃気楼でも見せられているのだろうか。 街の地形はあなたの憶えている通りだ。もしもこれが誰かの作った偽の町並みだとしたら、大した再現性だ。 しかし一体どこに向かうべきだろうか。 [武器と防具の店に行く](14) [魔法使いの家に行く](17) [薬屋に行く](16 "-i02") [薬屋に行く](58 "i02") [寺院に行く](15) [道場に行く](19) [長老の家に行く](12 "-i03") [長老の家に行く](42 "i03") [魔法学院に行く](56 "f02") [魔法学院に行く](60 "-f02") [城内に入る](3) [ペンタウァから逃げ出す](50) 14 あなたは、ボブが主人を務める「武器と防具の店」を訪れた。 扉を開けたあなたの目の前に、なんとボブが仁王立ちして斧を構えている! ${if f04} 一度コテンパンにしたのに、もう復活したのか。なんともタフな男だ。 ${/if} ボブの目はうつろで色を失っており、口から出るのはもごもごした声ならぬ声だ。明らかに正気ではない。鎧こそ着けていないが、前かがみで全身を戦慄させ、まさに一触即発だ。 武骨だが人のいい武器屋の親父の面影は今やどこにもない。あなたはなんとかボブをなだめようとしたが、功を奏さず、ボブは両手斧を力いっぱい振り下ろしてきた! こうなれば戦うしかない。 [ボブを倒した](35) [HPかMPがゼロになった](6) 15 ${if -f02} あなたは寺院に入ってみた。 普段ならトンスーラが特徴の人のいい神父がお勤めをしているのだが、今は誰もいないようだ。 せっかくだからお祈りでもしていこうか……と思った瞬間、あなたの背筋に何か冷たいものが走った。 寺院の奥から、何か底知れぬものの気配を感じる。 広間の裏には、神父の作務所があるはずだと思ったが、もしかしたらここはあなたの知っている寺院ではないのかもしれない。 果たして、作務所の奥に進んでみると、そこには見たことのない扉があった。 古いテーブルと家具が整然と並ぶだけどの質素な部屋には全く不釣り合いな、黒檀で作られた漆黒の両開きの扉だ。 表面には異国の文様がびっしりと刻まれている。 そして、扉の奥からは、例えようのない気配が感じられた。見ているだけで気力を吸われそうだ。 ${/if} ${if f02} あなたは再び寺院を訪れた。 院内は静まり返っている。厳かというよりは、単なる静寂が辺りを支配していた。 作務所も調べてみたが、先に侵入した扉は影も形もなくなっていた。 あなたはどこかやるせない思いに襲われながら、寺院を後にする。 ${/if} [扉の奥に踏み入る](36 "-f02") [寺院を出る](13) [僧侶の勘を働かせる](21 "xそうりょ") [祈祷師の勘を働かせる](21 "xきとうし") [悪魔祓いの勘を働かせる](21 "xあくまばらい") [墓守の勘を働かせる](21 "xはかもり") [葬儀屋の勘を働かせる](21 "xそうぎや") 16 あなたは薬屋の扉を叩いた。 返事はない。鍵はかかっていないようだ。 開いてみると、案の定、店の中はもぬけの空だった。一体薬屋の主人はどこに行ってしまったのだろう。 カウンターの上にはいくつかのハーブが乱雑に並んでいる。隣に試験管や加熱ツボなど一通りの器具が揃っている。 これを使えば何かの薬が調合できるかもしれない。しかし、その調合を指南してくれる薬屋がここにはいないのだ。薬の調合には専門知識が必要になるのだが……? [錬金術を試す](29 "xれんきんじゅつ") [医学の知識を引き出す](29 "xいしゃ") [薬学の知識を引き出す](29 "xやくざいし") [見覚えのある薬草を使ってみる](29 "xやくそうとり") [ワインづくりを応用する](29 "xワインづくり") [チーズ作りを応用する](29 "xチーズづくり") [薬屋を出る](13) 17 あなたは魔法使いの家を訪れた。 普段ならここでは街一番の魔法使いエスターが七星魔法をかけてくれるのだが、今は不在のようだ。 いや、ここが本当にエスターの家なのかも怪しいものだ。見かけはそっくりだが、どうも雰囲気が違うような気がする。 あなたは部屋の中を一通り見回してみた。魔法の道具や触媒が所狭しと並べられている。残念ながら、今のあなたが使いこなせそうなものはなさそうだ。 と、そこであなたは、部屋の奥にある水槽に目をやった。 七色に輝く不思議な水の底から、いくつもの泡が浮かんでくる。しばらく見つめていると、水槽の表面に輝く結晶が浮かび上がった。 これは、星のかけらではないか。 **好きな星のかけらを1つ、所持品に加えること** あなたは星のかけらを手に取った。 水槽は動きを停止している。しばらく経てばまた動き出すかもしれないが、ずっとここで待っているわけにもいかない。機会があればまた見に来るとしよう。 [魔法使いの家を後にする](13) 18 ${if -f01} そういえば、学院司書を務めるエスメレー・アーチェットはルワンの儀式にも立ち会っていた。もし彼女が戻っていれば、何かアドバイスが聞けるかもしれない。 「あなたを待っていました」 果たして、図書室のカウンターの奥にいるのは、魔法学院の司書、エスメレー・アーチェットその人だ。 ${/if} ${if f01} あなたは迷わず図書室へと向かった。 エスメレーは前に会った時と同様、カウンターの奥にたたずんでいる。 「どうでしょうか?寺院の奥を探ってみましたか?」 エスメレーの問いに対し、あなたは首を振る。 「急いでください。こうしている間にもルワンは力を増しています。すぐに寺院の奥に向かうのです」 エスメレーは有無を言わせぬ口調であなたを促してきた。 あなたは取りあえず頷くしかなかった。 ${/if} [エスメレーの話を聞く](28 "-f01") [魔法学院を出る](13) 19 あなたは道場を訪れた。 道場には誰もいない。いつもはしかめ面でビシバシとソーサリアン達を鍛えている白髭の道場長も不在のようだ。 ならばこんな場所に長居は無用……と思って外に出ようとしたあなたは、ふと、道場の床の上に無造作に置かれている本に目をやった。 革表紙は立派だが、本体は60ページほどの薄い本だ。 タイトルには「職業大全」とある。 ぱらぱらとめくってみると、様々な職業の仕事ぶりについて記載されているマニュアル本のようだ。 何の気なしに最初のページを読んでみると、驚くべきことが起きた。 あなたの頭の中に、農夫としての知識や経験がとめどもなく沸いてきたではないか。 このまま読み続ければ、あなたは農夫になってしまうだろう。 どうやら、この本には読んだ者を一瞬で転職させてしまう魔法がかけられているようだ。 **ここでは、主人公の職業(ステータス画面のJOBの欄に設定されている職業)を変更することができる。** **選択可能な職業の中から、好きなものを選ぶこと。** あなたは新たな知識と経験を身につけた。 その代わり、以前就いていた職業のことはすっかり忘れてしまった。 [道場を後にする](13) 20 王様は迷った末に、ルワンに機会を与えることにした。 直ちに、城の大広間に祭壇が設けられた。 ルワンの後ろには、国一番の女魔法使いエスターや、魔法学院の司書エスメレー・アーチェットなどが列席し、ルワンに怪しい動きがないか監視することになった。 「フン……肝っ玉の小さい王様だ。まあ、そうビクつかなくても、我が魔術で当面の安全は保障される。ヴァラージにも完璧な結界を施すことができたからこそ、この地にわざわざ赴いてやったのだ」 ルワンは嫌味たっぷりに言い放ち、祭壇に向き直った。そして唐突に真顔になり、詠唱を開始する。 「大いなる神ユイターとマスタードラゴンの力を今しばらく我に委ねよ……」 ルワンの身振りとともに祭壇が七色に輝き始める。その光が次第に広がり、広間全体を包み込んでいく。 「これは……BARRIERの術に似ていますね。神の腕輪と同じ性質の魔力を持っているようです。しかし、これほど強大なエナジーは初めて見ました」 エスターが驚きの声を漏らした。 その隣ではエスメレーが目を細め、何かを呟いている。 次の瞬間、祭壇がひときわ強い光を放った。あまりの眩しさにあなたは思わず目を閉じてしまう。 すると、耳をつんざく轟音が響き渡った。 「何っ……!」 光はますます激しくなり、薄目を開けるのすら困難だ。 「これは……一体……」 術者であるルワンの狼狽する声が聞こえる。何か想定外の事態が起きているのだろうか。 とにかく、王様を守らないといけない。あなたは必死で王様のもとに駆け寄ろうとした。 だが、再び轟音とともに、一陣の風が吹きすさび、あなたは一瞬宙に浮いたような感覚を味わったかと思うと、床に叩きつけられた。 その後、どのくらいの時間が経っただろうか。 白一色だった視界が少しずつ晴れてくる。 広間には誰一人いなかった。 祭壇は跡形もなくなっている。 立ち上がると、鋭い頭痛を覚えた。体もひどくだるい。 何かとんでもないことが起こったことは間違いない。 ソーサリアンの勘だけを頼りに、あなたは探索を開始することにした。 [城内を見回る](3) 21 ${if -f02} あなたは扉に刻まれた文様をしげしげと見つめてみた。 その意味するところは正確にはわかりかねるが、どことなく違和感がある。 本来、このような文様は死者の霊を弔うものだ。生前の栄光を称え、不遇を慰め、魂が迷うことなく神の国へと行けるように導くために刻まれているはずだ。 だが、この文様には、そのような弔いの意志を捻じ曲げるような作為が含まれているようだ。 これは、死への畏怖ではなく、生に対する呪いを秘めているのではなかろうか。 論理的には説明できないが、あなたの長年の経験がそのように告げている。 だとすると、ここから先に踏み込むのは危険すぎる。扉の先には、神々の加護を捻じ曲げる罠が仕掛けられているに違いない。 ${/if} ${if f02} あなたは自分の信ずる神に祈りを捧げてみた。 だが、どれほど熱心に祈っても、何の天啓も得られなかった。 まるで神々に見捨てられてしまったような心細さを覚えながら、あなたは寺院を後にする。 ${/if} [寺院を出る](13) [扉の奥に踏み入る](36 "-f02") 22 あなたはちょっと茶目っ気を出してみた。 王城の奥には宝物庫があり、代々の王家の秘宝が貯蔵されている。 ソーサリアン達が献上した戦利品もここに収められているはずだ。 有名な「不老長寿の水」や「幸福のコイン」を一目見てみたいではないか。 もっとも、「メデューサの首」をうっかり見ないようにしないといけないが。 宝物庫に続く通路には人っ子一人おらず、あなたは難なく巨大な鉄扉の前まで進むことができた。 だが、当然ながら、宝物庫の扉には鍵がかかっている。 見るからに複雑な錠前だ。鍵の専門家でなければこじ開けることはできないだろう。 扉自体も頑丈で、どれほどのバイタリティがあっても打ち破るのは難しそうだ。 [鍵をこじ開ける](9 "xどろぼう") [スパイの七つ道具を使う](9 "xスパイ") [この鍵の構造は熟知している](9 "xかぎや") [宝物庫を後にする](3) 23 あなたの最後の一撃が金竜の脳天にめり込んだ。 「馬鹿な……」 金竜はあなたを振り払おうと頭を上下左右に揺すったが、あなたも武器を持つ手を緩めない。 「この、私が、ヒューマノイドどもに、屈するというのか……」 金竜の動きが次第に弱まってゆく。 「ザガ……まさかこんなことになろうとは。ふがいない私を、許せ……」 そして、それが断末魔となった。 金竜は空中でもんどりうって尾を左右に揺らしながら、ゆっくりと高度を下げていく。 そしてその体躯は、遥か下の大地へと沈んでいった。 金竜が落下した地点は、幸いペンタウァの中心部を外れていた。王様の号令で、ペンタウァの民は既に避難を終えていたため、被害は最小限に抑えられた。 あなたはエスターとともに、金竜の死を確認すべく、現地に急いだ。金竜との戦いで重傷を負っていたルワンは、寺院へと運ばれた。 「あそこです!」 エスターが街外れを指さす。そこにエスメレー・アーチェットも合流した。既に浮遊の魔法は切れており、あなたは疲労困憊した体に鞭打って、金竜の胴体に沿って走った。 そして、あなたたちは金竜の頭部へとたどり着いた。 「……」 まだ、その禍々しい瞳には、わずかに色が残っている。だが、その命のともしびが消えるのも、時間の問題のようだ。 [戦いは終わった](64) 24 あなたは王城の厨房を訪れた。 ペンタウァの王城には何百人もの人が住んでいる。そのすべての食事をこしらえる厨房は、やはり巨大なものだった。 厨房には誰一人いない。オーブンにも火は灯っていなかった。 すべては整然としており、一見したところ変わったものは見当たらない。 [厨房を出る](3) [パン屋の勘を働かせる](25 "xぱんや") [コックの勘を働かせる](25 "xコック") [家政婦の勘を働かせる](25 "xかせいふ") 25 だが、何かがおかしいと、あなたの長年の経験が告げている。 この厨房は綺麗すぎる。 いくら掃除の行き届いた王城とはいえ、毎日調理に使っていれば、汚れの一つもつくはずだ。 それに、王城のコックは日夜交代交代で食事を作っている。夜勤の兵士のための弁当もここでこしらえている。 厨房の火が消える時間帯など、本来存在しないはずなのだ。 結論は一つだ。 あなたが見ている王城は、本物ではない。 少なくとも、ペンタウァから人が消えたのではない。ペンタウァそっくりな別の場所に転移されたのか、それとも幻覚を見させられているかだ。 なんとかしてこの幻から抜け出す術を探さねばならない。 [厨房を出る](3) [目覚めの薬を飲む](49 "i02") 26 あなたは体を素早く操って、高度を上げた。 追いかけてくる金竜の頭部が目前に迫る。その刹那、あなたは真横に進路を変えた。 「こわっぱめが……!」 首を振ってあなたを捕捉しようとした金竜の長い髭が、あなたのちょうど真正面にあった。 あなたはその髭めがけ、自分の魔力を込めた得物を振り下ろす。 「ちいっ……味な真似を」 金竜が片目を吊り上げて苛立ちを見せる。竜の髭は魔力の調節に関与していると聞く。あなたが与えたのはほんのかすり傷だが、それでも多少の戦意を削ぐことには成功したようだ。 この機を逃してはならない。次の目標はもう決まっている。 [金竜の胴体を狙う](33) [金竜の眼を狙う](32) [金竜の口を狙う](51) [金竜の逆鱗を狙う](38) 27 あなたは武器を構えて猛然と突撃した。狙うはその子供の頭ほどもある目玉だ。いかなドラゴンと言えど、両眼を潰してしまえば無力化できるはず。 だが、あなたは自分の考えの甘さを思い知らされることになった。 金竜があなたを睨み付けると、その両の瞳が怪しい輝きを放つ。その瞬間、あなたは背筋が凍るような錯覚を覚えた。いや、錯覚ではない。実際にあなたの体がどんどん凍り付いていく! あなたは何とか金竜の片目に一撃を喰らわせた。だが、その一撃は、まるで鉄板にでも当たったかのように弾き返された。 「フン、お前たちの言葉で表現するなら、まぶたに埃がかかったといった程度かな」 金竜のあざけりをよそに、あなたは次の攻撃のチャンスをうかがう。 [金竜の胴体を狙う](33) [金竜の口を狙う](8) [金竜の髭を狙う](34) [金竜の逆鱗を狙う](38) [HPかMPがゼロになった](55) 28 エスメレーは真剣な面持ちであなたに話しかけてくる。 「状況は極めて深刻です。ルワンはペンタウァの危機にかこつけて、邪なる神具を持ち込みました。彼が王城で唱えた呪文は、防御壁を作るものではなく、ペンタウァの民を異世界に幽閉する禁呪文だったのです。見抜けなかった私も不覚というほかありません。最後の瞬間に気が付いた私はどうにか難を逃れ、ここに身を潜めてあなたの到着を待っていたということです」 エスメレーは淡々と語り続ける。 「ソーサリアン、ルワンはおそらく城の謁見室にいるでしょうが、直接襲ってはなりません。返り討ちに遭ってしまいます。まずは彼の魔力の源を絶たねばなりません」 魔力の源……それはいったいどこに? 「ペンタウァの寺院をよく探してみてください。きっと、どこかに怪しい扉があるはずです。ルワンは封じられた異世界への道を開き、そこから力を得ているのです。異世界の門を破壊すれば、彼の魔力は遮られるでしょう」 エスメレーはそう言ってあなたに黒い指輪を手渡した。指輪をはめると、腹の底から力が沸いてくる。今ならどんな敵でも難なくなぎ倒せそうだ。 **あなたのSTRに5を加えること** 「さあ、お行きなさい。私はルワンに存在を感知されているので、下手に動くことができません。神々の加護のあらんことを」 [魔法学院を出る](13) 29 あなたは職業経験を活かして薬の調合にチャレンジすることにした。 最初はヤマ勘と当て推量だったが、何回かの失敗の後、だんだんとコツが掴めてきた。 そして、小一時間も経った頃、あなたは調合の完全なバランスを見出した。 机の上に置いてあった材料は、「目覚めの薬」を作るための原材料だったのだ。 あなたは目覚めの薬を手に入れた。これがあれば、どんな幻影でも打ち破ることができる。 ${if -f05} 今は使い道がわからないが、携帯しておこう。 ${/if} [目覚めの薬を飲む](49 "f05") [目覚めの薬を持って薬屋を出る](13) 30 あなたは奥の拘置所を覗いてみた。 醜いオークが一体、椅子に腰かけている。よく見ると女性のようだ。 「あなたは……」 オークの娘はおびえた目つきで鉄格子越しにあなたを見つめている。 ${if i03} だが、プレーンマスクを通して見ると、まったく別の姿が浮かび上がる。 そこに囚われているのはオークではなく、エルフだった。その顔は忘れようもない、魔法学院の司書エスメレー・アーチェットではないか。 ${/if} 「ああ、あなたをお待ちしておりました、ソーサリアンよ」 オークは顔に似合わぬ気品のある口調であなたに話しかけてきた。流暢な共通語だ。 「私はエスメレー・アーチェット、魔法学院の司書を務める者です」 唐突な言葉にあなたは思わず耳を疑ってしまう。 「よく聞いてください、ソーサリアン。ルワンの儀式の直前に、私は何者かに変化の術を掛けられた挙句、ここに捕らえられたのです」 そういうことなのか。だとすると、儀式の間にいたエスメレーは一体……? 「その者こそ、この陰謀の黒幕です。おそらく、儀式に参列するために私に化けて王様に近づいたのでしょう」 ${if f01} だが、あなたは魔法学院でエスメレーに会っている。そのことを伝えると、オークは鼻を鳴らした。 「何ですって!そいつこそ私の偽物です!そいつの言葉に耳を貸さないでください」 ${/if} オークは深い溜息をついたが、あなたにはあくびをしたようにしか見えなかった。 「まさか、こんなことになるなんて……私に術をかけたそいつは、ルワンの儀式の力を悪用して、ペンタウァ全域に幻惑の呪いをかけたのです。今、あなたが見ているのは本物のペンタウァではありません。まるで夢の中をさまよっているように、現実のあなたは広間でもがいているはずです。どうにかして、幻惑を打ち払わねばなりません」 しかし、どうやって? 「方法はいくつかあると思います。幻惑を内側から解除するアイテムを手に入れられればいいのですが……敵はもちろん、そんな便利なものを放置してはおかないでしょう。あなたが自分で編み出さねばなりません。あるいは、この幻惑の中で黒幕に対峙したとき、その力の源を見破ることができれば……」 「……まだそんな力を残していたとは」 そのとき急に冷たい声が耳元で聞こえて、あなたは鳥肌立った。 「ああっ……お前は!」 オークが声ならぬ声を上げる。 「消えろ」 冷たい声が言い放つとともに、オークの姿は突如としてかき消すようになくなった。 あなたは目の前で起きたことが信じられなかった。周りには何の気配も感じない。だが、あなたの直感が、一刻も早くこの場を離れるべきだと告げている。 [詰所から飛び出す](3) [目覚めの薬を飲む](49 "i02") 31 宝石細工師であるあなたは、その宝石の不自然さにすぐに気が付いた。 ダイヤモンドの輝き方は、石の成分とカッティングによって決まる。どんな細工をしても、自ら七色の光を発することはあり得ない。 つまり、結論は一つ。目の前の宝石そのものが幻影なのだ。 あなたがかぶりを振ると、宝石は目の前で四散した。 「何……!」 一目で幻影を打ち破ったあなたにさしもの相手も驚きを隠せないようだ。その姿が次第にぼやけていく。 [幻影を振り払う](49) 32 金竜は大きく口を開き、あなたをかみ砕こうと牙を交差させる。 だが、先ほどの髭への一撃で、わずかに感覚に狂いが生じたようだ。 竜の一撃をかわしたあなたは、体を一回転させ、得物をそのぎらつく瞳へとまっすぐに打ち込んだ。 「ぐああっ……!」 あなたの両腕にびりびりする振動が返ってきた。まるで石の壁を思い切り殴りつけたような衝撃だ。 だが、金竜とて無事では済まなかった。瞳から出血し、顔の半分が真っ赤に染まっている。 「ヒューマノイドごときが、ここまでやるとは……私としたことが見くびっていたようだ。もはや容赦せん!」 まだだ。ここで敵にターンを渡したらこれまでの善戦も水の泡になる。あなたは次の目標に向かって空を駆けた。 [金竜の胴体を狙う](48) [金竜の口を狙う](51) [金竜の髭を狙う](34) [金竜の逆鱗を狙う](38) 33 あなたは武器を構えて襲い掛かった。図体がでかいだけで動きの鈍い敵など、大きな的に過ぎない。 そう思って得物を打ち下ろしたあなたの腕に、じんじんとする衝撃が伝わってきた。 「塀の角が肘をかすった……いや、小枝が脇に当たった……程度かな。ヒューマノイドの感覚を表現するのは難しいな」 金竜がぼそりと呟いた。 どうやら、まったく効いていないと言いたいようだ。あなたはすかさず第二撃を繰り出そうとした。 だが、金竜は目にもとまらぬ速さで体躯を進展させた。あなたの武器が空を切ると同時に、反対方向から金竜の尾がのしかかってきた。 頭を思い切りぶたれて、あなたは遥か空中に吹き飛ばされた。 壁や地面に激突せずに済んだのは幸運だった。あるいは金竜がわざとそうしたのか。 あなたはくらくらしながら必死で体勢を立て直す。まずは隙を作らねば、胴体への攻撃は通用しなさそうだ。 [金竜の眼を狙う](27) [金竜の口を狙う](8) [金竜の髭を狙う](34) [金竜の逆鱗を狙う](38) [HPかMPがゼロになった](55) 34 髭だ。金竜の顔から生える二本の髭は、その膨大な魔力をコントロールする役目を持っていると聞いたことがある。あの髭を断ち切れば、金竜と言えどもただの獣に成り下がるのではないか。 そう考えてあなたは金竜の髭をめがけて真っ向から得物を叩き下ろした。 「ヒューマノイドよ、狙いは悪くないぞ、狙いはな……」 だが、武器が触れた瞬間、金竜の髭がしなやかに動いた。たちまちあなたは金竜の髭に絡みつかれてしまう。 髭が触れた瞬間、あなたの体に電流が走った。 このままではまずい。あなたは体を反転させて金竜の顔を蹴り上げ、距離を取った。 頭がくらくらする。一瞬でかなりの魔力を吸い取られてしまったようだ。 同じ攻撃を繰り返しても埒が明かない。あなたは慎重に浮遊しながら、敵の弱点を探す。 [金竜の胴体を狙う](33) [金竜の眼を狙う](27) [金竜の口を狙う](8) [金竜の逆鱗を狙う](38) [HPかMPがゼロになった](55) 35 ボブはあなたの目の前で大の字になって倒れ伏している。まだ息はある。手加減したつもりだが、しばらくは目を覚まさないだろう。 とにかくここから早く出るとしよう。 ${if i03} そう思って立ち去ろうとしたあなただが、ボブの着ているシャツの表面に不思議なものを認めた。最初はただの皺かと思っていたのだが、よく見ると薄い青いインクで書かれた文章のようだ。 シャツに文章を書いて着ているなんて、ボブは意外に洒落ものではないか。 だが、気になったのはその内容だ。 %blue%五大属性。それは地(Earth)、火(Fire)、水(Water)、風(Air)、そして霊(Spirit)。%/% %blue%すべてのクリーチャーは、このいずれかの属性を有する元素から成り立っている。%/% %blue%しかし、なかにはいずれの属性にも分類されないクリーチャーもいる。%/% %blue%そして……造物主に選ばれし、ごく限られたクリーチャーは、属性を複数持つという。%/% %blue%その場合、クリーチャーは特定の体の部位に各々の属性を宿らせているとされる。%/% 読んでみてわかったのは、この文章はボブが書いたものではないということだ。それどころか、ボブがこの文章の意味を理解していたかどうかも怪しいものだ。 一体誰が、何の目的でこんな文章を書いたのだろうか?この知識が何かの役に立つだろうか? 疑問を振り払いながら、あなたはボブの店を後にした。 ${/if} [店を出る](13) 36 あなたは両開きの扉を開けて中に足を踏み入れた。 奥に一歩進んでみて、あなたは戦慄した。 そこは作務所の中ではなく、大広間だったのだ。 あなたが入ってきた扉はいつの間にか跡形もなく消えている。広間は王城の舞踏会場ほどに大きく、遠くに白い壁がかすんで見えるほどだ。足元には大理石の床が冷たく輝いている。 どこかに転送されてしまったのだろうか?なんだかめまいがして現実感が失われていくようだ。まるで、この場所はあなたの知る世界ではないかのようだ。 広間はがらんどうだが、唯一、中央に祭壇がしつらえてある。 祭壇にはペンタウァの神々のレリーフが刻まれている。その神々しさは、見ているだけで心が洗われるようだ。明らかに、膨大な魔力が秘められている。 だが、残念ながらいくら眺めていても、出口は見つからない。 辺りを見回すうち、あなたは周り中から嫌な気配を感じ取った。 とっさに身構えると同時に、それらは実体化を始めた。 人の夢を喰らいつくすという、馬の姿をした怪物、ナイトメアだ。 たちまち5体のナイトメアがあなたを取り囲んだ。 「ペンタウァを侵す者に災いあれ!」 声ならぬいななきを上げながら、ナイトメア達があなたに襲い掛かる。 逃げ場はない。勝つか負けるかだ。 [すべてのナイトメアを倒した](37) [HPかMPがゼロになった](6) 37 激しい乱戦だったが、遂に決着の時が訪れた。 あなたの得物が最後のナイトメアを切り裂く。 現れた時と同様に、それらはかき消すようになくなった。 あなたは体を揺すって感覚を取り戻そうとする。 ふと見ると、今の激しい戦いのせいで、広間の中央にあった祭壇は粉々に砕け散っていた。 先ほどまで祭壇から放たれていた強大な魔力も、今はまったく感じられなくなっている。 この祭壇には何の意味があったのだろうか? いくら考えても疑問に答えは出ない。 そのうちに、あなたは疲れのためか少し眠くなってきた。 こんなところで寝るわけにはいかない……と思いつつも、ナイトメアとの消耗戦と、がらんどうの広間に閉じ込められたやるせなさとが相まって、少しずつまぶたが重くなっていく。 ほどなく、あなたはその場に腰を下ろし、ゆっくりと目を閉じた…… [目を覚ましたとき、そこは……](13) 38 ドラゴンの喉元には、鱗が逆向けた部位があり、逆鱗と呼ばれている。 炎のブレスを吐くために酸素を取り込むための仕組みだとか、かつて鰓呼吸をしていた名残だとか言われているが、定かではない。 金竜もドラゴンである以上、逆鱗は泣き所のはず。 あなたはフェイントをかけて左右に飛び回り、タイミングを見計らって得物を突き出した。 「……そう来ると思っていたぞ!」 だが、金竜にとってあなたの浅知恵など想定内だったようだ。 逆鱗の弱点は確かにあった。だがそこは、金竜が溜めこんだ瘴気に満ちていた。 あなたの武器が逆鱗に届く前に、瘴気があなたの体を包み込む。途端に全身が痺れ、五体が粉々になりそうな激痛に襲われた。 これはたまらない。あなたは渾身の力を振り絞って体を反転させ、脱出した。 そのすぐ脇を、金竜の鋭い牙が通り過ぎていった。一瞬でも遅かったら串刺しにされていただろう。 あそこに武器を打ち込めば、きっと金竜にとどめを刺せる。だが、それは十分に打撃を与えたうえでの話だ。 気を取り直してあなたは戦いの構えを取る。 [金竜の胴体を狙う](33) [金竜の眼を狙う](27) [金竜の口を狙う](8) [金竜の髭を狙う](34) [HPかMPがゼロになった](55) 39 あなたは王城の中庭に出た。 王城にはほとんど人がいなかったというのに、庭園は人々でごった返している。あなたの姿を認めると、遠巻きにしてじっと見つめてきた。 皆、不安を隠しきれずにいるようだ。 呼びかけてみたが、誰も一言も口を利かない。 こうしてずっと見られていると、なんだか生気を吸い取られてしまいそうだ。 何か、彼らを和ませる方法はないだろうか? [パントマイムを披露する](54 "xどうけし") [いにしえの曲を弾く](54 "xぎんゆうしじん") [不思議な踊りを披露する](54 "xおどりこ") [英雄伝説の歌を歌う](54 "xうたうたい") [早々に立ち去る](3) 40 すべてが光となった。 その光が終わると、旋風が巻き起こった。 もうもうと立ち込める粉塵で視界が閉ざされていた。 金竜の衝撃波のブレスはあらゆるものを吹き飛ばす。かつては王都一つをまるごと灰にしたこともあるほどだ。その威力ゆえに、金竜の肉体にも相応のダメージが及ぶことが避けられない。そのため、金竜はこのブレスを禁じ手としていた。それはザガとの約束でもあった。 「ハア……ハア……ハア……」 金竜は喘ぎ声を上げながらゆっくりと事態を見守った。 この噴煙が晴れるには数日を要するだろう。後には灰燼と化した大地が残るだけだ。 だが、自分をここまで追い詰めたヒューマノイドはどうなったのだ? 「馬鹿なことを……」 そのちっぽけな体を探そうとしている自分に腹を立て、金竜は鼻を鳴らした。生き延びられるわけがないではないか。これまで数えるほどしか使ったことがないが、衝撃波のブレスを浴びた生き物はいずれも粉々に砕け散り、原形を留めたことすらない。 ペンタウァを滅ぼしてしまったことについては、後でザガに言い訳せねばならないだろう。 そんなことを考えながら、金竜は体躯を反転させようとした。 その視界の片隅に、金竜は何者かの姿を捉えた。 「……?」 粉塵の中から、あなたは姿を現した。 大きく肩で息をしながら、慎重に間合いを図る。全身が滝に打たれたような衝撃でびりびりと震えている。 「そんな、そんな馬鹿な!ちっぽけなヒューマノイドが、我が衝撃波のブレスを喰らって生きながら得るなど。あり得ぬ、あってはならぬことだ!いったいどんな術を使った?CHANGE-AIRか、それともNOILA-TEMなのか?」 もはやかける言葉はない。 決着をつけるため、あなたは最後の突撃を仕掛けた。 [金竜を倒した](23) [HPかMPがゼロになった](55) 41 扉の先には衛士長ともう一人の兵士がいた。 あなたはここは自分に任せてほしいと言ってみる。 「そうなのか、じゃあ、頼んだぜ」 見張りに退屈していたのか、存外あっさりと信用してくれたようだ。衛兵達はそそくさと詰め所を後にしていく。 いまのうちに、奥の拘置所を探ってみるとしよう。 [拘置所を見てみる](30) 42 あなたは改めて長老の家の中をくまなく回ってみた。 質素な小さい家だが、隅々まで掃除が行き届いている。それだけに、特に気になるものは見つからなかった。 あまり時間を無駄にするわけにもいかない。そろそろおいとましよう。そう思って立ち去りかけたあなたが、何の気なしに振り返ると、視界の隅に何かが映った。 プレーンマスク越しに、火の消えた暖炉が見えている。その奥の、すすぼけた壁に、赤い文字で何か書かれているのだ。 試しにマスクを外してみると、何も見えなくなった。やはりこの文字は、この世界のものではないようだ。 あなたは目を凝らして文字を読んでみる。 %red%Find Any Ways to Enjoy Sorcerian!%/% %red%ソーサリアンを心ゆくまで楽しもう!%/% 妙に整った字体だ。長老の達筆ではない。おそらく、人間やエルフの文字ではないだろう。何か隠された意味があるのだろうか。 [長老の家を出る](13) 43 あなたが扉を開けようとすると、中から声が漏れてきた。詰所には人がいるようだ。扉の隙間からこっそりと耳を澄ませてみる。 「……で、何か聞き出せたか?」 「いやあ、さっぱりですよ。なにしろほとんど言葉が通じないんで。何か異国のお祈りをしているようです」 話を聞く限りでは、詰所の奥の拘置所には誰かが囚われているらしい。 「むう、やっぱりそうか。通訳が誰かいるといいんだが」 「宮廷に要請はしてるんですがね。全く音沙汰なしで」 「それより腹が減ったな。そろそろ交代が来てほしいなあ……む、外に誰かいるか?」 どうやらあなたの存在がばれたようだ。 このまま扉を開けて侵入を試みるか。だが、関係者を装って囚人との接見を試みるのなら、衛兵を信用させるための身なりか経験が必要だ。 さもなくば、強引に押し入るか。 それとも素早くこの場を離れるべきか。 [「見張りの交代に来た傭兵だ」](41 "xようへい") [「見張りの交代に来た用心棒だ」](41 "xようじんぼう") [「見張りの交代に来た闘士だ」](41 "xとうし") [「尋問に来た通訳だ」](41 "xつうやく") [「説教を聞かせに来た宣教師だ」](41 "xせんきょうし") [力づくで通る](10) [詰所を離れる](3) 44 いや、夢ではない。 だが、かといってこれは現実でもない。 長年水に慣れ親しんできたあなたの直感がそう告げている。 間違いない、この津波は幻だ。何者か、強大な術者があなたに幻覚を見せているのだ。 そう看破した瞬間、目の前がはじけ飛んだ。 あなたの目の前には、閉じられたままの街の門がそびえ立っている。 普段は門番が立っていて朝夕の鐘に合わせて門を開閉するのだが、今はその姿が見えない。 この門ももしかしたら幻覚なのだろうか。そう思ってあなたは扉を押してみたが、返ってきたのはごつごつとした堅い樫の木の質感だけだった。たとえこれが幻術の所産だとしても、心からその存在を否定しなければ術を破ることはできないのだ。 あなたは踵を返して街の中心部に戻る。何者かがあなたを街に閉じ込めているのなら、街のどこかに立ち向かうべき相手がいるはずだ。 [街に戻る](13) [目覚めの薬を飲む](49 "i02") 45 あなたは王様の謁見室に入った。冒険の成果を報告するたびに何度となく訪れた部屋だ。 そこには、王様の姿はなかった。代わりに玉座に座っていたのはルワンその人だ。 「ソーサリアンよ……ずいぶん時間が掛かったな。退屈で待ちくたびれたわ」 あなたはルワンに王様の所在を問い詰める。 「ククク……王はお隠れあそばしたぞ。誰がこの玉座にふさわしいか、本当は貴様らもわかっているのだろう?」 ルワンは下卑た笑いを浮かべながらあなたを威圧してくる。 「この時を待っていた。王都の混乱に乗じてペンタウァを掌握する絶好の機会をな。さあ、儂の前にひざまづくのだ、ソーサリアンよ。さすれば、ザガの脅威からペンタウァの民を守ってやらんでもない」 ルワンは尊大な口調で言い放つ。一体、この男の妄言にどう対処すればいいというのか。 [ルワンと戦う](4) [ルワンと戦わない](47) [ルワンはこんな男じゃない](47 "r06:tempest") 46 あなたはなすすべもなく、目の前の脅威に身を委ねた。 急速に意識が遠のいていく。 耳元で誰かのあざけり声が聞こえたような気がした…… このまま眠っていられたら、どんなに楽だろうか。 しかし、そんな甘美な誘惑を、ソーサリアンとしての本能が打ち消した。 ペンタウァ全域を滅ぼそうとしている敵がいる。 それがどれほど強大で不可思議な相手であろうとも、このままでは終われない。 あなたは渾身の力を振り絞って頭を振るい、立ち上がる。 [気がついたら……](3) 47 あなたはかぶりを振った。 この男を誅するのは簡単だ。だが、あなたの直感は全く別のことを告げていた。 ルワンは尊大で底意地の悪い男だが、かつて不毛の地だったヴァラージを統率し、数十年に渡って有数の交易都市に育て上げた男だ。今さらこのような強引な手法を使って王城を乗っ取ろうとするだろうか? それに、彼の口から耳慣れぬ言葉が漏れたのをあなたは聞き逃さなかった。「ザガ」とは一体、何のことなのだろう? 「……ムム、儂としたことが、口が滑ったか。まさかヒューマノイドに見抜かれるとは、な」 ルワンの口調が変わった。渋い声質は同じだが、その音色には人を人とも思わないような冷徹さが込められている。 「どうやらお前も術が解けかけているようだな。だが、目覚めの時までにはまだ時間がある。もうしばらく、ゆっくり休むと良いだろう。そう、取り返しがつかぬことになるまでな!」 そう言って彼は懐から一つの宝石を取り出した。見事にカッティングされた大粒のダイヤモンドだ。だがその宝石は、光を反射して七色に輝いている。そのあまりにも美しいきらめきに、あなたの目は釘付けになってしまう。 すぐに宝石をなんとかしなければ、相手の術中に落ちてしまう。あなたの頭の中にどんどん霞がかかっていく…… [なす術もない](46) [目覚めの薬を飲む](49 "i02") [この宝石は本物ではない!](31 "xほうせきさいくし") 48 「……む、どこだ?」 金竜が顔を左右に振る。一瞬あなたの姿を見失ったようだ。 もとよりあなたと金竜では体躯に雲泥の差がある。加えて眼に傷を負っていることで金竜の索敵能力には陰りが生じていた。そこに付け込んだあなたは、意表をついて高度をぐっと下げた。 天守閣の遥か下、地表にほど近い高さまで急降下し、金竜が下を見下ろすよりも早く、その無防備な胴体に連続攻撃を加える。 「く、くそっ……ちょこまかと……」 一発や二発では蚊に刺されたほどのダメージにもならないが、あなたは竜の胴体の周りを駆け巡りながら所かまわず打撃を加えた。その都度、武器に込められた魔力が金竜の鱗を傷つけていく。 「ソ、ソーサリアンめ……!」 やっと名前を言ったじゃないか。 あなたは不敵に笑った。 さあ、金竜が体勢を立て直す前に、とどめの一撃を喰らわせるのだ。 [金竜の眼を狙う](27) [金竜の口を狙う](51) [金竜の髭を狙う](34) [金竜の逆鱗を狙う](7) 49 ** このシーンでは、魔法は使えません。** 次の瞬間、目の前が急激に展開した。 あなたは、王城の広間にただ一人でたたずんでいた。王様も、ルワンも、エスメレーの姿もない。 あなたは何度も首を振って正気を取り戻そうとする。どうやら、長い間、幻影の中をさまよっていたらしい。おそらく強大な術者の魔力に囚われていたということだろう。ひどく消耗している。 しかも、ただ眠らされていたというわけではなさそうだ。その証拠に体のあちこちに傷跡が残っている。 だとすると、あなたの体験したことは本当にあったことなのだろうか? ペンタウァの中で得物を抜いて敵と戦ったとしたら、その相手はもしや…… あなたの背筋に怖気が走った。もしかしたら、取り返しのつかないことをしてしまったのかもしれない。 もうたくさんだ。終わりにしなければならない。あなたは武器を握り締めて、足を踏み出した。 おりしも、頭上で複数の叫び声が聞こえた。天守閣の方角だ。 [天守閣に急ぐ](61) [HPかMPがゼロになった](55) 50 あなたは急に背筋に寒気を感じ始めた。街の人がみんな消されてしまったのか、それともあなた一人が異次元に飛ばされてしまったのか。どちらにせよ、こんなところにはいられない。とにかく逃げなければ。 そう思い、街の門から外に出たあなたは、目を疑った。 ペンタウァの街から一歩外に出ると、目の前には高い、高い、水の壁が立ち塞がっているではないか。 轟音とともに濁流があなたに迫ってくる。 津波だ! だが、街まで津波が押し寄せたことなど、ペンタウァの歴史始まって以来のことだ。自分は夢でも見ているのだろうか? [船員の経験を活かす](44 "xせんいん") [漁師の経験を活かす](44 "xりょうし") [渡し守の経験を活かす](44 "xわたしもり") [引き返す](13 "i03") [立ち尽くす](46) 51 どんな生物でも、消化管に続く部位には柔らかい粘膜がある。強大なドラゴンとて、口の中は無防備なはず。自ら飛び込んで、飲み込まれる前に一撃を喰らわせてやろう。 そう考えたあなたは、ちょうど大口を開けた金竜の顔に向かって突撃した。 だが、次の瞬間あなたは急停止して旋回した。竜の喉から赤いものが見えたのだ。 身構えると同時に、金竜は胴を大きく反らせ、その口から灼熱の炎を吐き出した! なんとか直撃は避けたが、熱気に煽られただけで気を飛ばしそうになる。 装備の一部がぶすぶすと音を立てて焦げている。 「かわしたか、蠅のように飛び回るヒューマノイドめが」 金竜がぎろりとあなたを睨み付けた。 口を狙うのは自殺行為かもしれない。あなたは体勢を立て直して敵の弱点をうかがう。 [金竜の胴体を狙う](33) [金竜の眼を狙う](27) [金竜の髭を狙う](34) [金竜の逆鱗を狙う](38) [HPかMPがゼロになった](55) 52 それは異形だった。 迫りくる絶望的な力の渦を前に、あなたの思考も感情もぷっつりと途切れた。 あとほんの一息で金竜を仕留めることができる。なんとしてもこの攻撃を凌がねばならないのだ。 それなのに、体も、心も、ピクリとも動かない。 まるで魂だけが抜けてしまったようだ。あるいは、再び幻惑の世界に囚われてしまったのだろうか。 気が付くと、目から冷たいものが滴っていた。 あなたは衝撃波のブレスを前にただ立ち尽くしていた。 すべてが光となった。 その光が終わると、旋風が巻き起こった。 もうもうと立ち込める粉塵で視界が閉ざされていた。 あなたは、目を開けた。いや、もともと目を閉じてはいなかったはずだ。あなたの視界と脳がようやくつながり、外界認知が可能になった。 あなたの目の前に、両手を大きく広げて仁王立ちしている人物がいる。 薄汚れたローブとターバンをまとった長身の男。砂漠王ルワン。 ルワンは、両手から光の壁を展開し、衝撃波を押さえ込んでいる。 その向こうには、ブレスを吐き終えた金竜のおぞましい顔があった。 「愚かなり……ウィザードの分際で、私の衝撃波のブレスを防げようはずがない。一緒に消し飛べ、虫けらども!」 「くくく……」 ルワンは下卑た笑みを浮かべていた。その口元から血がしたたり落ちている。よく見ると、光の壁にはそこかしこに亀裂が走っている。貫通した衝撃波のしずくを喰らったのか、ルワンは体のそこかしこから出血していた。 「なあ、金竜よ。貴様にとっては、儂らは虫けら同然の存在なのだろうな……」 金竜は眼をぎょろつかせたが、答えなかった。 ひとたび放たれた衝撃波の渦は、留まるところを知らず、ルワンの作った壁を打ち破ろうとびりびりと音を立てて圧迫してくる。 「貴様の話しぶりを聞いていて、子供の頃を思い出したよ」 ルワンは不老不死だと聞いている。一体いつの頃だろうか。 「小さい頃から何でもできた儂は、とにかく暇を持て余していた。日がな一日、砂漠の砂虫を掘り出してはすり潰すのを趣味にしていた」 衝撃波はますます威力を増している。ルワンが片膝をついた。 「だが、そんな遊びもいつしかしなくなった。大人になると、世界が広がった。砂漠を越え、様々な街を訪れ、ヴァラージの発展に力を尽くし、時にはここの王と反目したこともあったが、な。フフ、今だって魔法開発に世界の探求と、目の回るような忙しさだ。砂虫と戯れる日々は、二度と訪れまい」 そして、ルワンは金竜に向き直り、不敵な笑みを浮かべて言い放った。 「なあ、金竜。貴様もいい加減、大人になれよ」 「!」 金竜の顔から一瞬、色が消えたように見えた。 「……なん、だと……!」 表情は人間と違っても、金竜が怒りに震えているのは容易にわかった。 「お前らに何がわかる。我らドラゴンの悲哀と誇りの、何がわかると言うのだ……!」 そして金竜は大きく咆哮した。その勢いで衝撃波が四散する。次の瞬間、金竜は長い尾を振るい、ルワンを弾き飛ばした。 「がっ!」 ルワンは天守閣の壁に叩きつけられ、そのまま倒れ伏した。 それを見たあなたの中で、何かが弾けた。 このいけ好かない砂漠王の矜持を引き継げるのは自分しかいない。 あなたは得物を大上段に構え、意識を集中させる。体の奥底から力が沸いてくるのを感じる。 「ハア、ハア、ハア……」 一方、怒りに任せて衝撃波のブレスを自ら消し飛ばした金竜は、かなり消耗しているようだ。 これが最後のチャンスだ。あなたは渾身の力を振り絞って金竜に突撃を敢行する。 [金竜を倒した](23) [HPかMPがゼロになった](55) 53 「だが、お前たちは、あまつさえドラゴンスレイヤーさえも見つけてしまったというではないか。あれこそは造物主の戯れ。ヒューマノイドに使いこなせる武器ではない!」 「待て、金竜!ドラゴンスレイヤーは……」 王様の声も金竜に届かなかったようだ。 「もはやザガの帰還を待つまでもない。そこで、お前たちの器量を見極めることにしたのだ。ヒューマノイドが私の粛清を受けるに足る存在なのか、それとも、共食いをして滅ぶ虫けらなのかをな」 「……そういうことか」 ルワンが忌々しそうに舌打ちをした。 「私はエルフの娘の姿を借りてペンタウァに侵入し、お前の儀式を逆用して王城に呪いをかけた。幻惑の光に包まれて、お前たちは互いに殺し合うはずだったのだ」 ${if f02} そこで金竜はその口元を緩めた。 「結果はご覧の通り。お前たちは自ら神々の加護から身を背けた」 どうやら、金竜に一杯食わされたらしい。寺院の奥にあった祭壇はペンタウァを守護する神々を祀る祭壇だったのだ。それをあなたは破壊してしまった。しかも、寺院を守っていた僧兵たちを手にかけて。 あなたは胸の奥から嗚咽を漏らしつつも、金竜に向き直った。 **あなたのSTRとKRMを5ずつ減らすこと** ${/if} そこで金竜はしばし口をつぐんだ。 そのわずかな隙に、エスターが半身を反らし、あなたに向かって何かを呟いた。 「ヒューマノイドたちが何も悟れず右往左往しているのを見るのは、私にとって最高の愉悦だった。だが、戯れはここまでにしよう。幻術を解いて私の前に立ちはだかっているお前たちは、私の粛清を受ける資格が十分にある!」 金竜が大きな口を開け、咆哮する。 だが、その眼前にあなたはいない。 エスターの魔術で、あなたは宙高くに浮き上がっていた。 「む、FLYの魔術を使いこなせるウィザードがいるだと!」 金竜があなたを見咎めた。 チャンスは今しかない。 この強大な敵を一撃で仕留められるとは思わないことだ。少しずつ、確実に弱点への打撃を重ねていく必要がある。 だが、どこを狙うべきか?大地そのものと見紛うほどに巨大な胴体か。見る者を凍り付かせるような冷酷さを秘めた眼か。最大の武器である炎の吐息を吐き出す口か。風を切ってうなりを上げる髭か。それとも、その邪悪な魂の宿るという喉元の逆鱗を狙うべきか。 迷う時間はない。あなたは意を決して金竜に躍りかかった。 [金竜の胴体を狙う](33) [金竜の眼を狙う](27) [金竜の口を狙う](8) [金竜の髭を狙う](34) [金竜の逆鱗を狙う](38) 54 どうやら言葉では分かり合えないようだ。あなたは自分の才覚と経験を活かして芸を披露した。 初めは何の反応もなかった人々だが、次第にその表情が和らいでいく。 あなたは一通りパフォーマンスを終えて一礼した。 頭を上げると、驚くべきことに、中庭には誰もいなくなっていた。 実体ではなかったのだろうか。まさか、このペンタウァは既に……。 いや、だとしても、あなたはきっとペンタウァの人々に安らぎを与えたはずだ。 そう、自分に言い聞かせつつ、あなたは中庭を後にする。 [中庭から立ち去る](3) 55 あなたは健闘むなしく、ばったりと倒れ伏した。 急速に現実感が失われていく。 これは……現実の死だ。そして、ペンタウァの歴史の終焉でもある…… 56 あなたは魔法学院に立ち入ってみた。 だが、中は無人だった。 学院を取り仕切っている司書エスメレー・アーチェットも、生徒たちの姿もない。寂寞がその場を支配している。 あなたはどことなく心細さを感じていた。 ここに長居する理由はない。 [魔法学院を出る](13) 57 あなたは再び宝物庫を訪れた。 だが、見渡してみても、特に変化した様子はない。 ミリアードは相変わらずあなたの元にあり、いくら念じてもその形を変えることはなかった。 宝物庫には他にも色々と価値の高そうなものが並んでいるが、今この状況を打開できそうなアイテムは見当たらない。 名残惜しいが、これ以上留まっているわけにもいかないだろう。 [宝物庫を出る](3) 58 店の中は以前と同様、もぬけの空だった。薬屋の主人が戻ってきた様子もない。 ハーブが補充された形跡もない。もはやここには何かの薬を調合できるほどの材料は残っていない。 [薬屋を出る](13) 59 あなたは扉に近づいて耳を澄ませた。物音はない。人の気配もないようだ。 思い切って扉を開けてみる。 詰所は無人だった。 奥の拘置所も空っぽだ。 どうやら、ここでできることは何もないようだ。 [詰所を出る](3) 60 あなたは魔法学院に立ち入ってみた。 生徒は誰一人おらず、学院はまるで廃校のような静けさを呈していた。 [図書室に向かう](11 "f03") [図書室に向かう](18 "-f03") [魔法学院を出る](13) 61 天守閣の上には、信じがたい光景が広がっていた。 数十人の兵士たちが倒れ伏していた。ある者は炎に焼かれ、ある者は潰され、そしてある者は凍り付いている。 天守閣の中央に王様が、そしてその両脇をエスターとルワンがガードしている。彼らの視線は、空中に注がれていた。 視線の先には、薄汚れたローブをまとい、深くフードを被った性別不詳の人物が浮いている。 「これ以上の狼藉は許しません!」 エスターが凛とした声でローブの人物に言い放つ。構えた杖の先から一条の閃光がほとばしり、その体躯を打ち据える。 「GOD-THUNDERの術か。……ぬるい」 雷を浴びたローブが黒焦げになる。だが、その中はもぬけの空だった。 「神の与えた魔術をもってしてもこの程度の威力しか引き出せぬとは……やはりヒューマノイドに、この地の覇者を名乗る資格はない」 どこからともなく、割れがねのような声が響き渡る。 「気をつけろ……実体化してくるぞ……!」 ルワンが低い声で囁いた。 ローブが散り散りになって落ちていく。その中から、大粒のダイヤモンドが姿を現した。七色に輝く宝石はしばし宙をたゆとう。 だがそれも長くは続かなかった。宝石が鋭いきらめきを放ったかと思うと、轟音と共に目もくらむ光が辺りを覆い尽くした。 ルワンの儀式の時と同じ現象だ。やはり、あなたは目を開けていられなかった。 [光が止んだ時……](62) 62 あなたの目の前には、巨大な黄金の竜がそびえ立っていた。 手足のない、蛇型の竜だ。だがその体躯の大きさには肝を冷やすしかない。爛々と輝く二つの眼は、子供の頭ほどもある。鼻の横から伸びる2本の髭は、屈強なドワーフの腕よりも太く、長身のエルフを凌ぐ長さだ。竜が口を開けると、大剣のような牙の隙間から、黒々とした喉が見えた。その胴体はのっぺりとしているが、神々しく輝く金色の鱗に覆われていた。胴体は天守閣の遥か下へと続き、その尾の先が地表についているのかどうかは確認できない。今やペンタウァの王城は、巨大な金竜に押し潰されそうになっていた。 「まさか、これほどとは……」 ルワンは金竜に覚えがあるようだが、それでも驚きを隠せないようだ。かつてルワンが召喚したというゴールドドラゴンはあくまで幻影で、大きさも大蛇に毛が生えた程度だった。この目の前の金竜は、そんなあなたたちの想像の範疇をはるかに凌駕している。 「震えるがよい、脆弱なるヒューマノイドよ。今、お前たちの歴史は終焉を迎えるのだ」 金竜がその巨大な口を開けて、しわがれた声で喋った。 「金竜よ、なぜこのようなことをする!我々を幻覚に陥れて、今さらどうするというのだ!」 王様が絶叫した。帯剣したまま金竜を真っ向から睨み付ける。 「聞きたいか」 金竜はつまらなそうに答えた。 「もとより、我々ドラゴンはお前たちヒューマノイドとはまったく異質の存在。我々にとってお前たちは、例えるならそう、家畜や虫けらのような存在だった。それが造物主のつくりたもうた序列というものだ」 そこで金竜は鼻を鳴らした。鼻息だけで天守閣がわななき揺れる。 「ところがだ。いつの間にやら、わが眷属は落ちぶれてしまった。フラジオレのように、飛ぶ力を失ってヒューマノイド同様に地を這う恥さらしもいれば、ブルードラゴンのように、ウィザードに飼いならされてしまったものもいた。シャドードラゴンに至っては、弱々しい女に封印されたというではないか」 金竜はしばし目を細めた。その仕草は、何か昔を思い出しているかのように見えた。 「我らドラゴンこそが万物の霊長であり、この大地を守護する存在だったのだ。それなのに、数多の災厄を防いだのもヒューマノイドたちだった」 「数多の災厄……」 エスターがつぶやく。ペンタウァを襲った未曽有の危機に、この金竜ならどう立ち向かったのだろうか。 「ザガだけはこの事態を予測していた。あれはヒューマノイドに征伐されたのではない。一時的に身を隠しただけだ。近いうちにザガは戻ってくる。そしてそのときこそ、我らドラゴンの時代が再び訪れるのだ」 [そうはさせない!](53) 63 その時だった。 虚空から、おぞましい声が響いた。 「金竜よ、貸し与えた我が”悪夢”を返してもらおうか」 「……」 金竜はその声の主に頷くでもなく、ゆっくりと目を閉じた。 もはや、その体はゴールドドラゴンではなく、巨大な屍となった。 あなたたちは身構えたが、既にその場には何の気配も感じられなかった。 「魔物の気配は完全に消えました。ここは安全です。……今のところは」 エスターが呟くように言う。 「エスター、今の声の主は一体……?」 「貸し与えた、と言いましたよね」 エスターとエスメレーが互いを見つめ、神妙に言葉を交わす。 「まさか……」 「金竜の背後には何者かがいて……」 二人の震える声が揃う。 「この悪夢は、まだ始まってもいないのでは……!」 金竜の陰謀 完 To be continued to the Nightmare Dragon. 64 「……」 金竜が血だらけの舌をわずかに動かした。何か言おうとしているようだ。 だが、それはあなたに対してではなかった。 金竜は、光を失った眼で虚空を見つめている。何か人には見えぬものが目の前に体現しているかのように。 [視線の先を見る](63)