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2017-2020, SORCERIAN Next Team
0 はっと意識を取り戻す。 夢を見ていたようだ……? 誰かの声を聞いていたような気がする。 何も、思い出せない。 薄暗い通路の一角。 ガラクタのような備品に埋もれる形で 目を覚ましたのだ。 立ち上がり頭を強く振り、雑念を振り払う。 夢など気にしている場合ではない。 当初の目的に集中せねば。 ドラゴン。 あの終焉の日以降、世界は確かに変わってしまった。 各地では邪悪なドラゴンが復活し、死と混沌を振りまいていると言う。 この遺跡にも強大なドラゴンが巣食うと噂を聞き、 覚悟を胸にここまでたどり着いた。 倒さねばならない。 その願い叶わなければ、世界は闇に飲まれてしまうのだから。 ---- **このシナリオの目的** 邪悪なドラゴンを討伐するために、 王宮より派遣されたソーサリアン。 しかし、どういうわけか彼/彼女は記憶を失っているようだ。 あなたはそれを導く必要がある。 忘れることなかれ。ここは忘却の巣窟。 幾度となくソーサリアンは、忘却の危機に出会うだろう。 それを回避すること叶わず、完全なる忘却に陥ったとき―― ソーサリアンはこの遺跡を目的なく徘徊する、 生きる屍となるだろう。 だが、心せよ。 忘却を恐れていては、深淵にたどり着けぬと知れ。 ![洞窟](ayaemo-fantasy-in08-night-dark.jpg) [進む](2) 2 ごつごつした岩肌の通路を抜け、 少し広めの空間に出た。 狭苦しい洞窟から、ようやく開放されたと言ったところだ。 敷き詰められた石畳。 明らかに人の手が入っている。 もっとも、それらは大部分が砂に埋れ、 ひび割れ、ところどころ穴が空いている。 **いつ頃に作られた遺跡かはわからぬが、歴史を感じさせる。** 奥に扉が見える。 --- **ルール説明** ここでこのシナリオのルールを説明しよう。 上のメニュー中からから**STATUS**を押して ステータス画面を覗いてみてくれ。 HPという項目がある。 これは様々な行動により、減少する。 このシナリオにおいては、 ソーサリアンの「%blue%体力%/%」、そして「%blue%記憶保持力%/%」を表している。 これが0になってしまうと、なにもかもを忘れ、 ソーサリアンはこのダンジョンにて永久に、 自分が誰かもわからぬまま彷徨うことになるだろう。 なんとか0にならないよう、奥まで進んで欲しい。 --- [進む](3) 3 カチリ。 奥の扉に気を取られていたソーサリアンは、 床の罠に気づかなった……! 床には石畳が敷き詰められている。 そのうち、ちょうど足元の石が不自然に凹んでいる。 何やらスイッチのようなものを踏んでしまったようだ。 慌てて飛び退くも、時すでに遅し。 ゴゴゴゴゴ…… なんの変哲もない左右の石の壁が、地響きとともに開き出す。 中からは小鬼が飛び出してきた。 ゴブリンだ! あとからあとから、20体はいようか。 迷う時間はない。あなたは、 [1 戦う](4) [2 逃げる](5) [3 雄叫びをあげる](14) 4 数の差は絶望的。 このままでは為す術もなくなぶり殺しにされてしまう。 だが、それもこのまま手をこまねいていれば、だ。 一体でも多く倒せ。場を撹乱させろ。 ただ狩られるだけの存在ではないこと、思い知らせろ。 統制の取れなくなった集団など、恐るるに足らず。 得物を手に、最短距離のゴブリンに向かって特攻するソーサリアン。 ガキン 攻撃はゴブリンの棍棒に防がれるも、 返す刃で横薙ぎ。 下半身と上半身を切り離す。 鮮やかな腕前。 しかしソーサリアンは目を見張る。 確かに一刀両断を狙ったが、手応えがなさすぎたのだ。 まるで細い枝を叩き割るような脆弱さ。 そして見ればゴブリンからは血の一滴すら出ていない。 代わりに断面から煙を放出し、その体を消滅させた。 幻影……!? 幻を見せられているのだろうか。 実際には敵などいないのか? だが、その棍棒の攻撃は確かな質量をもって襲い来る。 取りうれる手は迎え撃つ、ただそれだけ。 ソーサリアンは果敢に戦う。 叫び声と金属のぶつかり合う音が幾重にも鳴り響き。 最後に立っていたのはソーサリアン。 消耗は激しいが、生き延びた。 BattleSheetを開きダメージボタンを押すこと。 [進む](6) [HPがなくなってしまった](28) 5 戦う相手を間違えていてはいけない。 敵はドラゴンなのだ。 小者を相手に、時間を取られるのは愚策といえよう。 この遺跡は危険なのだ。 理由はわからない。ただ、息苦しい。 歩を進めるごとに、頭はぼんやりし何かが抜け落ちていくような感覚がある。 ただ、ただ焦燥感。わけもなく叫びだしてしまいそうだ。 長くはいたくない。 ソーサリアンは戦いを避け、 時間を優先する決意をした。 掴みかかるゴブリン共を振り払い、奥の扉に向かって突撃する。 体当たりで扉を開け、飛び込む。そして鍵を―― 残念なことに、そんなものはついていない。 手短な岩を蹴り飛ばし、扉にぶち当てる。 即席のかんぬきだ。 ドン、ドン 扉を激しく叩く音がする。 いずれ破られてしまうだろうが、それで構わない。 今のうちに先へ進もう。 体力を消耗することなく進むことができた。 [進む](6) 6 扉を越えたその先へ進む。 ちろちろとした音が耳につく。 どこかで水でも流れているのだろうか。 通路の端を見ると、つま先ほどの幅の溝が掘られ そこに水が流れているようだ。 視線を巡らせ、水の出処を探す。 あった。 部屋の中ほどに鉢のようなくぼみがあり、 そこに水がひたされていた。 ちょっとした泉になっているようだ。 そういえば喉が乾いている。 戦いのあとだ。疲労を感じるが、 泉の色を見て諦めた―― その泉はすでによどみ、 **水底まで見通すことはできない。** 鼻をつく腐臭。 とても飲む気にはならない。 そのとき。 ざばりと音を立てて泉の中から現れるものあり。 鎌首をもたげたのは……一匹の蛇。 「なにをしに、こんなところまで」 なんと、口を効いた。 しゅーしゅーとした吐息の合間から、ガラガラ声がうつろに響く。 ソーサリアンはひるまない。 勇ましく自らの目的を告げる。 それに蛇は、うつろに笑う。 「ドラゴンを倒しに? 笑わせてくれる。 わかっているぞ。お前は今、自分のことすらわかっていまい。 強がっていてもその目を見ればわかる。 何か、忘れている。そんな不安を感じているのだろう?」 「そんな半端者に我が主、倒せるはずもなし」 ソーサリアンはそれに、 ![蛇](pakutaso-FSC-bo-runishikihebi-TP-Vr.jpg) [1 教えを請う](7) [2 甘言だ。切って捨てる](8) [3 締め上げる](15) 7 蛇はゆらゆらと長い胴体を振りつつ、語りだす。 「自分のことをソーサリアンなどと抜かしたな? 笑えぬ話」 「むしろお前は、こちらに属するものではないか。 その物騒な武器をしまえ」 意外な言葉に眉根を寄せるソーサリアン。 奇怪な。お前たちのような怪物と同じとは、虫酸が走る。 蛇は口角を歪ませる。笑って、いるのだろうか。 「人間は愚かだな。 信じたいものしか信じない。 ならば言ってみろ。なぜお前には記憶がない。 それこそ、王宮より派遣された冒険者などではないことを物語っている」 違う。確かに……なぜか記憶はぼんやりしている。 それはこの遺跡のせいだ。 この遺跡に漂う得体のしれぬ邪気が、 正気を危うくしているだけなのだ。 そういえば、彼/彼女はいったい、いつ この遺跡に来たのだったか。 気がついたときにはあの一角で気を失っていた。 一体今は何時なのか……? 不安を紛らわそうと、懐に手を当てる。 そこには書状が入っているはずだ。 国王から討伐の命が下った勅命が。 しかし懐を探る手は空を掴む。 書状が――見当たらない……? ぐらり。視界がゆがむ。 それに畳み掛けるようにささやきかける蛇の嘲笑。 「その分では倒すという相手の名もわかるまい。 言ってみよ。我が主ドラゴンの名を」 ${if -i10} そのくらい何だ……! ソーサリアンはその名を唱えようとして 「 」 ざわり。 言葉が出てこないのだ。白く塗りつぶされた空白。 そんなはずはない。 無理矢理にでも声を出す。 ドラゴンの名は、 ${/if} ${if i10} 何をわかりきったことを。 ドラゴンの名は、 ${/if} [1 レッドドラゴン](16) [2 ブルードラゴン](16) [3 どうしても選ぶことができない](18 "-i10") [3 ナイトメアドラゴン](24 "i10") 8 僅かな準備動作すら見せず、最短で攻撃を繰り出す。 避けることなど出来はしない。 短い悲鳴をあげ、真っ二つにちぎれる蛇。 何かを知っている風だった。 それは気にもなるが、どうせこちらを惑わす。戯言だ。 道草を相手をするつもりはない。 「くくく、それもいいだろう……」 のたうち回る、半分になった胴体。 最後に一度身じろぎしたかと思うと、蛇は黒いシミとなって消えた。 こいつもか。そういえば血も流れていない。 通常の生物ではないようだ。 泉を抜け、次の扉を開ける。 [進む](9) 9 そこは回廊になっていた。 大人5人が横に並んで歩けそうなほど広く、 閉塞感はないが、ただ長い。 両脇の壁には一定間隔でろうそくが備えられており、 淡い光を放っている。 奥の方を見やるとその光を持ってしても 薄暗がりとなっており、よくは見えない。 広い通路とはいえ一本道。 ここを挟み撃ちにされたら逃げ道などない。 ゾッとする。 恐ろしい考えを振り払いながら、奥へ進む。 中程まで歩いた時だろうか。 突然、ろうそくの火が全て消えた。 古典的な罠なことだ……! ソーサリアンは、 [1 懐から火打ち石を取り出す](25) [2 七星に力を込める](26) [3 耳をそばだて襲撃に備える](27) 10 はっと意識を取り戻す。 夢を見ていたようだ……? 誰かの声を聞いていたような気がする。 何も、思い出せない。 薄暗い通路の一角。 ガラクタのような備品に埋もれる形で 目を覚ましたのだ。 立ち上がり頭を強く振り、雑念を振り払う。 夢など気にしている場合ではない。 当初の目的に集中せねば。 ドラゴン。 あの終焉の日以降、世界は確かに変わってしまった。 各地では邪悪なドラゴンが復活し、死と混沌を振りまいていると言う。 この遺跡にも強大なドラゴンが巣食うと噂を聞き、 覚悟を胸にここまでたどり着いた。 倒さねばならない。 その願い叶わなければ、世界は闇に飲まれてしまうのだから。 歩き出そうとして、眼の前の壁の様子に気づく。 幾重にも刻まれた、ミミズ走りのような剣の傷跡。過去の戦いの激しさを物語るようだ。 はっと気づく。違う。これは、文字だ。 **――持ち物を確認せよ――** 確かにそう読み取れる。 [確認後、進む](2) 11 片足が不自由なくらい、なんだ。 あなたはその掴まれた片足を中心にしてまるで舞うように。 果敢に戦う。 しかしながら全方位を守れるわけもなく、 背後を狙われ手痛い攻撃を食らう。 鈍い痛み……! ――が、お返しだ。 前を向いたまま、脇越しに鋭い一撃を繰り出す。 引き際を見誤った敵の断末魔の叫び。 そのままそいつを肉の壁として利用しつつ、前から襲いかかろうとする敵に相対する。 怒号。悲鳴。血しぶき。 傷を負い、体力を消耗しながらも、 ゴブリン共を切り飛ばす。 程なくして。 周りに広がるは、小鬼どもの累々たる死体。 生き延びたのだ。 なんとか倒せたようだ。 だが安心するにはまだ早い。 最後の仕上げだ。 戦いの最中に、振りほどくことの叶わなかった白い手を、 [1 切り飛ばした](20) [2 引きずり出した](21 "-i10") [2 この先は、すでに知っている](49 "i10") 12 固く身を護る。 一つひとつの攻撃はそう重くないとはいえ、 人数が多い。これらを相手にしていてはまずい。 なんとか、一網打尽にしなくてはならない。 ゴブリン共が群がってきたところで、 あなたは懐の星々に念を込める。 ――EXPLOSION――! 一瞬、周りの空気が歪んだように見えた。 次の瞬間、凄まじい轟音。 遺跡を破壊しかねない爆発。 一瞬にして消費尽くされた酸素。 その間隙に周りの空気が勢いよく流れ込み、ゴウッと音をたてる。 敵は爆発に巻き込まれ、四肢を吹き飛ばし息絶えた。 当然、足を掴んでいた白い手も例外ではなく。 むごたらしく破壊されていた。 軽く足をゆらし、その残滓を振り払う。 先へ進むのだ。 [進む](22) 13 ろうそくの立ち並ぶ通路を抜けるとそこは、 **美しく舗装された階段だった。** 階段を一段ずつ上がる。 最上段に大きな扉が見える。 踏みしめるほどに、その姿が段々と大きくなっていく。 ――強い違和感。 この先に、何が待ち受けているか、知っているような。 あなたは歩を止め、逡巡する。 この先に進めば、あなたはあなたでいられない。 大きな、耐え難い苦しみに遭遇するような。そんな気がしてならない。 それでも進むのか? なんのために、この地に舞い戻ったのだったか。 思い出すべきことは終わったのか? [構わず進む](31) [もう一度、振り返る](34) 14 威嚇も時には武器となる。 ソーサリアンは大きく息を吸い込むと、吠えた。 そのさま、まるで雷。 単なる遠吠えと嘲るものもいよう。 だが鍛えられた戦士の発する声色は、 獰猛な怪物ですら足を止め、ひるませることができる。 ただし――生身の相手で、あれば。 ゴブリン共は何ということもなく押し寄せると、 殴りかかりにくる……! 何ということだ。相対してわかった。 こいつらは生き物ではない。 罠に応じて生成される、魔法生物のような。 幻影のようでいて幻影ではない、 その打撃は確実にこちらに致命傷を与えてくる。 出遅れてしまったソーサリアンは、ダメージを負いつつ、なんとか倒す。 体力の減少とともに、頭が奥が霞む。 何かが、薄いヴェールをかけていくかのようだ。 焦りだけが募る。 BattleSheetを開きダメージボタンを押すこと。 [進む](6) [HPがなくなってしまった](28) 15 ソーサリアンはその生意気な蛇を掴むと、 ぎゅうぎゅうと絞り上げた……! まるで雑巾のように。 ぐええと潰れたような声を発する蛇。 交渉事において どちらが上か、思い知らせるのは必要な作業である。 死にたくないのなら、そのふざけた態度を改めることだな……! 「くくく……我は脅しには屈しない…… 答えが欲しいのではないのか……? そんなものでは得られるものも得られんぞ……?」 生意気な口を。 ソーサリアンはそれに、 [1 手を緩める](7) [2 そのまま締め続ける](36) 16 蛇は、つまらなそうに首を巡らす。 「愚かな。己の目的もわからぬ蒙昧な輩は、 忘却の渦に飲まれるがいい」 カコリ、と開かれる顎。そこから吹き出す黒い煙。 避けること叶わず、吸い込み、咳込み、 膝を折るソーサリアン。 ガクガクと震え、立っていられない。 やはりこちらを油断させる罠だったか…… 頭が朦朧としてきた…… こんな道半ばで倒れるなど、あっては、ならないこと―― 全ては薄ぼんやりとしたモヤの中へ。 ソーサリアンはそこで倒れてしまった。 ずしり。 何かにのしかかられる感覚。 頭では危機を感じているのに、心が動かない。 やがて訪れる寒さと、眠気。 そこで 記憶は 途切れた [進む……?](34) 17 「わたしの名を聞くか」 フクロウは目を伏せ、思案深げに軽く震える。 「良かろう。それが君の問いならば。 わたしは森羅。ドラゴンの支配する記憶や夢。 我が主はそれらをもっぱら略奪するのみだが。 誰かがそれを記憶する役目を担わなくてはならない。 わたしはそのために存在している」 記憶だと? では。 「そう。君が今不安を抱えていること。 その原因を取り除くこともできるかもしれない」 思わず身を乗り出すあなた。 その興奮をよそに、動じぬフクロウ。 悲しげに首を横に振る。 「だが、君は選択を誤った。 すべては終わった、過去のこと」 「わたしが話をできるうちに、 聞くべきことを引き出して置くべきだったのだ。 ああ、ああ。もう時間のようだ。 さらば、かつての友よ……」 フクロウはゆっくりと体を傾けると、 泉に向かって落ちていく。 危ないと、手を伸ばすも、 泉に落ちる姿なし。 いつの間にかフクロウは消え去ってしまった。 ふわりと羽が1枚だけ、水面に残る。 いったい、どういうことなのか。 過去のこととは……? [釈然としないが進む](31 "-i12") [釈然としないが進む](13 "i12") 18 何かあるはずだ。 でも、どうしても答えは出てこずに、 脳裏をかすめてゆくだけ。 蛇は、つまらなそうに首を巡らす。 「愚かな。己の目的もわからぬ蒙昧な輩は、 忘却の渦に飲まれるがいい」 カコリ、と開かれる顎。そこから吹き出す黒い煙。 避けること叶わず、吸い込み、咳込み、 膝を折るソーサリアン。 ガクガクと震え、立っていられない。 やはりこちらを油断させる罠だったか…… 頭が朦朧としてきた…… こんな道半ばで倒れるなど、あっては、ならないこと―― 全ては薄ぼんやりとしたモヤの中へ。 ソーサリアンはそこで倒れてしまった。 ずしり。 何かにのしかかられる感覚。 頭では危機を感じているのに、心が動かない。 やがて訪れる寒さと、眠気。 そこで 記憶は 途切れた [進む……?](34) 19 ごつごつした岩肌の通路を抜け、 少し広めの空間に出た。 狭苦しい洞窟から、ようやく開放されたと言ったところだ。 敷き詰められた石畳。 明らかに人の手が入っている。 辺境の遺跡に似つかわしくない、 **美しく塗装された壁の装飾、敷き詰められた石畳。** ペンタウァ王宮もかくやという様相だ。 ふと、床に目をやる。 嫌な予感がしたのだ。 なんと、一部だけ色が変わった床に気づいた。 危ない。罠に違いない。 あなたは危うげなく罠の隣を通り過ぎた。 そのとき、床の色の変わった部分が突然弾け飛び、 中から白い手が! 意表を突かれ、足首を掴まれてしまう。 バランスを崩し、転倒する。 やられた……! 二段構え! そして左右から現れるゴブリン共。 まずい、逃げる暇がない。 あなたは不自由な姿勢ながらも、 [1 戦う](11) [2 耐える](12) 20 迷いなく切り飛ばす。 腕は宙を舞いながら 何かを掴むように手を開閉させたかと思うと、 血をまきちらしながら床に一度跳ね、二度跳ね。 もはや動くものは何もない。 気をつけなくてはならない。 今の歓迎で身に染みただろう。この神殿はあなたを排除しにかかっている。 目的を果たすまで、命を失うわけには行かない。 慎重に進もう。 [進む](22) 21 あえて、あなたは引きずり出す……! 奇妙な悲鳴、石畳を砕きながら、腕の先が姿を現した。 なんと、それは奇妙な姿の怪物であった。 立派なのは右腕だけで、その先はねじれたような胴体に 枯れ葉のような手足がぶら下がっている。 ところどころ、歯車のようなものが体の各部から覗いている。 奇怪な。まるで生き物と機械のキメラのようだ。 怪物は吠える。 「この裏切り者め! ナイトメア様に楯突くとは。 お前など、お前など……!」 わめき、掴みかかってくる怪物。 その胸に得物を突き刺し、沈黙させる。 怪物はビクリと体を震わすと、それきり動かなくなった。 物言わぬ躯になったそれを放り捨てる。 禍根を断たねばならぬのだ。 そのために戻ってきたのだから。 しばらく待ったが、次なる敵の襲撃はない。 一段落したようだ。 武器をしまい、ひと息をいれる。 ――そのとき閃光のように頭に浮かぶ、ある映像―― 部屋の中心で鳴動する巨大な卵。 表面に、びっしりと敷き詰められた闇色の鱗。 卵は蠢き、畳まれた翼と竜の首があらわになった。 すべてを忘却に誘う冥府の瞳。 永久の眠りを食い破り、自我を持つに至った。 そう、敵は**ナイトメアドラゴン**。 その息は、すべての過去、記憶を奪い去る。 倒さねばならな、かった―― 白く明転した視界はやがてそのままブラックアウトし、 全ては暗闇の中へ。体はうまく動かず、 意識だけが遠く、遠くへと旅立っていく―― あああ、ここにはいられない―― [アイテムを取得し、進む](10) 22 どこかで水でも流れているのだろうか。 通路の端を見ると、つま先ほどの幅の溝が掘られ そこに水が流れているようだ。 視線を巡らせ、水の出処を探す。 あった。 部屋の中ほどに鉢のようなくぼみがあり、 そこに水がひたされていた。 ちょっとした泉になっているようだ。 **澄んだ色の泉。** 目を凝らすと、水底をなにかが動いている。 何らかの生き物が住んでいるようだ。 ふと気配を感じ、目を下から正面にずらす。 泉の中程に一本の柱のようなものが突き出ており、 その頂上には。 翼を折りたたみ、軽く首をかしげ。 片足で器用に佇んでいる。 それは謎めくフクロウだった。 薄暗がりの中キラリと光る瞳。 こいつもあなたを害する敵だろうか。 あなたは身構える。 フクロウは首を巡らすと、 「ホ……舞い戻ったか。あるべき場所に」 語りだす。 それに、あなたは。 ![フクロウ](gahag-0037972155-1r.jpg) [1 お前は何者だ?](17) [2 舞い戻ったとは?](29 "-i11") [2 この先は、すでに知っている](50 "i11") [3 先手を打つ](30) 23 きれいに整備された階段が現れた。 **もっとも、すでにところどころひび割れ、隙間からは奈落の底が覗える。** 踏みしめて登るのには勇気がいりそうだ。 一歩ずつ、足元を確かめながら登る。 ソーサリアンとしての勘が告げる。 そろそろ目的の相手は近いと。 まだ姿を見ていないにもかかわらず、ピリピリとした感覚が肌を伝う。 最上段。両手を横に広げても端まで届かない、大扉だ。 取っ手に手をかけるが、開く気配はない。 一見したところ、鍵穴のようなものは見えない。 さて、どうしたものか…… そのとき、異変に気づく。 扉に赤黒くついたペンキのようなもの。これはまさか……! それと同時に背後から感じる強烈な寒気。 何かが、迫っている。 前は開かない扉。 なんだこれは。息吹。心の芯まで冷え切ってしまいそうな。 見えたのは、恐ろしげなアギト。竜の口。 逃げなくてはならない。 ソーサリアンは扉を叩く。 皮膚が裂け血がほとばしるほどに。 扉は開かない。 叫び声を上げる。声の限りを尽くし、 全力で体当たりする。 **扉は開かない。** やがて訪れるどうしようもない寒気。 頭の中が書き換えられる感覚。 「 」 空白 BattleSheetを開きダメージボタンを押すこと…… [HPがなくなってしまった](28) 24 蛇は震え、振動しだす。 「なぜその名を……?」 「お前の記憶は我が主によって奪われたはず。 自力で取り返すなど不可能なはず……!」 もはや蛇は問答をする気などない様子。 大きく顎を開き、襲いかかってきた! せいぜい、腕ほどの太さもないと思われた蛇は、 近づくにつれサイズを増し、今やその開かれた大顎は ソーサリアンを飲み込まんばかりだ。 させじと得物を構えるも、間に合わず。 なんとか両腕、両足で顎が閉じられるのを防ぐので精一杯だ。 膠着状態に落ち着いたものの、このままでは 攻撃もままならない。 冷たい息。赤黒く、奥の見えない口腔。 「食いちぎってやる……」 聞こえてくる、滅びの文句。怖気が走る……! そのとき、脳裏で何かが、聞こえた、気がした。 ――STAR BLADE――!! 背から肺にかけて軽い衝撃と、味わったことのない開放感。 果たして今のは自らが発した言葉だったのだろうか。 逡巡する間もなく。 膨れ上がる魔力、まばゆい閃光。 宙に浮いた刃は、不可視の腕に掴まれ一薙ぎされたそれは。 蛇の口を横に切り裂いた。 どす黒い煙を傷口から吹き出しながら、緩やかなカーブを描く蛇の首。 今の力はいったい――あまりに鮮やかすぎる魔法。 まるで、自分が自分でないような。 考えても答えは出ない。 先へ進もう。 [進む](9) 25 戦士にとって五感を奪われることは、死の階段を駆け上がるようなものだ。 一刻も早くこの状態を解消しなくてはならない。 ソーサリアンは荷物から火打ち石を取り出した。 叩きつけ、、火花をちらす。 ――ヒュン 風音。何事う間もなく、腕に衝撃。 そして遅れてくる鋭く鈍い痛み……! なんと、腕から先程まで存在していなかった枝が突き出ている。 矢、だ。やられた……! 火花で位置を特定されたのだ。 なんとか光をつけることには成功したが、 すでに下手人は逃走した後のようだ。 体力だけ奪われ、 合わせて記憶も薄れていく―― BattleSheetを開きダメージボタンを押すこと。 [進む](23 "-i10,i11,i12") [進む](32 "i10,i11,i12") [HPがなくなってしまった](28) 26 貴重な星だがやむを得ない。 道具袋の中の奇跡の輝きの存在を感じながら、唱える。 ――密やかに。そして確かに、力強く。 ――LIGHT CROSS――! 明転する空間。ソーサリアンから急速に広がるまばゆい光。 ギュワッ 短い悲鳴。鋭くその方向へ目を凝らす。 部屋の端で弓をつがえるゴブリンあり。 突然の光に目をやられているようだ。 そんなチャンスを見逃すソーサリアンではない。 一足飛びに攻撃範囲に接近すると――刺突。 突撃の威力も殺さぬまま、 小柄な鬼を、壁に縫い付ける。 無駄なダメージを負うことなく倒せたようだ。 先へ進もう。 [進む](23 "-i10,i11,i12") [進む](32 "i10,i11,i12") 27 視覚が当てにならない今、 いたずらに動くよりも他の感覚を研ぎ澄ますべきだ。 このような罠を用意したからには 次の手を打ってくるはず。 些細な物音を聞き漏らさないよう、耳をそばだてる。 音は、しない。無音。 ドクドクという己の鼓動のみ、やけに響く。 ぶるりと体を震わす。見えぬ恐怖と戦う己を律するかのように。 音は……しない。 ただ、少し寒い。 …… 体が、こわばる。 し、ま……った 暗闇こそ、やつのテリトリー。 覆いかぶさるような、強烈な寒気。 意識を保っていられない。 背中に、重く重くのしかかり。 思わず膝をついてしまう。 ああ寒い…… なぜこんな冷たい地面の上で、倒れなくてはならないのだろうか。 柔らかい布団。冒険から帰ってきたときの、一時の安らぎ。 こんなときだというのにペンタウァの宿が思い出される。 我らのトラベラーズイン。 他の冒険者と賭け事に興じたり、些細な依頼ごとを解決したり。 願わくば、もう一度あの宿で時を過ごしたかった―― ソーサリアンはそこで意識を失ってしまった…… [進む……?](34) 28 もう、何も残っていない。 記憶も、何もかも、奪われてしまった。 遺跡を彷徨うソーサリアンを呼び戻せるものは何もない。 あなたは、しくじったのだ。 --- [ヒントを読む](35) [ゲームオーバー](37) 29 「ホッホウ。そんなことも忘れてしまったのか?」 首をくるりと回すフクロウ。 「我らが主の「魔」は、かくも強力か。 君が忘れていてはどうにもならない。 己の身を振り返ってはどうか?」 ふと、泉に映る自分を見た。 漆黒のローブをまとう痩身の男。 頬はこけ、決して健康には見えぬが 意志の強そうな眼光は、理性のきらめきを感じさせる。 手には節くれだった杖。 先端についた宝石は、鈍く明滅している。 一瞬の違和感。 まるで普段は違う格好をしていたような。 しかし違和感は一瞬で薄れ、今の自分こそが自分なのだと、しっくりきた。 口は、言葉を紡ぐ。 禍根をたちに来たのだ、と。 「うむ。今はそれでいいだろう」 「ならば次はこちらが話すのが、道理というものだ」 フクロウは語りだす。 生命の誕生の秘術。機械仕掛けのからくり。 そういったものに長けた君は、 己の可能性を確かめようと、最高傑作たる神を作った。 竜。 あまりのことに呼吸が止まる。 **この手で竜を作ったなどと**。 記憶の混乱があるあなたを、惑わせようとする罠か。 だが、頭のどこかでそれを事実だと認める自分がいた。 言葉が自然にするすると出る。 「そうだ。休止符をうちにきたのだ。夢を見る竜。 幸せな夢を見ることで、その魔が大気を伝い、 世に安心と安らぎを与えるはずだった竜」 フクロウは羽を羽ばたかせる。 「そう。それは叶わなかった。竜は寝ていてなど、くれなかった」 代わりに、人々に悪夢を与え、記憶を奪うようになっていた。 こうなっては仕方ない。倒すしかない。 「それで舞い戻ったと言うわけだ。かつての君の古巣に」 あなたは疑問を口にする。 それを聞いて、お前は何もしないのか? ほかの敵のように、襲いかかってきたりしないのか? 「むろん竜は我が主であるが―― 君も大切な友だからな」 そこで、フクロウは寂しそうに、羽を折りたたむと。 「だが、悲しいかな。君は失敗してしまった。 かつて己が手で作り上げた相手は、想像以上に手ごわかった」 「そして我も。君に加担した罰を受けたのだ」 柱から転がり落ちた。あっと声を掛ける間もなく。 そうだった。 これは過去の話。 あなたは失敗したのだった。 竜と対峙し、記憶も意思も奪われ。 命すらも奪われたはずでは……? 全ては過去のこと。 ああ、ああ、どうにもならない。 そしてこの記憶すらも消えて行ってしまう―― ぐらり。歪む視界。 いつまでもここにはいられない。 戻らねばならないのだから―― やがて 何も見えなくなり あなたは 意識を失った [アイテムを入手し、進む](10) 30 ――FREEZE――! 空気のきしむ音がした、気がした。 途端。凄まじい冷気があなたの手の平から放たれ、 泉に向かって走る。 泉は直線上に凍りだし中央の柱まで氷の道が出来上がる。 フクロウは逃げ出す間もなく運命をともにし、氷漬けの標本と化した。 驚愕の表情を浮かべ、そのまま永遠に動きを止めるフクロウ。 魔に傾ける耳なし。 先へ進まねばならない。 [廊下へ](31) 31 ろうそくの立ち並ぶ通路を抜けるとそこは、 **美しく舗装された階段だった。** 階段を一段ずつ上がる。 最上段に大きな扉が見える。 踏みしめるほどに、その姿が段々と大きくなっていく。 ――だんだんと、思い出してきた。 あなたはこれ以上進むことは叶わなかったのだ。 なぜならここで。 ゾクリ。やってきてしまった。 迫りくる冷気。心はしぼみ、闘志すらも凍りつきそうな。 ゆっくりと振り返る。そこには、霧に包まれ姿もはっきりせぬ、 巨大な首だけの竜の姿。 ――この幻影に敗れ去ってしまったからだ。 こやつは門番。 眠れるドラゴンを守るため。 不届きな侵入者に死の接吻を届けるため。 こいつには魔法も武器もきかない。 あなただからこそ、一番理解している。 近づかれたが最後、すべての記憶を奪い去られ、葬りさられてしまう。 立ち向かうには埒外の存在になるべし。 2つの心。2つの記憶。 ……だが、人間にはそんなことはできない。 あなたは両腕を差し出すと、静かにその時を待った。 無防備なその両脇に、がぶりと噛み付く朧な竜。 漏れる苦しみの悲鳴。 だが、ここで唱えるべき言葉は悲鳴ではない。 カッと目を見開き、 あなたは最後の力を振り絞り、唱えた。 記憶や夢の秘術に長けたあなただからこそ 実現できた叡智。 「 」 すでに頭から竜のアギトに飲み込まれ、 声は外に漏れずとも。 その秘術は、確かに発動した。 ――これが、この世界に残された、 あなた自身の最後の記憶―― [アイテムを取得し、進む](10) 32 きれいに整備された階段が現れた。 **もっとも、すでにところどころひび割れ、隙間からは奈落の底が覗える。** 踏みしめて登るのには勇気がいりそうだ。 一歩ずつ、足元を確かめながら登る。 ソーサリアンとしての勘が告げる。 そろそろ目的の相手は近いと。 まだ姿を見ていないにもかかわらず、ピリピリとした感覚が肌を伝う。 最上段。両手を横に広げても端まで届かない、大扉だ。 取っ手に手をかけるが、開く気配はない。 一見したところ、鍵穴のようなものは見えない。 さて、どうしたものか…… そのとき、異変に気づく。 扉に赤黒くついたペンキのようなもの。これはまさか……! それと同時に背後から感じる強烈な寒気。 何かが、迫っている。 前は開かない扉。 なんだこれは。息吹。心の芯まで冷え切ってしまいそうな。 見えたのは、恐ろしげなアギト。竜の口。 扉は開かない。竜は迫ってくる。 だが、知っている。ソーサリアンは、あなたは見てきたはずだ。 2つの記憶を。 それこそが、あなたが託した最後の希望。 機械仕掛けの竜に奪える記憶は一つだけ。 “彼ら” の記憶を奪うことはできない。 霞のような竜が、ソーサリアンに食らいつく……! しかし、そのアギトはソーサリアンの体をすり抜け、実害を与えられない。 苛立ちか、竜の首はひとしきり扉の前で暴れまわり、 こちらを睨めつけた後。 扉の中にすっと吸い込まれていった。 ――生き延びた。 ようやくわかってきた。 この遺跡に来てから、頭の中をかすめる 身に覚えのない記憶。 記憶を失い、さまよいながらもここまでたどり着いた、 その行き先を指し示してくれた謎の存在。 ソーサリアンは、軽く天を見上げる。 あなただったのだな。 ソーサリアンは振り返る。 かつて、まるで人間のように振る舞う人形の手伝いをしたときのことを。 己には未知の技術だが、そういった機械仕掛けにより 竜を作り出すことも可能なのだろう。 見せられた過去の記憶が教えてくれる。 **――あなただったのだな。** 答えは返せぬ。すでに現世とのつながりは断たれてしまっているのだ。 できることならそうだと言いたい。 後を頼むと。 それは今となってはかなわない、儚い望み。 だがそれでも。 ソーサリアンはうなずくように軽く頭を振ると。 眼前の大扉を押す。 あれほど開かなかった扉が、すっと開いて行く…… [進む](33) 33 卵。闇色をした、巨大な球体。 扉を開け、目に飛び込んで来たのものを 形容するとそんな物体であった。 卵は身じろぎし、鎌首をもたげる。 術符を鎖のように首に数多く巻き付けたドラゴン。 吐く息は怪しげな効果で眠気を誘う。 「王宮より派遣されたものか。 どうやってここまで? この遺跡を訪れたものは、何者であろうとも己を忘れ、 永遠に彷徨う躯となる定めだと言うのに」 眠っているはずだったドラゴンは、このように自我を持ち、 世界を破滅に導こうとする。 あなたは、ソーサリアンは拳を握る。 一人の力ではない。 かつてお前を生み出してしまったその過ち、いまここで正そう。 胸に手をやり、確かにそこにいるはずの協力者の存在を感じ取る。 竜は目を細める。瞳に理解の色。 「なるほど。 ただの人間に我が秘術を解き明かす道理はなし。 貴様に取り付いているのだな? かつての創造主よ」 巨躯を小刻みに揺らし、薄く笑う。 「だが悲しいな。今の貴様はただの操り人形というわけだ。 記憶を失うより始末が悪い」 その言葉に、あなたは戸惑う。 魔術より生まれ、機械仕掛けにより動く竜の討伐は、かねてよりの悲願。 この手で生み出してしまった過ちを正すため。 だが、それはソーサリアンにとっては……どうなのだろうか。 同じ使命を背負ってくれていると、言えるのか。 知らず、彼/彼女の運命を操っていたのでは―― すっと一歩前へ出るソーサリアン。 「違う。これはわたし自信の意思。 悲しき竜よ。お前を世界に解き放つわけには行かぬ」 その堂々たる姿を見て、ああ、ああ、よかった。 この忘れられし遺跡に到達したのが。 囚われていたこの妄執を見出してくれたのが―― ――そなたでよかった……! ならば迷いはない。 ともに終わらせよう。偽りの輪廻を。 [決着をつける](38) 34 はっと意識を取り戻す。 夢を見ていたようだ……? 誰かの声を聞いていたような気がする。 何も、思い出せない。 薄暗い通路の一角。 ガラクタのような備品に埋もれる形で 目を覚ましたのだ。 立ち上がり頭を強く振り、雑念を振り払う。 夢など気にしている場合ではない。 当初の目的に集中せねば。 ドラゴン。 倒さねばならない。**あなた**には、その理由があるのだから。 **因縁深き、かの竜**を討つために、 各地で厳しい修行に励み、研鑽を積んできた。 今のこの技術があれば、必ずやドラゴンを討伐できるだろう。 それが叶わなければ、世界は闇に飲まれてしまう。 [進む](19) 35 罠をやり過ごし、消費を最小限に抑えることは必要である。 いたずらに同じ罠にはまるのは愚の骨頂と言えよう。 しかし、準備の整わぬまま深淵にたどり着いたとしても、 必ず滅ぼされてしまう。 注意すべきは次の3つ。 **一つ。** 深淵に向かうには、「%blue%鍵%/%」が必要だ。 揃えるべき「鍵」は3つ。 **二つ。** 「%blue%時%/%」に注意を払え。 この物語には、どうやら2つの異なる時が流れているようだ。 重要な「鍵」は、全て記憶の中に。 **三つ。** 「%blue%メモ%/%」を取れ。 いかな叡智を持ってしても、 過去の事象、その時の記録なくして正しい道は辿れぬ。 各選択肢で、何が起きたのか。 その記録が、あなたを救うことだろう。 36 蛇は最後の反撃とばかり、 噛み付いてきた。痛――ッ! 牙が腕に突き刺さり、とっさに蛇を引きちぎる。 ぬるい血が腕を伝う。 牙を抜くのには時間がかかった。 毒ではないようだが…… 傷跡は痛み、その分だけ力が抜けるようだ。 焦って行動を見誤ったか…… ともかく、先へ進もう。 BattleSheetを開きダメージボタンを押すこと。 [進む](9) [HPがなくなってしまった](28) 37 ソーサリアンは目的を果たせぬまま、 遺跡を彷徨う生ける屍となってしまった。 いつの日か次なる来訪者が この遺跡の闇を払ってくれるまで。 その魂、救われることはないだろう。 各地で、滅びを呼ぶ竜たちが復活を果たしている。 終焉のときは近い。 どうか、この世界が終わる前に、 囚われのソーサリアンの魂が救われんことを。 38 ナイトメアドラゴンは巨大な腕を振るう。 襲いくるその迫力。思わず、実際の二倍、三倍の質量を幻視した。 暴力が形を持って襲いかかるかのようだ。 即座に対応しなければならない。 ソーサリアンは、 ![ナイトメアドラゴン](freepik-318666-P99K85-981r.jpg) [1 回避する](39) [2 いなして、反撃する](40) 39 横っ飛びに避ける。 床に手をつき、すばやく反転。 こちらとの体格差は歴然。 正直に筋力勝負をする必要はない。 攻撃は避けるに限る。 こちらの攻撃も届かないが、焦ってはならない。 嘲るように肩を震わすドラゴン。 臆病者、と罵られているかのようだ。 なんとでも言え。 最後に勝つのはこちらだ。 ――ちがう。 ナイトメアドラゴンの性質をよく知るあなたの警告は届かず。 遅すぎた。 突然、その場に膝をつくソーサリアン。 震えが走る。 直接的なダメージはない。 だが、何か奪われた。 ドラゴンの体が発する忘却の濃霧が、 ソーサリアンから大切なものを剥ぎ取ったのだ。 STATUS画面を開き、所持欄を確認すること。 この遺跡に入ったときから感じていたはずだ。 進むごとに危うくなる意識。何かを忘れる焦燥感。 ましてここは親玉の居座る部屋。 時間をかけることそのものが、攻撃を受けていることに等しい。 危険を犯してでも攻めに転じるべきだったか―― 大丈夫だ。記憶が奪われたとしても、 まだあなたとソーサリアンのつながりは残っている。 奪われたら、思い出させればいい。 武器を取れ。二人の力を見せしめよ。 [次へ](41) 40 真っ向から受け止める。 甲高い金属音と、凄まじい衝撃。 足元でひび割れる石畳。 闇色の鱗は刃物をぶつけられても傷一つつかない。 上から叩きつけられ、まるで体が地に沈むような圧迫感を受ける。 重心をずらし、力の流れを変える。 攻撃をそらされたドラゴンの腕はそのまま石畳に突き刺さる。 体がよろけた――! 一瞬のスキを見逃さず、 関節部――首の隙間に得物を突き出す。 ズブリ。 浅い! ドラゴンは身をよじり、首への刺突を避けた。 傷は与えられたものの、それは肩口。 致命傷には程遠い。 ドラゴンは怒り狂ったように尾と翼を振り回す。 これでは近くにいられない。 一歩、二歩ステップ。距離を取る。 [次へ](41) 41 今度はこちらの反撃だ。 巨体からは想像できぬ俊敏さで繰り出される攻撃の嵐をかいくぐり、 巧みなフェイントでミスを誘う。 狙い通り。ドラゴンの腕が伸び切った。 針のように得物を突き刺す……! だが。間髪入れずに襲いかかる尾の一撃。 死角からの攻撃に、一瞬反応が遅れる。 [1 逆方向に飛ぶ](42) [2 たたき斬る](43) 42 どうせ避けきれないならば、と。 ソーサリアンは逆方向に飛ぶ。 一拍置いて、その体に叩きつけられるドラゴンの尾。 その衝撃を少しでも殺そうと、そのまま逆らわず 吹き飛ばされる。 壁に叩きつけられる瞬間に両足をつけ、器用に壁に着地。 急いで地面に飛び降りる。 一瞬後に頭上を通り過ぎる重量級の尾の一撃。 壁を強打し、破片がパラパラと頭に降りかかる。 なんとか、しのいだ。 [次へ](44 "i13|i14") [次へ](52 "i10&i11") 43 甘い。トカゲの尻尾とはわけがちがう。 相手は、刃物すらも弾き返す鋼鉄の鱗。 不完全な姿勢からの攻撃は難なく弾かれ、 胴体に太い尾が叩きつけられる。 その勢いのまま、軽く宙を舞い、床に叩きつけられるソーサリアン。 血反吐を吐きつつ、呻く。 ダメージも大きいが、それよりもまずい、すぐに動けない。 敵を前にして絶望的なスキ。 うめき、震えるソーサリアンに第二撃。 地から這うようなドラゴンの頭突き。 ゴムボールのように跳ね飛ばされ、 今度こそ受け身も何も取れずに叩きつけられる。 衝撃……! 肺から空気が全て抜ける。 何かの砕ける音。 肋骨の何本か、逝ったか―― ……? いや――痛みはない。 立ち上がれる。 今の衝撃は……? 腑に落ちない様子のソーサリアンに、 「あなた」は息を呑む。 敵はナイトメアドラゴン。 砕かれたのは、何よりも大切な、記憶――! STATUS画面を開き、所持欄を確認すること。 記憶は、あなたとソーサリアンをつなぐたった一つの絆。 それが壊されるということ。 機械仕掛けのドラゴンを作りし稀代の魔術師。 その存在を知るものは誰一人―― ……いや。違う。 この記憶がなければ、 彼/彼女自身の記憶を失い、永遠に遺跡を彷徨う屍となっていたはずだ。 まだ、大丈夫だ。つながりの記憶失ったとしても。 あなたが、いるのなら。 ソーサリアンは一人ではない。 二人でなら必ず、倒せる――! [次へ](44) 44 度重なる攻撃、疲労が募る。 だが、毅然と顔を上げ、敵を睨む。 ――そのとき、ソーサリアンに戦慄が走る。 四肢を地につけ大きく口を開き、口腔をこちらに向け―― その奥底が怪しく光る。 まずい、何らかの攻撃動作だ……! **本気で行くぞ…………** どこからかそう声が響いた、後。 ――よけろ 絶対に食らうな――! 頭の何処かで何かが警鐘を鳴らす。 その切羽詰ったような響きに、ソーサリアンは [1 全力で回避する](45) [2 最接近する](46) 45 恥も外見もない。全力で駆け出し、距離を取る。 入り口の扉まであと3歩というところで、 後ろから迫る滅びの冷気。 振り向くと、それは視界全体を覆う闇のブレス。 しまった……離れたことで、かえって範囲が全域になってしまったのだ。 ――忘却のブレス ナイトメアドラゴンのそのアイデンティティたる 闇と眠りの息吹が、ソーサリアンを無慈悲に包み込む。 身を焼かれるような痛み。ガタガタと震え、 骨を、心臓を、喉をささくれだった冷たさが乱暴に表面をなぞっていく。 思わず上げる悲鳴。 だがそれも言葉にならず。 ソーサリアンは倒れ込む。 [次へ](47) 46 敵が奥義の体制に入った以上、逃げ場などない。 残された手は一刻も早くその、攻撃そのものを封じること。 幸い、攻撃準備には時間がかかるようだ。 口腔内の暗い輝きは少しずつ強くなるものの、 すぐには放ってくる様子がない。 ソーサリアンは意を決し、敵の懐をめがけ全速力で駆け出す。 それを見逃すナイトメアドラゴンではない。 前足を振り上げ、床に叩きつける。 破壊される石畳。飛び散るつぶて。 部屋全体が暴力に耐えかねるように震撼する。 そのさま、天災のごとく。 ソーサリアンは足を取られ、横転してしまう。 肘をつきうつ伏せになった状態で ドラゴンの攻撃の完成を、絶望的な表情で見つめる。 そしてそれは放たれた。 ――忘却のブレス ナイトメアドラゴンのそのアイデンティティたる 闇と眠りの息吹が、ソーサリアンを無慈悲に包み込む。 身を焼かれるような痛み。ガタガタと震え、 骨を、心臓を、喉をささくれだった冷たさが乱暴に表面をなぞっていく。 思わず上げる悲鳴。 だがそれも言葉にならず。 ソーサリアンは倒れ込む。 [次へ](47) 47 はっと気づく。 体には何も異常はない。 ドラゴンの攻撃。 確実に食らってしまったはずなのに。 何かが壊される感覚は確かにあった。 何が、壊された……というのか? ソーサリアンはほっと胸をなでおろすも、言いしれぬ不安に苛まれる。 何か、忘れてやしないか? あなたは歯噛みする。 つながりを断たれてしまったのだ。 STATUS画面を開き、所持欄を確認すること。 失われたのは形ない協力者の存在。 その、つながりの記憶。 もはやソーサリアンとあなたとの間に つながりはない。その声は届かない。 ソーサリアンは頭を振る。 胸に空いた言いしれぬ喪失感。だが悲しみにくれる時間はない。 **忘却のブレスを使った後のドラゴンは、大きなスキができる。** どこで聞いたかもわからぬアドバイスに従うままに、 まだ晴れやらぬブレスの残滓をかき分けて突き進む。 ドラゴンは明らかに虚をつかれた表情で、ソーサリアンを迎える。 とっさに腕を振るうも、遅い! 力強く踏み込み、ジャンプ。 その腕に駆け上がり、 首筋に得物を突き刺す。 硬い衝撃。だが確かに刺さった。 その柄を、全力で蹴りつける! 絶叫。反対側から突き出る刃。 再び柄を両手で握りしめ、 振り払う。 綺麗な弧を描き宙を舞うドラゴンの首。 [次へ](53) 48 閃光。 何もかも白く。 その中で、ソーサリアンは目を覚ます。 自らがどこに立っているかもわからぬ。 上も下もない世界で、ただたゆたうように。 「ようやく会えたな」 声を、かけられる。 闇色のローブをまとう魔術師の姿。 「力を貸してくれてありがとう」 これからも戦いの未来があるだろう。 だが、君はこれからだ。 ゆっくりとこちらに近づき。 肩にそっと手が触れる。 まるで励ますかのように。 ただし、その実体はなく、 手はすり抜けていくのみ。 **再び閃光。** ![協力者](helper.jpg) --- 気がついた時、ソーサリアンは遺跡に戻っていた。 近くにはナイトメアドラゴンの躯。 やったのだ。 この快挙、すぐさまペンタウァ王宮に報告せねばならない。 最凶の敵、キングドラゴン討伐の作戦は刻々と進んでいる。 今回のドラゴン退治により戦況にも変化があることだろう。 歩き出そうとして――胸をかすめる耐え難い、痛み。 誰か、この隣にいたのではなかったか? ドラゴンを倒したというのに、言いしれぬ不安に襲われる。 何か、大切なことを忘れているのではないか。 あ…… 頬を伝う温かいもの。 なぜだか、勝手に、止まらない。わからない。 理由なんて……何も残っていないはずなのに。 しばらくそうしていた。 だがじっとしていても始まらぬ。 ソーサリアンは、足を外へと向けるのであった。 その時。 何かに呼ばれた気がして。 思わず振り返る。 いてもたってもいられず。 何を言えばいいか形にならず。 ただ、頭を下げた―― [エンド](51) 49 不思議な気分だ。 まだ選び取る前からこの行動の先が、わかってしまった 気がした。 初めてのはずなのに。 この神殿に挑むのも。 ここでこの道を選び取るのも。 ここではない。 ほかを探さなくては。 思い出せ。すべての悲願を達成するために。 思い出せ。この道はすでに選択したはずだ。 別の道を選ぼう。 [戻る](11) 50 不思議な気分だ。 まだ選び取る前からこの行動の先が、わかってしまった 気がした。 初めてのはずなのに。 この神殿に挑むのも。 ここでこの道を選び取るのも。 ここではない。 ほかを探さなくては。 思い出せ。すべての悲願を達成するために。 思い出せ。この道はすでに選択したはずだ。 別の道を選ぼう。 [戻る](22) 51 まだ、倒すべきドラゴンは残っている。 各地で厄災を振りまく敵を討伐し終わるまで。 休息の時はお預けだ。 そしてもう振り返ることもなく、ソーサリアンは 次なる戦地へと向かうのであった。 シナリオ:「時を越えた協力者」クリア 52 度重なる攻撃、疲労が募る。 だが、毅然と顔を上げ、敵を睨む。 ――そのとき、ソーサリアンに戦慄が走る。 四肢を地につけ大きく口を開き、口腔をこちらに向け―― その奥底が怪しく光る。 まずい、何らかの攻撃動作だ……! ――よけろ 絶対に食らうな――! 頭の何処かで何かが警鐘を鳴らす。 その切羽詰ったような響きに、ソーサリアンは [1 全力で回避する](45) [2 最接近する](46) 53 やったのだ。 ナイトメアドラゴンの体躯を覆う鎖が 力なく崩れ落ち、崩壊する。 悲鳴。雷鳴のごとく。 崩れ落ちる鱗の隙間から、輝き―― 今度は闇色ではなく、目を突き刺す白き輝き―― [次へ](48) 80000 v0.9 2019/2/18 初版。 v0.91 2019/3/30 微修正。new playgroundにて出力。 v0.92 2019/4/7 画像を追加。 v0.93 2019/4/10 誤字修正。 v1.01 2021/5/8 解放に必要な実績の解除。 BattleSheetに対応。