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Presented By SORCERIAN Next team.
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2017-2020, SORCERIAN Next Team
0 **あなたはこの物語を解決に導く、精霊です。 どうか力を貸してください。** -- ここはペンタウァ。 先日、大魔術師エティスにより大変な宣告がなされました。 はるか北の地より現れる、闇の軍勢によりペンタウァは未曾有の混沌に飲まれると。それを救えるのは、導きの印をもった勇者のみ。 あなたは、彼を助け、見事世界を救うのが役目です。 ![お告げ](image01.jpg) 本シナリオでは途中をスキップして、中間地点から開始することもできます。ご活用ください。 [最初から(前編開始)](1) [中編開始](16) [後編開始](76) 1 **あ、あそこに勇者がいますよ。** -- 目の前を歩く若者が一人。 小柄で痩せ型。腰に下げられた剣。パワータイプには見えませんが、卓越した技術で戦うものと思われます。 使者に連れられ王宮に向かうようです。わたしたちもついて行ってみましょう。大丈夫、わたしたちの存在はこの世界の者たちには感知できませんから。 [次へ](2) 2 **「闇の眷属ケイオースを討伐するのじゃ」** -- 「よくぞ参った。ソン村の勇者、タロよ」 ペンタウァ王宮謁見の間。国王からの挨拶です。 「そなたを招いたのは他でもない。すでに聞き及んでいよう。 北端の町モノリスから連絡が途絶えたと。 闇の眷属ケイオースの仕業じゃ」 王様はこらえきれぬ、というように眉間にシワを寄せ首を振ります。 「このままにしておけば、ペンタウァはおろか世界は闇に包まれよう。 世界を救えるのはそなたしかいない。どうか力を貸してくれ」 勇者様は尋ねます。ペンタウァに自分以上の武の者が数多くいる。なぜ自分なのか。他の者ではだめなのか。 「疑問はもっともじゃ。だが、そなたにしかなし得ぬことも、また事実。 証拠を見せてやろう」 パチン。 王様の合図に合わせて奥の閉じられたカーテンより現れたのは、麗しき少女。輝くような金髪にティアラを飾り、透き通るような青い瞳からは知性を感じます。 「我が娘、リオナである。姫は特殊な力を持っておる」 姫は一礼をし勇者様に語りかけます。 「勇者さま。あなたは――ウッ」 突然頭を垂れる姫。どうしたと言うのでしょう。やがて顔をあげた姫は恍惚の表情。いづこともしれぬ方向に視線を向け、歌うようにつぶやきます。 「世界に魔が忍び寄りし時……導きの印を持つ者現れん…… その力、闇を払い魔を滅す……我らの希望……」 そう。姫は神託を受け取る力があるのです。導きの印とは、勇者様の右手の甲にある不思議な形状のあざに相違ありません。 先の、大魔術師エティスの宣告も姫の神託を元にしたものだったのです。 あ、ぶっちゃけていいですか? 姫の神託は我々のご主人さまのお告げです。はい、おわかりですね。ご主人さまのことを、この世界では神と呼んでいるのです。 ご主人さまが選んだのがこの勇者タロ様なのです。 [次へ](3) 3 **頼りになる従者の存在** -- ケイオース討伐のため、王より賜ったものは準備に必要な財、行く先々で必要になるであろう通行証、そして、頼りになる従者の存在。 長身を翻し颯爽と現れたのは、美しい美青年。流れるような白金の髪に長い耳。エルフでしょう。エルフは長命。見た目は勇者様と同じくらいに見えますが、実年齢はずっと上と推測できます。 「お初にお目にかかります勇者どの。わたしはフォーク。 この度の旅ではよろしくお願いいたします」 勇者様の手を固く握り、 「全ては勇者どのの肩にかかっていると言っても過言ではありませんが、 それも周りの人の支えがあってこそ。 このフォーク、全力でサポートさせていただきましょう」 こうして、勇者一行は出発します。 [次へ](17) 4 **そのころ勇者は** -- 僕たち二人は草原を行く。 途中、分かれ道に立て札を見かけた。どうやら町があるようだ。 「町ですか。ペンタウァを出立してから小一時間ほど。 まだ休憩は不要でしょう。よろしいですね? 勇者どの」 「う、うん……」 フォークに急かされ、町は素通りすることにした。ただ、実を言うと僕は…… **そのとき、向こう側からおじさんがものすごい勢いで駆け込んできた!** 「そこの若者たちよ! ファーストタウン! ファーストタウンに寄りたまえ……! おじさんには分かるぞ……! 君たちの顔! 休みを必要としている! 休みたまえ! さあ!」 おじさんの謎の気迫に押され、フォークも先を急ぐのを諦めたようだ。町に寄ることにした。 そうだ。 せっかく町に寄ったのだから、必要なものを色々と買いこんでおこう。城下町では慌ただしくてそれどころではなかったのだ。 それに、少し恥ずかしさもあって、あまり王の目の届くところで買い物をしたくなかったのだ。 フォークと一旦別れ、それぞれ必要なものを買い込んでいく。 そして待ち合わせ場所でフォークと合流をした。結構な荷物を持っている。いろいろ買い込んでくれたみたいだ。 「旅に必要なものはわたしが予め買っておきました。 勇者どのは何を買われたのですかな」 「ええと、ほっかいろ」 「ホッカイロ」 そうだ。僕は極度の冷え性かつ胃腸が弱いので、腹を冷やすのは厳禁なのだ。 しっかりとホッカイロを装着し、町を去った。町の入口にはやはりあのおじさんがいて、別れ際に大げさに手を振ってくれた。 [次へ](24) 5 **光輝く白の世界――運命の分岐点** -- ![光輝く空間](image02.jpg) また来てしまいましたね。ここに。この場所は――そう、運命の分岐点とでも呼びましょうか。 勇者様。彼の今の力では、敵の幹部を倒すことなどできません。なんとしても現時点での遭遇を避けなくてはなりません。 問題の先送り? こんなことに意味などない? いいえ。わたしは、そうは思いません。 たとえ本来選ばれるべき方ではなかったとしても。選ばれた、その事実こそが真実。今回の旅で力をつけていけば、必ず、敵を倒すことができると信じています。そのためにも今は強敵との接触を避けなくては。 どうか力を貸してください。運命を変えられそうなものなら、何でも試してみなくてはなりません。 時を少しさかのぼり、あなたはどこへ行きますか? [ナイトメアの様子を見に行く](8 "-f01") [ナイトメアの様子を見に行く](31 "f01") [王宮の様子を見に行く](6 "-f01") [勇者のもとに戻る](25) 6 **時をさかのぼり、王様への謁見の場面へ** -- 「世界に魔が忍び寄りし時……導きの印を持つ者現れん…… その力、闇を払い魔を滅す……我らの希望……」 ここは謁見の間。勇者様と王様、そしてちょうど神託を受けているリオナ姫がいます。 そうです。神託を受ける姫であれば、何か運命を変えられる可能性があるはず。彼女の様子を見てみましょう。 勇者の出発後、姫は自室に戻るようです。 追いかけて見ましょう。 [次へ](9) 7 **毛並みよく、丁寧に世話された馬たち** -- 馬小屋には丁寧に世話された馬たちが控えていました。みな行儀よく、静かにしています。 [力を使って干渉する](30) [考え直す](10) 8 **木のもとで休むナイトメア** -- 勇者一行が到着する少し前。やはりナイトメアは木陰で休んでいるようです。 ナイトメア本人も大変運命力が強い。直接の干渉は無理そうです…… 近くには黄色い菊の花、近くの木々のものと思われる落ち葉……目を引くものは特にありません。 [分岐点に戻る](5) 9 **ベッドに寝転がり、袋からポテトの揚げ物をボリボリと食べる** -- はあ~~疲れた疲れた。神託なんてかったるくてやってられませんわ~~ 勇者様も出発したことですし、わたくしの出番はもうありませんわね。 あとはお菓子をいただいて、漫画でも読んでいましょう。……あらよっと! 見事な宙返りを決め、ふかふかのベッドに転がり込むわたくし。 ●--●--● 何ということでしょう。あなたは今とんでもないものを目撃しています。 ベッドに寝転がり、ポテトの揚げ物をボリボリと食べるあられもない姫の姿! ついでにお尻もボリボリかく! 何というおてんば……ええと、オンとオフの使い分けの上手な姫でしょうか。 そのとき、机に置かれた水晶が怪しく輝きました。 これは姫の神託を受ける道具に違いありません。何か重要なお告げがあるはず。 ……しかし! 姫は水晶の輝きに気づきません。漫画に夢中です。 あんたの仕業か! そう言いたくなる気持ちを抑え、なんとか姫に気づいてもらわねば。 [次へ](10) 10 **机の上の水晶が怪しく光ります。しかし姫は気づきません。** -- 漫画を読む姫はそれに気が付かない様子。 なんとかして気づかせなくては! [姫に干渉する](12) [メイドの様子を見に行く](11) [馬小屋の様子を見に行く](7 "-f02") 11 **ベッドメイクに勤しむメイド** -- 姫ともなれば、おつきのメイドの一人や二人、いるでしょう。 直接物語にかかわりのないメイドであれば、あるいは干渉が可能かもしれません。 姫の自室を出て、探しに行きましょう。 ――いました。 近くの客間で、ベッドメイクに勤しむメイドを見つけました。 [力を使って干渉する](13) [考え直す](10) 12 **姫に力を使ってみましょう。** -- …… だめです! 反応がありません。彼女も、あなたの干渉を受けるには運命力が強すぎるようです。 相変わらず楽しげに漫画を読んでいます。ええい、この。こっちの苦労も知らないで。 [諦める](10) 13 **はっと気づいたように顔をあげるメイド** -- 「あら、なんだかとてもムズムズするわ……」 「ムズムズ……ムズムズ……何かをやり忘れたような……」 メイドはもじもじし始めます。 「いけない! そう言えば今日は、 姫に紅茶をお届けしていないような」 急いで給湯室に向かう彼女。 やりました! これで姫の部屋へ向かってくれるでしょうか。 [姫の部屋に戻る](15) 14 メイドはベッドメイクを終えた後、別の部屋に行って掃除を 始めてしまいました。 当分終わりそうにありません。 走行しているうちにも勇者様は。 これはいけません。次の手を考えましょう。 [戻る](11) 15 **漫画を楽しむわたくしに、何者かの訪問** -- コンコン。 「姫様。紅茶をお持ちしました」 この声はメイドのイバラね。あら。もうこんな時間。2時間も遅刻じゃない。これはきついお灸をすえてあげませんとね…… ムッとした表情で扉を見やり、そこでわたしくしはあることに気づきましたの。 机の上に置いておいた水晶が、光っている……! これは、大事なお告げの瞬間。この機を見逃せば、次はありません。 ズボラの気のあるわたくしと言えど、その瞬間は見逃さなくってよ。メイドのイバラには待つように命じ、わたくしは水晶に近づいたの。 そのきらめく星から運命を読み解くのです。 そうするとまるで頭にヴェールがかかるように意識が曖昧になってゆき…… そして瞬く、明確なビジョン。 「これは……いけない、勇者様に危機が迫っている……!」 **「ああ、ああ、どうすればいいのか……強敵……木の下…… 蜂の巣……視界を奪って……ああ……」** もう、限、界……これ以上、意識が…… ●--●--● 姫はそのまま机に伏してしまわれました。集中力を使い果たしたのでしょう。よくぞ頑張ってくれたと労いたいところですが、これはいけません。姫が倒れてしまっては、誰がこのお告げを届ければいいのでしょう。 せっかく掴んでくれたヒント。このまま誰にも届かねば無駄になってしまう。 でも、ここにはあなたがいる。あなたならば、このヒントを有効に使えますよね? 一旦、分岐点に戻りましょう。 [分岐点に戻る](5) 16 **少しずつ、けれど着実に力をつけていく** -- あなたのサポートを受け、勇者一行はケイオースの根城へと近づきます。当初、あんなに戦えなかった勇者様も、少しずつ力をつけていっているようです。相変わらず戦闘中にトイレに駆け込んだりしてはいるようですが…… そんな中でも、すでに4つのダンジョンと、3つの険しいフィールドを乗り越えて来たのです。 勇者様をみると……どうでしょう、なかなか精悍な顔つきになってきたではありませんか。隣の従者フォークを見ると…… ややっ これはどうしたことでしょう! 頬はこけ、目の下にくま。腰を曲げ、とても辛そうです。 それもそのはず。まだまだ未熟な勇者様をサポートするため、数え切れぬ補佐をしてきたのです。加えてフォークにはわたしたちの存在を感知できませんから、一人で背負い込んでいるのでしょう。その心労はいかほどのものか。 このままでは倒れてしまいかねません。どこかで休んでもらわなくては―― [次へ](37) 17 **――魔の気配――!** -- 城下町を出発して1時間ほど経過しました。見晴らしのよい草原。これまでのところ、順調に旅を続けられているようです。途中、町もありましたが特に用事もないのか寄ることもなく、二人は進むようでした。 草原から、森林地域にやってきました。道幅は十分にありますが、両脇は木々に囲まれ、やや視界が狭くなっています。 ――魔の気配――! あなたも気づきましたか。 二人も歩みを止め、武器を手に油断なく周囲の木々に目を配ります。そして森の中から、数匹の魔物が飛び出てきました。思えば、これが初戦です。勇者様のお手並み拝見といきましょうか。 従者フォークも弓を構え、臨戦態勢です。 勇者様は、…………え? 何?? お腹を抱え、うめいています! 「勇者どの!? どうなされたか!」 もしや毒でも? それとも敵の邪悪な魔道士から術をかけられているのでしょうか……!? 「ト、トイレ……緊張してお腹冷えちゃった……」 ………… フォークはその端正な顔を歪め、一人で懸命に戦います。響き渡るフォークの雄叫びと勇者様のうめき声。 [次へ](33) 18 **気がつくと光輝く白の世界** -- ![光輝く空間](image02.jpg) 気が付きましたか。 ここは現実世界とは少し違う場所。精霊であるあなたにしか行き来できない場所。 ここからならば、時と場所を越えて、奇跡に値する事象を起こすことができます。 さあ、あなたの初仕事です。 まさか数々の偉業をこなしたはずの勇者様が、あのような体たらくとは。今後の旅路を考えると頭の痛い思いですが、今更どうにもなりません。代わりの方を選ぼうにも、無駄。勇者様は選ばれてしまった。ならば、タロ様に最大限頑張ってもらうよりありません。 落胆させるようで申し訳ありませんが、わたしも、あなたも大した力はありません。勇者様の潜在能力を引き出し、無限の力を引き出したりすることはできません。勇者様はこの物語の主人公。運命力が強すぎて、我々の干渉をはねのけてしまうのです。できるのは、ほんの少し。ほんの少しの作用を与えることだけ。 大丈夫。ほんのちょっとの作用で、運命は劇的に変化するものなのです。 試してみましょう。 わたしが思うに、勇者様には休息が必要だったように思います。彼らは無視してしまいましたが、城下町のそばには町が一つあったのです。 そこに勇者たちを立ち寄らせることができれば、あるいは状況は変わっていたもしれません。 時をさかのぼり、町の様子を覗いてみましょう。 [少し時間をさかのぼり街へ](19) 19 **城下町からほど近くに立地するファーストタウン** -- それほど大きい街ではありませんが、立地条件からも人の往来は多くある様子。 見回せばいくらかの人がいるようです。 町の入口あたりでうろうろしている男性に、中央の噴水のそばで大道芸を披露している芸者。広間に備えられた長椅子でまどろむ猫……全体的に平和そうです。 誰の様子を見ますか? [入り口近くにいるおじさん](20) [大道芸をしている方々](21 "-f03") [日向ぼっこをする猫](22 "-f04") 20 **うろうろとするおじさん** -- 町の入り口のそばに男性が一人うろうろしていますね。何をしているのでしょうか。 ちょうどその時、旅人らしき格好をした人が町に訪れたようです。おじさんはさっそうと駆け寄ると、一喝。 「ファーストタウンへようこそ!」 どうやら旅人に、歓迎の意の表明と町の名前を覚えてもらおうとして、率先して行動しているようですね。なんと感心なことでしょう。旅人は突然大声をかけられて、やや引いているように見受けられますが、それもご愛嬌。 さて、どうしましょうか。 [力を使って干渉する](23) [考え直す](19) 21 **なかなか本格的な芸が披露されています** -- 噴水のそば。町人たちの憩いの場と同時に、ちょっとしたパフォーマンスの披露の場となっているようです。ハシゴによる大立ち回り、見たことのないような珍しい動物の芸……なかなかに、本格的です。 [力を使って干渉する](34) [考え直す](19) 22 **ベンチにて丸くなりまどろむ猫** -- 人が座る場所を贅沢に奪い取り、満足げに丸くなっています。仕方ありませんね。猫様ですもの。とても平和な証拠。 魔物がはびこる世の中とは言え、こういう平和は守っていきたいものです。 [力を使って干渉する](35) [考え直す](19) 23 **あなたはおじさんの意識をくすぐりました。** -- 「おや……なんだか……エネルギーが有り余ってきた……!」 おじさんは足踏みを始め屈伸をしだしたかと思うと、 「フンッハンッ うおおおお!」 町の外まで行ってしまいました。 ●--●--● 追いかけてみると…… 「そこの方! ここがファーストタウンです! ぜひお越しください! 今なら……武器屋が5%還元キャンペーン中ですよ! それにこの期間、名産の卵料理が宿屋で食べられますよ!」 どうやらおじさんのサービス精神を刺激したようです。町の外にまで呼び込みに行くという、大変アグレッシブな行動に変わりました。 これで何かが変わるでしょうか。もうすぐ勇者一行がここを通る時間です。 [勇者のもとに戻る](4) 24 **運命は、動く** -- ……やりました! まさか冷え性だったとは。神に導かれた勇者と言えど、気候には勝てないのですね…… 森林に差し掛かったところでやはり魔物が現れました。しかし、今度の勇者様は臆することなく魔物に立ち向かい、従者フォークとともに魔物を打倒していきました。 いえ、立ち向かうというよりは逃げ回るシーンのほうが多いようにも見受けられますが……それがタロ様なりの戦い方なのでしょう。 彼らは旅を続けます。 わかってもらえたでしょうか。このようにして、勇者様をサポートし、 ケイオース打倒の悲願を達成するのです。 [次へ](26) 25 **守らねばならない、勇者様を** -- 真実を知ってしまった以上、なんとしても勇者様を守らねばなりません。おそらく、まともな戦いの心得もないと推測できます。序盤は魔物の凶悪な手から逃れさせ、道中にて実力をつけていただくしかありません。難しい任務ですが、やり遂げなくては。 勇者一行は森林地帯を進みます。しばらく歩いたその後で、周りに比べひときわ大きな木が。その下には、一体の魔物がいました。 狼のような顔を持つ獣人。その毛並みは漆黒。厚い鎧を着込み、武人であることを忍ばせます。 頭を軽く垂れ、目を閉じています。休んでいるのでしょうか……? 魔物の姿にいち早く気づいたフォーク。 「むっ またしても魔物か……!」 寝ているのなら好都合、気づかれる前に退治しようと武器を構え、 ――愕然。 「こ、いつは……!?」 「知っている相手なの?」 「シッ 静かに……! 漆黒の人狼姿……間違いありません、 こやつはケイオースの腹心……」 そのとき魔物はうっすらと目を開けます。ああ、気づかれてしまった! 声量を落としていたにも関わらず、気配を察知されたようです。油断のならない相手。 「人間か。今日は狩りの気分ではなかったが…… さりとて見逃したとあっては、部下共への示しがつかぬ。 さてどうしてくれようか」 叫ぶように、フォーク。 「ナイトメア……!」 「然り。呼べ、我が名を。 貴様らのその叫びが、わしの最高の子守唄となろう」 従者フォークは勇者様の腕を掴むと、必死の表情でささやきます。 「勇者どの、退却しましょう! やつは、やつは7つの町を崩壊せしめた 最凶の破壊の申し子、ナイトメア! 相手にしてはなりません!」 一目散に駆け出します。 それを見て、悠然と構えていたナイトメアが怪訝な表情を見せます。 「勇者……だと? なんのことだ? いや待て、そのあざ……! もしや!」 焦るように大声を上げ、背を向け駆け出す勇者様たちに向け、大きく跳躍。二人を軽々と飛び越え、その目の前に再び立ちふさがります。 「勇者の話はこちらにも伝わっている。 見たところ目覚めて間もないようだが、 いずれケイオース様への脅威となろう。 未来の禍は、今のうちに摘み取らねばならぬ……!」 大きく口を開け、ブレス……! 勇者様とフォークは煉獄の炎に身を焦がされ、転げ回ります。間髪入れず、ナイトメアの持つ戦斧が、無情にも振り下ろされ、 ああ、ああ……何ということでしょう。 血しぶき。絶望的に流れ出て。赤だけでなく、魂までも―― 叫ぶ、声の限り。 「勇者どのーーーーーーーーッ!」 こんなこと、あっては行けない……! 早く、あの場所に……! このまま時を進めるわけにはいかない……! [次へ](5) 26 **「間違い……!?」** -- %blue%精霊たちよ……%/% いずこともなく声が聞こえます。しかし勇者一行はまるで気づく様子もなく、歩を進めます。 それもそのはず。これはこの世界とは隔離された別の次元からの声。すなわち、我々のご主人さまの声なのです。 「どうされたのですかご主人さま。すでに物語は動き出してしまった。よほどのことでも起きない限りご主人様の介入はないはずでは」 %blue%その、よほどのことが起きたのじゃ――%/% %blue%我らは勘違いをしてしまったようじゃ……%/% 「えっ……!?」 %blue%よいか。心して聞け――勇者はあの者ではない……%/% な ん で す っ て !! %blue%魂の形を見誤ったのじゃ……お主らが見守る男はただの村人……器が足らぬ……%/% 今、なんと。なんだか衝撃的な単語が聞こえてきましたね……冗談みたいな。やだなあご主人さま。からかわないでくださいよ…… はああ!? 間違い!? 「こま、困りますよご主人さま。 そしたら今からでも正しい方に導きの印を……あっ」 %blue%無理なのじゃ……一度選ばれてしまった勇者は己が命運を果たさねばならぬ……途中で代わりはできぬ……%/% %blue%次なる勇者は……100年経たねば生まれぬ……%/% 「だめじゃん!!」 何ということでしょう何ということでしょう。 やばいことになってまいりましたよ。我々のサポートがあるとはいえ、なんの運命も持たぬ若者に、闇の眷属が倒せるのでしょうか。このまま世界は闇に包まれてしまうのでしょうか? 「何か策がありますよねご主人さま!?」 気まずい沈黙の後、一言。 %blue%……幸運を祈る……%/% やばい! 祈っちゃったよ! 神様が祈ってちゃ世話ない…… コ、コホン。 ど、どうしましょう。このままではうまく行きっこありません。打つ手もない。おとなしく、負けを受け入れるべきなのでしょうか? [諦めるわけには、行かない](36) 27 **蜂がたくさん出てきました!** -- あなたの力を受けた蜂の巣。何も起こらないとかと思いましたが……あっ 出てきました。一瞬の後、巣穴から飛び出した大量の蜂は、昼寝中のナイトメアに襲いかかります……! ナイトメアは無骨な鎧に身を包んでいます。必然的に蜂たちは無防備な顔へと集まり―― 「!!? ぐああ、何だぐあ、ぐあああ!」 ナイトメアは首を激しく振ります。蜂を払いのけ、ブレス。青白い炎が蜂を焼き、ボトボトと地に落ちます。 しかしナイトメアも無事とはいきません。きつく目を閉じ、うめいています。 [次へ](28) 28 **そこに合流する勇者一行** -- 二人ははっとして武器を構えます。ナイトメアは今もうめいており、二人には気づいていない様子。 いち早くことの重大さに気づいたのは、やはり従者フォーク。端正な顔を青ざめ、勇者様に耳打ちをします。 (あやつはケイオースの腹心ナイトメア! 図りしれぬ魔力を持っており、 敵う相手ではありません……! 一刻も早くここから離れましょう……!) ナイトメアは変わらずうめいています。が、 「うぐぐ、……そこの者どもよ…… いるのだろう……?」 なんてこと! 視界を奪われ痛みに耐えているというのに、それでも察知されてしまった。勇者たちは蛇に睨まれた蛙のように、一歩も動けなくなってしまいました。 「すまないが……一つ頼まれてくれないか。 目を負傷してしまってな…… ここから西に行くと小さな川があったはずだ。 水をくんで来てはくれまいか……?」 震える手で革袋を差し出すナイトメア。 フォークは厳しい顔をして顔を横に振っています。 (いけません。無視しなさい!) 幸い、ナイトメアはこちらの素性に気づいていないようです。ならば逃げるが勝ち。何より、敵の手助けをしてあげる義理もありません。 ――だというのに、ああ、勇者様はどうしたことでしょう。ゆっくりと手を伸ばし、革袋を受け取ったのです……! フォークはやっきになってやめさせようとしますが、そもそも聞こえていないのか、勇者様は川に向かうと、革袋に水を浸しました。 「ぐぐ……かたじけない……それにしても、そなたたちは……?」 今度こそ、これ以上の長居は無用です。ナイトメアの視界が回復する前に、一目散にその場を後にしました。 [次へ](29) 29 **「流石は勇者どの。凡人にはできぬ行為。感服しました」** -- ナイトメアからとにかく離れ、もう大丈夫だろうというところで休憩を入れる二人。 ふう、とため息をついてフォークは語りかけます。 「まさか、敵を助けるとは。勇者どのには驚かされる」 勇者様の反応を見て、表情を和らげるフォーク。 「いえ、責めているわけではございません。 むしろそういう、凡人にはおよそ選択できぬ行動を選ぶ素質こそ、 勇者たる資質なのかもしれませんね」 「ようは、このフォークが今まで以上に気を配り、 行動をすればよいだけのこと。 勇者どのは気になされるな」 何はともあれ、ついに命の危機を逃れることができました。これも、あなたの活躍のおかげ。引き続きともに力をあわせ、悲願ケイオース討伐を成し遂げましょう。 [次へ](32) 30 **馬たちが騒ぎ出しました……!** -- 「な、何だ!? どうした急に?」 急に騒ぎ出した馬たちの様子を見に、城の者がやってきました。 「あ……なんだ、飼葉が切れてたのか。すまんな。 ……いてて、俺をかじるな、かじるな」 餌を追加してもらい、馬たちも満足げです。 馬の手助けはできましたが、姫に影響は与えられなかったようです…… [次へ](10) 31 **木のもとで休むナイトメア** -- 勇者一行が到着する少し前。やはりナイトメアは木陰で休んでいるようです。 ナイトメア本人も大変運命力が強い。直接の干渉は無理そうです…… 近くには黄色い菊の花、近くの木々のものと思われる落ち葉……目を引くものは特にありません。 **…………いえ。よくみると、木の上の方に蜂の巣がついているのが見えました。 これこそ姫が言っていたものではないでしょうか。** これは、 [蜂の巣に干渉する](27) [考え直す](5) 32 **コーヒーブレイク** -- 少し休憩を入れましょうか。少し話が長くなってきましたからね。お茶でも飲んで、休んでください。 あなたは、この状態を保存してもしなくても構いません。保存したい場合は、SystemからBackupを選んでください。保存しない場合も、最初のシーンからここまでスキップが可能ですので、そちらをお試しください。 [中編開始](16) 33 **なんとか魔物を倒したものの――** -- 勇者様は怪我を負ってしまった様子。幸い大した怪我ではありませんが。 また、フォークの信頼度もぐっと下がってしまった様子……勇者様を見つめる瞳が大変冷ややかです。 なんだか雲行きが怪しくなってきましたね……こんなことでこの先大丈夫でしょうか。 勇者様。仮にも導きの印と神の加護を受けられたお方。こんな情けないお方ではないはず。これこそ、運命のねじれ。 ちょっとしたことで、人は不幸に陥ってしまうのです。ちょうどいい。この運命が変えられないかどうか、試してみましょう。 さあ。わたしの手を取って。行きますよ――! [次へ](18) 34 **ああっ あ……危ない!** -- あなたは芸人たちに力を使いました。 ただでさえ集中の限りを使って芸をこなしている方々にそんなことをすれば…… ぐらり。 ハシゴの上に登っていた若者がぼんやりした表情になったかと思うと、バランスを崩しそのまま倒れ込んで来ました。危ない……! 観客から悲鳴があがります。 ハシゴがドスンと大きな音を立てて倒れました。若者は―― おお、なんと。 大きく宙返りを決め、スタッと着地。ポーズを決めます。さすがの運動神経。あちこちから拍手が生まれます。 大惨事にならなくてよかったですが、大立ち回りをしている人に干渉するもんじゃないですね。他を当たって見ましょう。 [戻る](19) 35 **猫の意識をくすぐってみます。** -- あなたは猫に力を使ってみました。干渉の作用は何も人間だけに効くとは限らないもの。なるほどの着眼点です。 パチリ。猫が目を覚まします。 ちょうどわたしたちがいる辺りを見つめ、しっぽを軽く2回振ります。見られている? いいえ大丈夫。われわれに物質的存在はありません。この世の存在に感知できるものではありません。 「努力に励むのじゃ。若人よ」 え? なんか言いました? ちょうど行き交う人が途絶えた瞬間。周りには誰もいないような。ぐるりと見渡します。誰も、いない。猫だけ。 え? 猫? 猫様は相変わらず素知らぬ顔で丸くなっています。もう一寝入りするのでしょうか。目を閉じます。 え? 猫? え? **え……??** [猫は黙して語らず](19) 36 **……!** -- そ、そうですよね。 たとえ器が違っていたとしても。運命はまだ勇者様を見放したりはしない。そのためにわたしたちがいるのだから。 こうなったら乗りかかった船です。 あなたとわたしで、なんとか勇者様を導いてみましょう。それこそが、世界を闇から守る唯一の道なのだから。 [次へ](25) 37 **ここはネクストタウン** -- 流石にフォークの疲労を見かねたのか、二人は近くの町で休息を取るようです。宿屋に直行します。 温かいスープをいただき、ようやく人心地つきます。改めて見回すと、宿は閑散としており客人はあまりいない様子。 宿の主人に尋ねると、それもそのはず。この町はすでに、ペンタウァよりも敵の本拠地のほうが近い距離にあるのです。散発的に魔物の襲来もあり、旅人も寄り付かないのだとか。 フォークは尋ねます。 「なぜこの町は侵略されずに? 何か魔物に対抗する秘訣が?」 すると宿のおやじさんはいかめしくうなずきます。 「じきに、あんたらにもわかる」 その表情は決して絶望に彩られたものではなく。力強さを感じるものでした。 [次へ](41) 38 **その時、ハーピーのさらに上空から落ちる影あり――!** -- その黒い影はごう、と音を立てハーピーにぶつかると、そのまま叩きつけ、地面に縫い付ける……! 苦しげな断末魔を最後に、動きを止める鳥の怪人。そこからゆらりと分離する人型の影。それは中年の男性でした。 短く刈り込んだ髪に混じる白さや、顔に刻まれたシワからは年相応のくたびれを感じさせますが、引き締まった体はしなやかで俊敏そうです。 「怪我はないようだな、お二人さん」 人懐こい笑顔で、ニッと口元を歪めます。 この方は、一体? 只者ではないようですが……? 宿の店主は得意げに言います。 「彼が、この町の守り人さ」 「宿屋の主人! この人達は? 旅人のようだが」 男性はこちらを見とがめ、近づいてきました。 「ペンタウァからはるばるきたんだそうだ。魔族を倒すんだとよ」 「! ではついにケイオース討伐を……!」 男性はこちらに笑いかけると、手を差し出します。 「お初にお目にかかる、勇者どの。よくぞこの町まで来てくれた」 ぐっと、固く勇者様と握手をして自己紹介をします。 「俺は、フレッド。パン屋だ」 なるほどパン屋。その屈強な筋骨は、毎日の生地の仕込みで培われたのですね……堅く焼き上げたパンを振り回して剣術を学び、敵の顔を型どっては叩き潰してイメージトレーニング……って、そんなわけ。 身分を偽っていますね? と、疑いの目を向けるフォーク。 「いや、パン屋さ。だがそれだけじゃない。 俺は昔ペンタウァで王宮の任務も請け負っていたのさ」 徐々に理解の色をしめすフォーク。わたしにもわかりましたよ。この方は……! 「そう、俺はソーサリアンだ」 [次へ](39) 39 **ソーサリアン!** -- こんなにペンタウァから離れたところでも、彼らの存在を確認できるとは。 「まあ元、だがな。だいぶ歳も取ったし、 引退して、生まれ故郷に隠居させてもらったんだ」 やれやれと肩をすくめ、 「そしたら何だ? 闇の眷属ケイオースだ? 随分物騒な話になってきちまいやがったじゃないか。 おかげでこの町も、連日敵の襲来さ」 でもな、と前置きし。 「俺がいる限り、この町はやらせはしねえよ……」 なんとも頼もしいものでしょう。安心してここを任せて、ケイオースの根城に行けそうですね。 ……ですが、そんなに都合よく行かないのが現実というもの。その時一人の青年が駆け込んできました。 「た、大変だフレッドさん! 魔物が攻め込んできた!」 気の休まる間もありません。 「すぐ行く!」 言うが早いか駆けていきました。 「あ、勇者どの! どこに行かれるか!」 なんと勇者様も一緒に向かっていってしまいました。 正義感は人一倍。ですが、いつまでもここにいるわけには行かないというのに! 仕方ありません、勇者様を追いましょう。 [次へ](40) 40 **大量の、二足歩行の爬虫類の怪物** -- ハーピーを退けた次は二足歩行のトカゲの群れです。 リザード。両手にそれぞれ持った幅広の剣をカチャカチャと打ち鳴らし、こちらに向かってきます。分厚い鱗はフォークの弓を通さないようです。弾かれてしまいます…! パン屋のフレッドは重たい剣を振り回していきます。いくら鱗が硬かろうと、その重圧そのものは支えきれません。 ゴリッ…… 重たい鉄骨がぶち当たった犠牲者たる魔物は、ありえない向きに体を捻じくらせ、絶命します。 勇者様の方は、自分の筋力では鱗を傷つけるに至らないと判断するや、足を狙い転倒させる作戦に出ます。功を成し、一体、二体と転がるリザード。 当然リザードも黙っていません。姿勢を低く保とうとする勇者様を、上から、集団で囲い込もうとします。それをちょこまかちょこまかと逃げ回る勇者様。 伊達に今までいろんな敵相手に逃げ回っていません。変な才能に開花してしまいました…… ですが、ああ、ああ、限界です―― 複数で大きく囲い込まれ、これ以上逃げられない事態に。ピンチです……! [次へ](42) 41 **その時、外から悲鳴が聞こえます。** -- しわがれた老婆のような。 おやじさんはハッと声をあげます。 「……魔物だ!」 それを聞いて迷うことなく外に飛び出す勇者様と従者フォーク。 扉を開け、目にしたものは空を自由に飛び回る無数の影。鳥? いえ、それにしては大きすぎる……ハーピーです! 耳障りな鳴き声をあげながら町の人に襲いかかります。勇者様たちも応戦します。 フォークの弓攻撃。翼を射抜き、バランスを崩した一匹が真っ逆さまに地に落ちる! それを見ていた町の人が殴りかかりにいきます。 なんとか倒し、ほっと息をついたところに、 「危ない! 勇者どの!」 短く響くフォークの警告の声。 勇者様の死角。頭上から後頭部を狙って残党のハーピーが一匹、急降下。 ああっやられてしまう……! [次へ](38) 42 **「伏せていろ勇者どの!」** -- フレッドの力強い大声と、それに遅れて高速で飛来する、なにか。 ブン、と風を切り、飛び込んできた重量物は、今まさに勇者様に斬りかかろうとしたリザードの延髄にぶち当たり顔面から崩れ落ちます。 時を同じくして地面に突き刺さる重量物。それは――フレッドの、剣でした。 一瞬、全員の動きが止まります。 「勇者どの! 今のうちに……!」 従者フォークの短い叱責でビクリと体を震わし、包囲網を脱出する勇者様。なんとかピンチを脱しました。 一方でフレッドは――丸腰! それに気づいたリザードが標的を彼に絞り、突撃します。ああ、ここからではどうしようもない! フレッドはそれに対し、表情をピクリとも変えません。何も得物を持たないその腕で、近づくリザードの顔面を、殴りつける……! 素手――! しかし素手で倒せるような相手ではありません。不意を突れたがゆえにもろに顔面に拳をもらい、大きくのけぞりはしましたが、倒れることなく体勢を立て直すリザード。……が、見たものは―― 両の瞳いキラリと輝く何かを見た気がしました。それが何だと理解する間もなくリザードを襲う、激しい、痛み。グゲェと蛙が潰れたような声をあげて、悶絶します。激しく顔をかきむしります。何事でしょう……!? それを成し遂げたのは、細く短く頼りない、ただの2本の針。 リザードは、己が上体を戻す力を利用されたのでした。暗器……! 恐ろしく凶悪な武器ですが、乱戦には不向き。せいぜい敵の隊列を乱れさせるくらいでしょう。 ですが、その乱れを作れるのであれば十分。すでに、剣を抱えた勇者様が近くまで来ていました。合図とともに放り投げられた剣を、片手でガシリとつかみ。こうなれば、後はフレッドの独断場です。 数分後、地には魔物の死体が累々と積み重なり、もはや動く敵はいません。 [次へ](43) 43 **一旦宿に戻る勇者一行** -- 宿のおやじさんのおごりで、一杯サービスしてもらったみなさん。フレッドも招待に預かっています。 「しかし勇者どの。その立ち回りではいささか不安だな」 それを聞いて縮こまる勇者様。その後ろで無言で繰り返しうなずくフォーク。 「そしたら……フレッドさんも一緒についてきてくれませんか。 僕なんかより、遥かに強くて、頼りになるし……」 絞り出すように、勇者様。後ろで怒ったようにフォーク。口の中に何か入っているので言葉になりませんが、それより早く、フレッドの拒絶。 「それは無理だな。俺にはこの町を守る仕事がある」 がっくりと肩を落とす勇者様。 「導きの印……それがどれほどの力を発揮するかはわからんが…… 自信を持つことだ。 いかな実力をつけたとして、自信という強い力が無くば 魔物に立ち向かうことはできん」 歓談はそれでお開きとなり、フレッドも家に戻るようです。 [次へ](44) 44 **目覚めると、何やら起きた様子** -- 勇者様が目覚めると、何やら外が騒がしい。誰かと誰かが問答しているようです。 眠気まなこをこすり、階下におります。 「大変なんだ。娘が、娘のアイシャが昨晩から帰ってきていない。 魔物にさらわれたに違いない! 俺は行くぞ! こうしているうちにアイシャが……!」 「落ち着いてくれ、お前がこの町を離れたらどうする……!」 「うるさい!」 ボゴッ 宿屋の主人は顔面をしこたま殴られ、尻もちをつきます。 そのすきに飛び出していってしまったのは、フレッド。 「何があったのでしょうか」 情報収集をする従者フォーク。腰をさすりながら立ち上がる主人に、わけを尋ねます。 「あいたた…… フレッドのところの一人娘だがな、 昨晩から帰ってきてないらしい」 「無断外泊をするような娘じゃない。 そして、近所の井戸に彼女のブローチと、 魔物の爪痕が残されていた……」 それで飛び出して行ってしまったのですか。大切な娘のこととなれば、無理もありません。 ふと勇者様の方をみると、 なんとタロ様も今にも駆け出さんとしているじゃあないですか! 「いけません! 我々が行ってなんの役に立つのです……!」 走り去ってしまう前に、かろうじて勇者様の袖口を掴むことに成功したフォーク。ですが勇者様はなおも動こうとするので、ああ、ああ、服の袖が伸び切ってしまう……! [次へ](45) 45 **ミ――ミシミシ、ゴォォォンンンンンン!!** -- 爆音。 その瞬間、町の様子は一変しました。何の、前触れもなく。 誰もが動きを止め、音のした町の外れを見つめます。 町を囲む塀の一部が、もうもうとした砂埃をたて、決壊したのです―― それを成し遂げたのは無骨な巨大な拳。 トロールです。そしてその後ろには、ハーピーとリザードの群れ。 「なんだ、この大群は……!? よりにもよってこんなタイミングで……!?」 たまらず漏れる、宿の店主の嘆き。 「くっ 町を守らねば! 行けるか? 私達だけで……!?」 大変なことになってしまいました。 頼みのフレッドはいません。勇者様たちだけで町を守らなくてはなりません。勇者様だけでなく冷静沈着なフォークですら、瞳孔をこれでもかと言うほど開き、奥歯をカタカタと鳴らします。 しかし嘆いていても現実は変わりません。まず、町のみなに指示を出します。 門扉を閉じ、かたく錠をかけること。 [次へ](46) 46 **苦しく、厳しい戦い** -- 我が物顔で町を闊歩するリザードたちに、勇者様が切りかかります。 ザクリ 攻撃は通りましたが、浅い……! リザードはさしたる痛痒を見せず、勇者様を振り払います。 その向こう。 地響きとともに歩むは巨大なトロール。巨人は拳を振り上げ、住宅の屋根に叩きつける……! レンガが砕け、地にばらまかれます。このままでは何発と持たず、破壊されてしまうでしょう…… 拳を叩きつけられるたびに響く悲鳴。住人たちの、あるいは家屋自身の。 そして勇者様を挟んで反対側では。 ハーピーらが手の届かぬ上空を飛び回り、逃げ遅れた子供に襲いかかろうとしています。 そこに疾風のごとく走る、矢。 ハーピーと子供の間を切断するように走り抜けます。フォークが一瞬のスキも与えず、矢を射つづけているのです。 しかしなにより、相手の数が多い。矢をつがえる速度も間に合わず、至近距離に入られてしまいます。 離れてこそ無類の強さを誇るフォークの弓術。こんなに近くに敵がいては、ああ、いけません…… 矢を放ちやすいよう見晴らしいい高台にいたのが災いしました。弄ぶように差し向けられるハーピーの爪攻撃を避けるに避けられず、執拗な攻撃を受けてフォークは高台から転落してしまいました―― 勇者様も果敢に戦うも、徐々に押し切られ、敵の集団に飲まれてしまいました。 ああ、そんな…… 戻らなくては――――! [次へ](47) 47 **光り輝く世界** -- ![光輝く空間](image02.jpg) この場所に来たものの……この先はわたしにも取りうる作戦が思いつきません。 とにかく、行動を起こしてください。それが何かのヒントになるかもしれません。 [この町の様子を探る](62 "f07") [ペンタウァ王宮へ](49) [ファーストタウンへ](48) [道中の森へ](50) [戦いの場に戻る](57 "!f05|f09") [戦いの場に戻る](77 "f05&!f09") 48 **ここはまだまだ平和なファーストタウン** -- やや時間をさかのぼったようです。 ファーストタウンでは魔物の侵入もほとんどなく、町の様子もまだまだ穏やかな雰囲気に包まれていると言えるでしょう。 敵の本拠地から離れているというだけで、ネクストタウンとは大きな違いです。……ですが、その平和も仮初のもの。勇者様たちの活動が失敗に終われば、この町とて、蹂躙の対象となりうるのです。 町を見渡すと、元気に走り回る子供、荷台を運ぶ筋骨たくましい労働者、リュートを爪弾く吟遊詩人などが見えます。 誰の様子を見ますか? [子供](53 "-f10") [労働者](52 "-f05") [吟遊詩人](51 "-f06") [分岐点に戻る](47) 49 **執務室にて深刻な表情をする王様** -- 執務室を覗いてみました。 おや、王様の他にもどなたかいますね。 あれは……ペンタウァに住むものなら知らぬものはいません。大魔法使いエティスです。これまでも、数々の魔の気配を事前に察知し、ペンタウァの危機を防いできたのです。彼やリオナ姫の活躍のおかげで、今のペンタウァの平和があると言っても過言ではないでしょう。 どうしますか? [エティスの様子を見る](71 "-f07") [姫の様子を見に行く](54) [分岐点に戻る](47) 50 **ただならぬ気配** -- 町につく前の道をさかのぼってみました。魔物が徘徊するとはいえ基本的にはのどかな道に、ただならぬ気配を感じます。これは…… そこだけ闇を濃くしたかのような、重苦しい雰囲気。その中心に……いました。漆黒の毛皮に包まれた、戦士の顔。 ナイトメア。まだこのあたりにいたのですね。蜂に刺された怪我はもう癒えたのでしょうか。苦しむ様子もみせず、泰然と佇んでいます。 と、そこに。重い振動とともに巨大な魔物が姿を現します。 「貴様は、トロール。どこぞの町でも襲いに行くつもりか?」 あれはネクストタウンを襲ったトロールでしょうか? ナイトメアが魔族の幹部であるなら、このトロールも部下のようなものではないでしょうか? なんとか、彼から襲撃をやめるような命令は出させられないでしょうか……? 「貴様らがどこを襲撃しようがワシにはあずかり知るところではない。さっさと行くがいい」 ああ、やはり。運命は変えられないのでしょうか…… [ナイトメアに干渉する](60) [トロールに干渉する](61) [地面の穴に干渉する](59 "-f08") [分岐点に戻る](47) 51 **ポロン、ポロンと優しく爪弾き** -- おしゃれな帽子をかぶり、悲しげな調べに乗せて朗々と語る吟遊詩人。 かつての英雄譚でしょうか。心惹かれる物語に、通行の足を止めて聞き惚れる町人たちもいるようです。 [干渉する](55) [考え直す](48) 52 **荷台に木材や岩を積み、一時の休憩を挟む労働者** -- 滝のように出る汗を布で拭い、革の水筒から水分補給をしています。この天気ですもの。大変な重労働でしょう。 もうひとりの仲間と何やら雑談をしています。 あっ 荷台を離れて、どこかへ行くようです。さては遊びに行くつもりですね。 [干渉する](56) [考え直す](48) 53 **底なしの体力で、飛び跳ねる子どもたち** -- 小さな砂場でデッドヒートを繰り広げた後、滑り台から絶叫を上げながら滑り落ちます。一回で飽き足らず、何度も何度も、さながら永久機関のごとく。 彼らは、なぜあんなにも元気なのでしょう。振り回される親御さんたちの苦労が忍ばれますわね。 わたしたち精霊も、生まれたてはあんな感じで手に負えないほど元気なんですよ。あっちへフラフラこっちへフラフラ。なまじ時空を超えてしまえるものだから、探すのも一苦労なんです。 さて、そんな話は置いておいて……どうしますか? [干渉する](72) [考え直す](48) 54 **まだベッドでお尻をかいている……!** -- そう何度もレディのプライベート空間に侵入するものではありませんよ…… って、まだベッドに転がりあそばせていらっしゃいます! うず高く積み上げられた漫画。すごい集中力です……! 思わずたしなめたくなりますが、今回は水晶玉も特に反応していないようです。無理に干渉して、姫様の邪魔をするのはよくありませんね。誰にだってプライベートを楽しむ時間はあるのですから…… [戻る](49) 55 **おや……?** -- 街路樹を囲う背の低い石壁をベンチにして、腰掛けていた吟遊詩人はすっと立ち上がりました。演奏の手を止め、急に訪れた静寂に、観客たちは顔を見合わせわます。 ざわり、とし始めるその瞬間。詩人の手が、凄まじい速度で楽器をかき鳴らします。こ……これは高難易度速弾き……! 和やかな町の雰囲気は一変、異様な熱気に包まれます。リズムにつられた観客の一人が、人々の中から飛び出しました。 その姿は……! お鍋とお玉をもった主婦……! パァン! パァン! 目を爛々と輝かせ、自前のドラムを鳴らし上げます。やや鈍い高音が響き渡ります。 詩人も負けてはいません。 ドゥルドゥルドゥル……! あたりは騒然、この町で誰も見たこと無い狂宴が繰り広げられたのです……! ああっ、わたしたちも肉体があったら。今、このときに同じ空間に存在できないなんて、残念でなりませんね……! え? そうじゃない? え? コ、コホン。そうでしたね。別にバンドバトルを観戦するためにいるんじゃありませんでした。 にわかにライブ会場と化してしまった広場を後にして、別の場所に向かうことにしましょう。 [戻る](48) 56 **仲間と歓談しながら、荷台を離れる労働者たち** -- 人間たるもの、息抜きは必要です。遊びに繰り出そうとする彼らを誰が責められるでしょうか。 ややっ そこに、荷台の逆側の薄暗がりから伸びる手……! ぬっと伸びたその手は、荷台の貴重な商品を掴みます。 彼らの貴重な日々の糧が。あわれ、盗まれてしまうのでしょうか。 獲物を手に入れた卑劣な盗人は、立ち去ろうとしてくるり体の向きを変えます。 その瞬間。 そこには、腕組みをした屈強な労働者が! 何ということでしょう。彼が去っていったのは確認したはず。こんな短時間で戻って来るなど一体!? これは盗人にとっても誤算です。 「虫の知らせで戻ってみれば……ご機嫌な事態に遭遇じゃねえか」 ぶっちゃけるとその虫の知らせ、あなたの干渉なのですが。 「貴様、盗む相手を間違えたな? 日々鍛えられたこの拳の味をくらいたいようだなああ?」 響き渡る絶叫。盗人はなすすべもなくふん縛られ、自警団送りとなりました。 「あぶねえあぶねえ。油断もすきもありゃしねえ。 もう一泊する予定だったが…… おい、相棒! さっさとこの荷物を ネクストタウンに運んじまおうぜ!」 ちょうど戻ってきたもうひとりの労働者の方と一緒に、ウキウキで町を出発してしまいした……何という底なしの体力。 **……今、ネクストタウンと言いましたか?** 何ということでしょう。こんなところでつながってくるとは。 一体あの岩がなんの役に立つかはわかりませんが、運命はたしかに動いたはず。確かめて見ましょう。 [一旦戻る](48) 57 **準備は万全ですか? やり残しはありませんか?** -- 運命への干渉はし終えたでしょうか。 もしもそうでない場合、またしても勇者様を傷つけてしまうのかもしれません。 いえ、尻込みさせようというわけではないんです。 いずれにせよ、覚悟を持たねば進めない状況。よろしいようでしたら、進みましょう。 [ネクストタウンに戻る](46 "-f05&-f08") [ネクストタウンに戻る](58 "f05&-f08") [ネクストタウンに戻る](67 "-f05&f08") [ネクストタウンに戻る](68 "f05,f08,-f09") [ネクストタウンに戻る](69 "f05,f08,f09") [考え直して、分岐点へ](47) 58 **苦しく、厳しい戦い** -- 我が物顔で町を闊歩するリザードたちに、勇者様が切りかかります。 ザクリ 攻撃は通りましたが、浅い……! リザードはさしたる痛痒を見せず、勇者様を振り払います。 そして向こう側では。 ハーピーが手の届かぬ上空を飛び回り、逃げ遅れた子供に襲いかかろうとしています。 そこに疾風のごとく走る、矢。 ハーピーと子供の間を切断するように走り抜けます。フォークが一瞬のスキも与えず、矢を射つづけているのです。 そこに。 **「俺たちも協力する!」** 力強い、複数人の声。 町の人達のようです。彼らは4人がかりで荷台を運んできました。 こ、これはファーストタウンにあった……! 「壁の補修用に用意したものを拝借してきた! 俺たちは武器など使えないが、この岩があれば…… あの、空で舞う邪魔な鳥どもを潰してやれる!」 ありがたい! 援軍です! 彼らは岩を掴むと、持ち上げ……持ち上げ……上がらない! そんな! 重すぎたのです! この岩を敵に当てることができれば、致命傷を与えられることは間違いないのに。それなのに、悔しいことに、一般人の彼らでは、そもそもの入り口は立てない……! そうこうしているうちに激しい地響き。トロールが近くまで来てしまったのです。町人が振り返り、あっと声を上げる間もなく。振り上げられた拳が、重量と速度の暴力となって乱暴に叩きつけられる! 町人は吹き飛び、荷台も粉砕されてしまいました。飛散する岩。 ハーピーに対抗する武器がなくなってしまいました。もう、おしまいです―― フォークは高台から落とされ、勇者様はリザードの群れに飲み込まれてしまいました。 戻らなくては――――! [分岐点へ](47) 59 **穴? ああ、確かに開いていますが……** -- 何を血迷ったか、あなたは地面に開いた、人のこぶし大の穴に干渉をはじめました。ちょうどトロールの右足の先に位置しています。 するとその瞬間! 穴から飛び出してきた獰猛な獣! 歯茎が見えるほどに牙をむき出し、ぐるぐると唸る毛むくじゃらな、小動物。 小動物……? トロールの親指ほどの獣。つまり、モグラです。 おそらく偶然飛び出でてしまったモグラは、目の前の巨大な足に驚き、身を震わせます。足元なんて気にしていないトロールは、いい感じにつま先をモグラに叩きつけ…… ズドン。盛大に転びました。 あらあら……これはお互いに不幸な事故でしたね…… トロールは顔面で地面にスタンプする羽目に、モグラはその下で口から泡を吹き目を回しています。 「何をやっとるんだ貴様は……」 後ろから、一部始終を見ていたナイトメアの嘆息。 そして何かを思いついたように、ニヤリと口角をあげます。 「そんなブザマな姿を晒すとは、さては修行不足だな? ワシが稽古をつけてやろうか?」 幹部直々のお稽古。かなりありがたいお話に、トロールは慌てて首を左右に振ります。 「遠慮することはない。貴様より先輩の他の連中も、 みなワシの指導を受けてきたのだ。 貴様も直に、泣いて喜ぶようになるだろう」 激しく身を捩らせるトロールの左足をむんずとつかみ、ウキウキで引きずっていくナイトメア。もう姿は見えませんが、あちらの方から絶叫が聞こえるようです。 これは……? もしかして助かったのでしょうか? [一旦戻る](47) 60 **だめです! びくともしません** -- やはりナイトメアは強い運命の持ち主。 我々の干渉を受け付けないようです。他の手を試さなくては…… [戻る](50) 61 **トロールは軽く身じろぎしましたが……** -- ……だめです。それ以上の動きは見られません。 一魔物とは言え、これから勇者様たちに関わる存在。我々の干渉をはねのけるには十分ということでしょうか。 他の手を試さなくては…… [戻る](50) 62 **時をさかのぼりて** -- ここはネクストタウン。日もまだ高く、魔物の襲撃もないようです。どうやら勇者一行が訪れる前のようですね。 人通りの少ない町ですが、犬を連れたおばあさん、食材の買い出しをする男性などの姿が見えます。誰の様子を見ますか? [おばあさん](63 "-f09") [男性](64) [分岐点に戻る](47) 63 **シワだらけのおばあさん** -- 犬はしっぽを元気よく振り、くるくると回転しています。 おばあさんの方は、節くれだった杖で軽く地面をこすりながら、物思いにふけっているようです。 ひゅお~~~ 時折、強めの北風。その音にビクリと肩を震わせ、ただの風音とわかるとやれやれと首を振ります。 [おばあさんに干渉する](65) [犬に干渉する](66) [戻る](62) 64 **ピチピチ跳ねる大きな魚を抱える男性** -- 「へへっ 珍しく新鮮な鱒が手に入ったぜ。今日はごちそうだな」 男性が一人、広場を通り過ぎていきます。るんるんと、ピチピチ跳ねる大きな魚を抱えながら―― おや。よく見れば、宿屋の主人ではないですか。夕食の買い出しをしていたのでしょうか。 「フン、こんな町に旅人なぞ来やしないのに。張り切ってどうするのやら」 呪詛のようにつぶやかれる言葉に、主人は思わず周りを見回します。そうして、ベンチに腰掛ける老婆を見つけたのでした。 「うおっ なんだ、メディアばあさんじゃねえか。 脅かすなよ……」 主人は驚きから一転、忌々しげに眉をひそめます。 「ふん、嫌な顔に会っちまったもんだぜ。 ネクストタウンのお荷物さんになあ」 「お荷物とはご挨拶だね。 お前達だって、フレッドのおかげで なんとか生き延びているにすぎないくせに」 「そうともよ。誰かさんが隠れているせいでなあ」 憎まれ口の応酬。まあ仲がよいとは言えませんが、気心は知れているようです。主人は一通り文句を言い終えて満足したのか、大股で去っていきました。 残るはおばあさん一人。 「魔物なんぞ……もうまっぴらなんじゃ……」 ぼそりとつぶやくも、わたしたちのほかは誰も聞く人もおらず。時折吹く風に、落ち葉が舞うのみ、でした。 特に干渉できる存在もいなそうです。戻りましょう。 [戻る](62) 65 **反応が……ない?** -- 干渉が効かない……ようです。こんなおばあさんが? 重要な役割を果たす人物だとでも言うのでしょうか? ともかく効かないものは仕方がありません。別の手を試しましょう。 [戻る](63) 66 **ワンちゃんは狂ったように雄叫びをあげ、** -- 物は何事も絡め手。いきなり本題に入らず、外堀を埋めていくのです。ということでワンちゃんから攻め立てます。ってなんでや。 ともかく、あわれ対象にされてしまった犬は、今まで以上にしっぽをフリフリ、飛び出して行ってしまいました。リードを握るおばあさんも、思わず手を離してしまいました。 「ジュディア! 何事だい!?」 犬が駆けていった先は――町の入口。ちょうど二人組が訪れたようです。あっ……あの見覚えのある姿は…… 「ぎゃっ!? な、なに、犬!? あ、た、助けてフォーク! 助け、ぎゃあ!」 それはご存知、我らの勇者様でした。ああ、ああ、舐める。舐める。執拗に舐める。お顔がよだれまみれに。 意外なところで接点が生まれましたが、これで何か変わったのでしょうか? ともかくこれ以上の変化は無いようなので先へ進みましょう。 [戻る](62) 67 **苦しく、厳しい戦い** -- 我が物顔で町を闊歩するリザードたちに、勇者様が切りかかります。 ザクリ 攻撃は通りましたが、浅い……! リザードはさしたる痛痒を見せず、勇者様を振り払います。 その向こう。 地響きとともに歩むは巨大なトロール。巨人は拳を振り上げ、住宅の屋根に叩きつける……! レンガが砕け、地にばらまかれます。更にもう一度拳を振り上げ―― **――そのまま仰向けに倒れました。** 「!?」 何事でしょう。 ややっよく見れば、トロールの体には無数の傷跡と浅黒いあざが見えます。満身創痍だったのでしょうか。これほどの魔物をここまでボロボロにするとはいったい、何者の仕業なのでしょう…… なんにせよ、大きなチャンスです。いち早くショックから立ち直ったのは、やはり従者フォーク。呆然とした顔を見せるハーピーの群れに、嵐のような矢の連撃。多くのハーピーがその餌食となり、墜落していきました。 けれど、けれども……! それでも相手の数が多い。矢をつがえる速度も間に合わず、至近距離に入られてしまいます。 離れてこそ無類の強さを誇るフォークの弓術。こんなに近くに敵がいては、ああ、いけません…… 矢を放ちやすいよう見晴らしいい高台にいたのが災いしました。弄ぶように差し向けられるハーピーの爪攻撃を避けるに避けられず、執拗な攻撃を受けてフォークは高台から転落してしまいました―― 勇者様も果敢に戦うも、徐々に押し切られ、敵の集団に飲まれてしまいました。 ああ、そんな…… 戻らなくては――――! [分岐点へ](47) 68 **苦しく、厳しい戦い** -- 我が物顔で町を闊歩するリザードたちに、勇者様が切りかかります。 ザクリ 攻撃は通りましたが、浅い……! リザードはさしたる痛痒を見せず、勇者様を振り払います。 そして向こう側では。 ハーピーが手の届かぬ上空を飛び回り、逃げ遅れた子供に襲いかかろうとしています。 そこに疾風のごとく走る、矢。 ハーピーと子供の間を切断するように走り抜けます。フォークが一瞬のスキも与えず、矢を射つづけているのです。 そこに。 **「俺たちも協力する!」** 力強い、複数人の声。 町の人達のようです。彼らは4人がかりで荷台を運んできました。 こ、これはファーストタウンにあった……! 「壁の補修用に用意したものを拝借してきた! 俺たちは武器など使えないが、この岩があれば…… あの、空で舞う邪魔な鳥どもを潰してやれる!」 ありがたい! 援軍です! 彼らは岩を掴むと、持ち上げ……持ち上げ……上がらない! そんな! 重すぎたのです! この岩を敵に当てることができれば、致命傷を与えられることは間違いないのに。それなのに、悔しいことに、一般人の彼らでは、そもそもの入り口は立てない……! そうこうしているうちに激しい地響き。トロールが近くまで来てしまったのです。町人が振り返り、あっと声を上げる間もなく。拳が振り上げられ―― ……? 振り下ろされない? はるか上空、トロールの顔を見あげると、なんともぼんやりとした不思議な表情。そのまま、拳は振り下ろされず、グラグラ、揺れる上体、かしいで行く、かしいで行く―― **ズドン!!** そのままうつ伏せにぶっ倒れるトロール! なぜ!? 顔面をしたたかに荷台に叩きつけ、飛散する岩。 よく見れば、トロールの体には無数の傷跡と浅黒いあざが見えます。満身創痍だったのでしょうか。これほどの魔物をここまでボロボロにするとはいったい、何者の仕業なのでしょう…… そのままトロールは動かなくなってしまいましたが、ハーピーに対抗する武器もなくなってしまいました。もう、おしまいです―― フォークは高台から落とされ、勇者様はリザードの群れに飲み込まれてしまいました。 戻らなくては――――! [分岐点へ](47) 69 **苦しく、厳しい戦い** -- 我が物顔で町を闊歩するリザードたちに、勇者様が切りかかります。 ザクリ 攻撃は通りましたが、浅い……! リザードはさしたる痛痒を見せず、勇者様を振り払います。 そして向こう側では。 ハーピーが手の届かぬ上空を飛び回り、逃げ遅れた子供に襲いかかろうとしています。 そこに疾風のごとく走る、矢。 ハーピーと子供の間を切断するように走り抜けます。フォークが一瞬のスキも与えず、矢を射つづけているのです。 そこに。 **「俺たちも協力する!」** 力強い、複数人の声。 町の人達のようです。彼らは4人がかりで荷台を運んできました。 こ、これはファーストタウンにあった……! 「壁の補修用に用意したものを拝借してきた! 俺たちは武器など使えないが、この岩があれば…… あの、空で舞う邪魔な鳥どもを潰してやれる!」 ありがたい! 援軍です! 彼らは岩を掴むと、持ち上げ……持ち上げ……上がらない! そんな! 重すぎたのです! この岩を敵に当てることができれば、致命傷を与えられることは間違いないのに。それなのに、悔しいことに、一般人の彼らでは、そもそもの入り口は立てない……! そうこうしているうちに激しい地響き。トロールが近くまで来てしまったのです。町人が振り返り、あっと声を上げる間もなく。拳が振り上げられ―― ……? 振り下ろされない? はるか上空、トロールの顔を見あげると、なんともぼんやりとした不思議な表情。そのまま、拳は振り下ろされず、グラグラ、揺れる上体、かしいで行く、かしいで行く―― **ズドン!!** そのままうつ伏せにぶっ倒れるトロール! なぜ!? 顔面をしたたかに荷台に叩きつけ、飛散する岩。 よく見れば、トロールの体には無数の傷跡と浅黒いあざが見えます。満身創痍だったのでしょうか。これほどの魔物をここまでボロボロにするとはいったい、何者の仕業なのでしょう…… そのままトロールは動かなくなってしまいましたが、ハーピーに対抗する武器もなくなってしまいました。絶望的な雰囲気が町人の間に漂います―― そのとき、物陰から勢いよく飛び出すもの。それは疾風のごとく駆け抜け、リザードの向こう脛にかぶりつく……! **ワンちゃん……!** つい先程、勇者様のお顔をべろべろなめていたお犬さまです。ありがたい加勢ですが、いたずらに敵を怒らせては―― 言わんこっちゃない、ぞんざいに足を振り払われ、犬は、ブザマに転がってしまいます。それを無慈悲にも踏み潰そうと、ノシノシと近づくリザード。 「だめだーーーーッ」 勇者様の絶叫。目の前の敵を放り出して、犬さまの元に向かいます。踏み潰そうとしたリザードにめがけて、タックル。 不意をつかれたリザードは、地に倒れ、勇者様も勢いを殺しきれず、ともに絡まりつつ転がります。 ああ、でもダメ。敵はリザードだけでは無いのです。 フォークの弓の攻撃を避けて低空をさまよっていたハーピーが、犬さまを見咎めてします。もともと上がり気味だった口角を更に病的ににぃぃと釣り上げ、犬さまに急降下します。犬さまは、縮こまって動けなくなってしまいました……! 「ジュディア――!」 悲痛な、しわがれ声が響くのと同時に。 襲いかかる爪。それよりも、勇者様が犬さまを抱えて横っ飛びに転がるほうが瞬間、早かった。怪鳥の爪は空を切ります。 ですが危機が去ったわけではありません。勇者様が立ち上がる時間などありません。追いかけてきたハーピーのいたぶるような連撃。勇者様は腕の中に守るもののおかげで、動くことができません。 痛めつけられる背中。ああ、お願いです。勇者様、どうか腕の中のものを解放して逃げ出して――あなたがやられてしまっては―― [次へ](73) 70 **階下では、テーブルにフォーク** -- 「勇者どの! 目覚めましたか!」 テーブルには従者フォーク。朝食の、薄めのスープを頂いているところのようです。 「昨日は、ご立派でしたぞ。果敢に戦うそのお姿。 フォーク、いたく感動しました」 拳をぶるぶると震わしながら、嬉し涙を流すフォーク。 我に返り、どうぞと勇者様に椅子をすすめます。 勇者様は褒められ慣れていないのか、照れたようにもじもじしながら椅子を引きます。 するとその後ろからぬっと伸びた太い腕……! 勇者様の首にまわし、これは首絞め……!? まさか、敵襲……!? 「ガッハッハ勇者どの! よく頑張ったな!」 首絞めの主はパン屋フレッドでした。 「もうお父さんったら……勇者様が困ってるでしょ。 ほんとガサツなんだから……」 大柄なフレッドの後ろから、涼やかな声。娘さんのアイシャです。彼女は勇者様の前でお辞儀をすると、 「勇者様……昨日はこの町を守ってくださり ありがとうございました」 丁寧なご挨拶。勇者様の方はと言うと、若い女性と話をするのは慣れていないのか、もじもじしています。後ろで眉根を上げるフォーク。 アイシャの話はそれだけでは無いのか、やや間を取ると、意を決したように語りかけます。 「勇者様。これからも苦しい戦いが 待っているのだと思います。 わたしに何かできないかと思って…… 贈り物があるのですが」 キラリと光る、何か。 「ご無事を祈って、昨日作ったんです。 受け取ってもらえますか?」 それはネックレスのようでした。小さな、花をあしらった銀細工が鎖に結ばれています。 まあ! ロマンス! 何かが発展してしまいますね……! いけませんよお勇者様は世界を救われるお方。こんな町娘とロマンスが始まってはいけませんよお……! とかなんとか言っているうちに。 「ジュディア! どこへ行くんだい!」 焦ったような声が聞こえたと思うと、何かが弾丸のように勇者様のお顔にぶち当たりました。その勢いを殺せず、勇者様は美しいフォームを描いて仰向けに倒れます。 それは……犬! 舐める、舐める、お顔を、ベロベロと。 響き渡る悲鳴。 こんなところにまでロマンスをお作りになるなんて、罪づくりな勇者様ですね……! [次へ](75) 71 **王様と何やら難しい話をしています。** -- 「ついに敵はネクストタウンにまで侵攻を果たしておるようじゃ。 なんとかしてこれ以上の侵略を食い止めねばならぬ……」 机に地図を広げ、羽ペンで印を書き込んでいっています。 「ネクストタウンと言えば」 王様は、ふと思い出したように顔をあげます。 それに応じるエティス。 「あの魔法使いのことですか。かなりの使い手でありましたが、 心を病んでしまったと聞いています。 戦力にはならないでしょう――」 痛ましげに首を振ります。 何やらネクストタウンについて話しているようですね……今ひとつピンとこない内容ですが…… [戻る](49) 72 **その場でぶっ倒れる子供たち!** -- な、何事でしょう! 突然電池が切れたようにその場でバタバタと倒れていきます。滑り台で倒れた子は、そのままゆっくり流れ落ちていきます。ずりずりと、うつ伏せで。ああ、ああ、お顔は大丈夫でしょうか。 さては奇っ怪な病気にでも、と思い様子を伺うと、穏やかな寝息。どうやら、単に寝ているだけのようです。子供は自分の疲労にも気づかず遊んでしまうと言いますしね……あなたの干渉が、疲労を自覚させる方向に働いたのでしょうか。 親御さんが慌てることなく近づいてゆき、我が子を荷台に乗っけてお帰りになるようです。さすが手慣れていらっしゃる……この程度のこと、茶飯事なのでしょうか。 わんぱく坊やたちを大人しくはさせましたが、これ以上の変化はなさそうですね。戻りましょう。 [戻る](48) 73 **物陰で、わなわなと体を震わすローブ姿** -- 一部始終を見ていた存在がいました。細い路地からそっと覗かせるローブ姿。あのおばあさまは。 見ていたのなら助けてくれてもいいのに……! 勇者様も、フォークも、他の町の人もみんな、頑張っているんですよ……! そう言いたくなる気持ちは、ですが急速に……しぼんでいきました。 「はぁーはぁー……うう、ぐすっ……」 ガタガタと奥歯を鳴らし、涙目。 そこにいたのは、あまりにもか弱き老婆の姿。わたしは、なんてことを考えてしまったのでしょう……むしろわたしこそ、なんの危険もないところから口ばかり―― 「戦いなんてごめんじゃ…… それでも、それでも、 見ず知らずの若者がジュディアを…… かばってくれているのに ワシは――!」 一呼吸。 「力を……勇気を貸しておくれ惑星神よ――!」 手に持つ杖を高く掲げ、高らかに唱えます。 **――CONFUSION――!** ハーピーの鉤爪は、勇者様をかすり、地面をえぐります。 それだけではありません。あたり一面のハーピーたち。彼女らは、どうしたことか先程転がってしまった岩に狙いをつけ、突撃します。 鉤爪を突き刺し、むんずと持ち上げ、ようとしましたが持ち上がらない! 重すぎるのです! 異様な現象に、町人たちも呆然としています。 「こやつらに幻術をかけた! やつらは岩が人にでも見えておるのじゃろう。 ワシにはこれが限界じゃ! 今のうちに……!」 物陰から出てきたおばあさんの叫び。町人は我にかえります。 「メディア……ばあさん!」 「今のは一体!?」 町人の中に、宿屋の主人もいました。 「あのばあさんは、かつては名のある魔法使いだって話だ…… 今までずっと隠れてた臆病婆さんが……やってくれるぜ……!」 「隠れているのはもうやめじゃ! みなが戦っているのにワシだけ…… 手伝わせておくれ! 勇気を……持ちたいんじゃ……!」 弾かれたように動き出す町人たち。ハーピーは相変わらず岩と一蓮托生、動けずにいます。こうなれば凶悪な魔物もただのカモ。よってたかって、怪鳥を仕留めていきます。 やりました……! 敵の一角を崩しました。トロールは伸びています。あとはリザードの群れだけ……! [次へ](74) 74 **あとはリザードの群れだけ** -- とは言え、まともに対応できるのは勇者様、一人。フォークと町人はハーピーの殲滅にかかりきりです。おばあさんは――他に有効な魔法は使えないのか、杖を両手に抱え、歯噛みしています。 鍔迫り合いをしていた、勇者様と一匹のリザード。異様に盛り上がった筋肉。人の力で対抗するのは、無理があります。苦悶の表情を浮かべ、徐々に押されて行く勇者様。 あっ……! 押し切られ転倒してしまう勇者様。剣も取り落してしまいます。慌てて起き上がろうとするも、間に合いません! **「そのまま伏せていろ――!」** 刹那。 大音声に瞬間遅れて、飛来する、何か。 それは今まさに勇者様に斬りかかろうとしたリザードの肩から上を吹き飛ばし、地面に突き刺さります。 異形となったリザードの頭部からは、噴水のように血を吹き上げながら、そのまま倒れていきます。 デジャヴュ。この、つい最近見たような光景は。 「遅くなってすまない! よく持ちこたえてくれたな!」 町の門の方から響く男性の声。筋骨しなやかな偉丈夫。フレッド……! 戻ってきてくれたのですね! 傍らには少女も一緒です。無事、救出できたようです。 「俺がこの町を守ると言っておきながら、何たるザマだ……! 勇者どの、そなたは立派に役目を果たしてくれたよ。 後は任せてくれ!」 力強い、言葉。それを耳にしながら、ああ、限界だったのでしょう、勇者様はその場に崩れ落ちました―― [次へ](78) 75 **そして出発の時** -- 「忘れ物はありませんか、勇者どの」 宿屋の外。もろもろの準備を終え、従者フォークは勇者様に最後の確認を行います。もはやお母さんのような風情があります。 町の皆も集まっているようです。まずはフレッドの挨拶。 「勇者どのには大切な任務があるからな。 いつまでも引き止めるわけには行かない。 この町のことは任せてくれ。今度こそ、な」 そして、やや冗談めかして。 「まさか、メディアの心まで動かしちまうとはな。 さすがは勇者どのだ」 その隣にいたおばあさんには、反論の用意があるようです。 「フ、フン。ワシは別に この小僧に心動かされたわけじゃない。 町の連中が頑張っておるから…… って、何をニヤニヤしておるんじゃ!」 にやにやしてるフレッド、宿屋の主人や町の人達。 「フ、フン。ともあれ、デュディアを守ってくれたのは事実。 お礼を言わなきゃね。ありがとうよ、勇者」 顔をそむけながら、すましたように続けます。 「この町を、フレッド一人に任せるには荷が重い。 ワシも、頑張らねばね。 あんたのおかげで気付かされたよ」 そして、宿屋の主人が後を継ぎます。 「俺たちはあんたたちの旅の手伝いはできないが…… それでも応援している。 再び立ち寄ることがあったら、いつでも訪ねてきてくれ。 歓迎しよう」 そして、町の人に手を振られながら、出発をする勇者様とフォーク。みな、口々に、頑張れよ、とか、応援してる、とか言ってくれます。 ああ、何ということでしょう。これは……叙事詩に出てくるような。吟遊詩人が唄うような。勇者、そのものの姿ではないですか。当初、あれほど頼りなさを感じさせていたのに。今はどうでしょうか。 うう、わたし、涙で視界が滲んできてしまいましたよ……ですからどうか、わたしの代わりに、あなたが彼らの勇姿を見届けてもらえないでしょうか―― ![凱旋](image03.jpg) まだまだ彼らの旅は続きます。どうか引き続き、あなたの力を貸してください。 [次へ](163) 76 **ネクストタウンを出発した勇者様たち** -- またダンジョンを3つ、フィールド2つ超えてきたのです。 勇者様と従者フォーク。歩を進める二人は言葉少なめですが、確かにその間には信頼にも似た、何かを感じ取ることができます。 そしてついにたどり着きました。 内側をぐるりと覆う背の高い壁。一角には堅牢な門。要塞じみた、町。 フォークがぼそりとつぶやきます。 「ここは――かつては人間の町でした」 つまり、今は。 ラストタウン。 この町が、闇の眷属ケイオースの根城です。 二人は、ゆっくりと門をくぐります。 [次へ](80) 77 **準備は万全ですか? やり残しはありませんか?** -- 運命への干渉はし終えたでしょうか。 もしもそうでない場合、またしても勇者様を傷つけてしまうのかもしれません。 いえ、尻込みさせようというわけではないんです。 いずれにせよ、覚悟を持たねば進めない状況。よろしいようでしたら、進みましょう。 [ネクストタウンに戻る](58 "f05&!f08") [ネクストタウンに戻る](68 "f05n09&f08") [考え直して、分岐点へ](47) 78 **そして夜が明けて** -- 激しい攻防から一夜。 パチリと目を覚ます。勇者様。よく寝たと、うーんと伸びをします。のんき。 その姿勢のまま、固まります。昨日のことを思い出したのでしょうか。わなわなと震えだすと、着の身着のまま階段を転がるように駆け下りました。 [次へ](70) 79 **これで、あなたのお勤めもおしまい** -- さすが、わたしが見込んだお方です。勇者様を導き、無事、悲願を達成しました。本当にありがとうございました。 えっ? ちょっと待って、これで本当に終わり? この物語のその後は? 、ですって? 何をおっしゃっているのですか。わたしたちは精霊。本来、人と関わってはならないのです。目的を達成したら、これ以上関わるのは許されません。 観念して、帰りましょう。さ、ほら。 ………… なんて、ね。わかっていますよ。 そんなの、納得できないですよね。これだけ、ともに困難を乗り越えて来たんですもの。その先が気になって当然。 だから。これからお見せすることは、ナイショ。 くれぐれも公言しないでくださいね? わたしが怒られちゃうんですから…… [次へ](156) 80 **待ち構えていたかのように大量の魔物が!** -- 楽になど進ませてくれない、ということでしょうか。 剣でいなし、弓にて吹き飛ばし、それでも後から後から出てきます。 キリがない……! このままでは疲弊してしまいます。彼らを退治するのが最終目標ではないはず。 二人は、魔物の相手もそこそこに、町の広場を駆け抜けます。 そして眼前に見えてくる、大きな屋敷。 これこそが、目的地に違いありません。勢いよく飛び込み、扉を強く締めます。 外からドンドンと扉を叩く音が聞こえますが、相当に頑丈な作りの扉。当分破られることはなさそうです。 「大した歓迎です。 全く、気の休まる間がありませんな」 フォークの軽口。ほっと息をつき、軽く笑ってそれに応じる勇者様。ですが、ギクリとなにかを察知します。 音、ではありません。さりとて明滅する光でもなく。 それは、寒気。背後から感じるそれに、ゆっくりと振り向き、そこには―― [次へ](81) 81 **轟く、聞き覚えのある低い声** -- 「その声、やはりお前たちが勇者とやらだったか――」 一言一言にズシリと衝撃を感じるような、空気を震わす音の伝播。 薄暗い視界の中、徐々に目が慣れてきた頃に…… ぼう、と現れる2つの金の輝き。そして闇と同質の昏い色合いの、毛並み。 ナイトメアです! 二人の間に緊張が走ります。完全に敵の視界に入ってしまいました。もはや逃げるわけにはいきません。 そして、ここで逃げていては何のために来たのかわからない……! 「前は視界を奪われていたからな…… こうしてまみえるのは初めてか」 ギロリと射抜く瞳。 「ここはケイオース様のおわす館。 人間が足を踏み入れてよい場所ではない。 早速だがその罪、存分に贖ってもらうぞ……!」 [次へ](82) 82 **疾風のごとく迫りくるナイトメア** -- 勇者様は武器を構え、飛び込んできたナイトメアの一撃をまともに受けます。 衝撃波が見えるかと思うようなものすごい重圧! 歯を強く食いしばり、額からは滴り落ちる汗。ですが、なんとかしのぎました。 ステップを効かせ、素早く2,3歩下がる勇者様。間髪入れずにその場所に、走る矢。 チームワーク! しかしその時には、ナイトメアも霞むように姿をくらませ、立ち位置をずらしています。鮮やかな避け方。移動したことに気づきませんでした。 「多少は動く…… ひよこに毛が生えたようなものだがな」 「とは言え、ケイオース様を脅かす可能性を かけらでも秘めているのなら、 ためらいは無用。ここで叩き潰す!」 その声に呼応するかのように。 壁の暗がりからたくさんの魔物が現れました。一人ですら手強い相手だと言うのに……! [次へ](83) 83 **襲いくる、恐ろしい闇** -- **“ 本気でやらせてもらう……!”** 虚ろな声が、します。それではっと気づきます。いつの間にかナイトメアの姿が見えません。前方には、ぼんやりとした闇、のみ。 一体どこへ…… 戸惑っているうちに、異変に気づきます。闇が、動いているのです! あっと声を上げる間もなく勇者様が飲み込まれ、寸刻後に、悲鳴! 「勇者どの!?」 フォークの叫び。決死の表情で闇の中に飛び込もうとして、 「うわあああ!」 飛び出してきた勇者様と鉢合わせします。 「ご無事ですか!? いや! お怪我を……!?」 見れば、勇者様は右手で左腕を抑えています。指の隙間から滴り落ちる、血……! 「中に……ナイトメアがいる!」 そんな。この中に、奴が? その時どこからともなく声が聞こえます。 **“ 闇は我の友。 どこから襲いかかられるかわからぬ畏れと踊りながら、 逃げ惑うがいい――”** 恐怖。恐怖そのものが迫りくるような感覚。ですがフォークは臆する事無く矢を放ちます。 「くたばれ、ばけもの! ……はッ」 **“ くくく……”** 矢は音もなく闇に吸い込まれ、その後には何も起こりません。ただただ、うつろに声が響くのみ。 これはいけません。とにかく闇から距離を取らねば。中に入っては、敵の思うつぼです。 二人は壁に向かって走り出しました。 「どこに行こうってんだお二人さんよぉ!」 なんてことでしょう! 壁には、今まで動向を見守っていた魔物たちが待ち構えていました。壁に寄らせないつもりでしょうか、壁を背後に陣取り、そこに近づこうとする二人に執拗な攻撃を仕掛けてきます。そうして徐々に広間の中央に追いやられてしまいます。 そして、後ろから迫ってきた闇に……二人とも飲まれてしまった! ………… ………… ……! おかしい、いつまでも出てきません! 気をもんでいると、闇の周辺からゆらりと人影が。よかった、勇者様、無事だったのですね…… いえ! 尖った耳、牙の覗く口元と長い鼻先……! ナイトメアです! 出てきたのは、ああ、ああーー! では勇者様は……! だめです! だめ……! 勇者様は死んではならない。戻らなくては……! [次へ](84) 84 **光輝く白の世界――運命の分岐点** -- ![光輝く空間](image02.jpg) さて……何度目の分岐点でしょうか。願わくばこれで最後にしたいものですね。 強敵ナイトメアを倒すには、まだまだ足りていないものが多すぎるように思います。 それが何か、現時点ではわかりませんが、あきらめず探しにいきましょう。 心配しないで。あなたには、運命を動かす力があります。諦めなければ、必ず、成し遂げられます。 [ナイトメアと戦う](96) [王宮へ](111 "!f20") [王宮へ](85 "f20&(!f11)") [王宮へ](101 "f11") [ファーストタウンへ](86 "!f13") [ファーストタウンへ](90 "f13&(!f17)") [ファーストタウンへ](108 "f17") [ネクストタウンへ](117 "!f22") [ネクストタウンへ](88 "f22") [ケイオースの館へ](98 "!f17") [ケイオースの館へ](99 "f17&(!f18)") [ケイオースの館へ](109 "f18&(!f11)") [ケイオースの館へ](102 "f18&f11&(!f19)") [ケイオースの館へ](110 "f19") 85 **姫と会話する王** -- 王宮に戻って来ました。 おや、姫様が珍しく外に出てきていますね。漫画は読み終わったのでしょうか。 [姫の様子を見る](89) [分岐点に戻る](84) 86 **比較的穏やかなファーストタウン** -- 再びこの町に来ました。やはりこのあたりは魔物の襲来も少なく、落ち着いていますね。願わくば、こういった平和を守り抜きたいものです。 あたりには、荷台を運ぶ労働者、大道芸人、料理道具を持つおばさんなどが、相変わらずいるようです。 さあ誰の様子を見ましょうか…… と、そのとき。 誰に焦点を当てようか悩んでいましたら、そう遠くない町の入口の方で叫び声があがりました。 何事でしょうか。 [次へ](90) 87 **急にモリモリとした筋肉を浮き上がらせる魔物** -- ミシミシ! 雑巾拭きされる手すりがきしみます。 「雑巾がけはァ……魂の叫び……! ここで踊れと訴えるのさあ心が……!」 謎の歌を歌いだしました。鼻歌まじり。 煙が出るかと思うほどの摩擦っぷりで磨き上げます。みるみるうちに艶輝きゆく手すり。ああもう、それ以上しなくてもいいでしょうに……明日には筋肉痛ですよ…… そして、ああ、言わんこっちゃない。ボキリと嫌な音をたてて、柵の一部が歪みました。 「うわぉっっと!?」 さすがの反射神経。魔物は手すりを掴むのをやめ、飛び退きます。手すりはなんとか持ちこたえ……て、いますが、ありえないくらいに歪んでおり、少しでも力をかけたら崩壊してしまいそうです。 「よし……ほれぼれする仕事ぶりだぜ…… 別の場所をやるとするか」 とかなんとか言いつつ去っていってしまいました。 お仕置きされませんかね……こっちが仕掛けたこととはいえ、なんだか不憫になってきましたよ。 ですがそれも目的のためならば。 この状態ならば、ケイオースに一泡吹かせられるはずです……! [次へ](125) 88 **懐かしきネクストタウン。あ、勇者様も。** -- 激しい戦いを勝ち抜いてきたネクストタウンです。 おや、宿屋から誰か出てきましたよ。 あれは……勇者様です。どうやら出発前のようですね。 フォークの姿は見えません。別行動でしょうか? さて、どなたの様子を見ましょうか。 [フレッドの様子を見る](112 "!f30") [フレッドの様子を見る](114 "f30") [メディアおばあさんの様子を見る](113 "!f21") [メディアおばあさんの様子を見る](116 "f21") [分岐点に戻る](84) 89 **厳粛な顔で、姫に語りかける王** -- 部屋には二人しかいません。王と姫の関係の前に、親子。二人きりになれば、水入らずの打ち解けた会話……というわけでもなさそうですね。 「姫よ。この窮地を脱するためには敵の正体を知らねばならぬ」 「我々は敵の情報を知らなすぎる。 闇の眷属ケイオースは、数ヶ月前、突然名を轟かせ始めた。 それまでは噂らしい噂もなかったと言うのに」 しずしずと、姫様。 「申し訳ございません。王よ。 神託でも、それについては 何も得ることが叶いませんでした……」 王様はやや表情を和らげ、 「よい。そなたの力不足ではない。 もともと神託は、人智の及ぶものではないゆえに」 優しい言葉をかけられても、姫は毅然とした態度を崩さず言います。 「戦う皆様のお力に少しでもなれるよう、 精進したいと思います」 「では精神統一のため、 部屋に戻ってもよろしいでしょうか?」 なんだかもぞもぞしています。 不思議に思いよく観察してみると……背中に回し、王様から隠した手には、漫画……! ブレないッ 「ケイオースの存在は闇に包まれていますが、 幹部のナイトメアは、古くから人に仇なす強大な敵」 ノックの音ととともに、部屋に入ってきた者がいました。エティスです。彼は姫に尋ねます。 「彼の弱点、秘密。なんでも構いません。 そういったものは神託から得られないでしょうか?」 「……そうですね……試してみましょう」 答えるまでにやや時間があったのと、ピクピクと眉が動いているのは気にしないことにしましょう。 袋から水晶玉を取り出し、コトリと机に置きます。そして目を凝らす姫。その間、瞬きすら行わず。すごい集中です。さすがは神託を聞きとることのできる唯一のお方。 息の詰まるような、時間。長さにして30秒ほどでしょうか。ふう、と息をついて姫は顔をあげます。 「弱点らしい弱点は……見つけられませんでした」 肩を落とす、王とエティス。 「卓越した戦闘能力を持つ武人。 奇襲もたやすく察知されてしまうでしょう」 そこで姫は虚空を見つめ視線をさまよわせます。 「ああっ お待ち下さい。何か……見えました。 これは…………」 ゴクリと王様とエティス。 「仲間割れをする姿……? 大きな狼の魔物が、他の魔物を殴りつけている様子が…… 見えます……」 身を乗り出すように王様とエティス。 「仲間割れとな。それは我らにとって吉報。 なんとかその発生原因を突き止めよ」 しずしずと姫様。 「わかりました。ならばさらなる手がかりを求めて、 精神統一を。わたくしは退席をさせていただきます」 そうして姫は部屋に戻っていかれました。 これは何かのヒントですね……! わたしたちの行動を開始しましょう。 [次へ](101) 90 **魔物の襲来です!** -- 町の塀を飛び越え、数体の魔物が侵入してきました。ついにこの町にも魔物の襲来が……!? 数は多くはないとはいえ、この町には勇者様もソーサリアンもいないのです! どうしたら……! わたしたちは、ここで町の人たちがやられてしまうのを、見ていることしかできないのでしょうか―― ――いえ。違います。わたしたちは知っているはず。 この町には、干渉が届く存在がいることを。彼らに手を伸ばせば、何かを起こせるかもしれない。手を尽くしましょう。 誰の様子を見ますか? [時を待つ](91 "!(f14&f15&f16)") [時を待つ](95 "f14&f15&f16") [足をくじいたおばさん](92 "!f14") [荷台にもたれかかり一杯やっていた労働者](93 "!f15") [新たな芸を試行錯誤していた大道芸人](94 "!f16") [一旦、分岐点に戻る](84) 91 **蹂躙されていく町** -- 魔物たちは町を蹂躙していきます。 たった5,6匹。それが、こんな。広間には逃げ遅れたところを切りつけられ、うつ伏せに倒れる人、家々からは火があがり…… 「ギョーギョー!」 雄叫びのようにあげられる魔物の哄笑が響き渡ります。 ああ、そんな。 平和。そんなものはなかったのでしょうか。今までの平穏は、人々の営みは。そんなものは、単なる一時の幻でしかなかったのでしょうか。 …………救い、たい。 ……これは勇者様とは直接関係ないことかもしれません。 もし、こういったことに対して干渉したことが明るみに出れば、わたしはご主人さまにお咎めを受けるかもしれません。 ですが、どうか。 見逃してもらえませんか。わたしには、この惨劇を「起きてしまったこと」にすることはできません。どうか、時を遡る行為を許してはくれませんか。 [町に戻る](90) 92 **うずくまるおばさんに近寄る影** -- 魔物の襲来に驚いて、逃げ出すときに足をくじいたのでしょうか。おばさんが地面にかがみ込み、うめいています。 その後ろからゆっくりと近寄る魔物。危ない……! [干渉する](105) [考え直す](90) 93 **ジョッキを片手に、動きをとめる労働者** -- また別の荷物を運ぶ途中なのでしょうか、荷台にたくさんの荷物を積んで。その脇で、筋骨たくましい労働者が一杯やっていました。 魔物が侵入してきたのを見て、突然のことに動きが固まってしまいます。荷台に手をやり、どこへ持っていこうか思案しているようです。ああ、ああ…… 恵まれた肉体を持っていると言っても、それは日常生活においての話。勇敢に魔物と戦うなど、無理があるのでしょう―― それでも……! [干渉する](106) [考え直す](90) 94 **新たな芸に挑戦していた芸人** -- アクロバティックな技に挑戦していた芸人も、突然の魔物の襲来に驚きのあまり飛び跳ねます。かと思うと、悲鳴をあげつつ身近なものを魔物に投げつけ始めました。 恐怖。それはコントロールし難いもの。ですが、ああ、そんなことをすれば…… 言わんこっちゃない、当然、そんなもので魔物にダメージは与えられません。むしろ、注意を引いてしまいました。ゆっくりとこちらに歩いてきます。 これはいけません……! [干渉する](107) [考え直す](90) 95 **苦しい戦い。けれど、光明** -- 屈曲な労働者も、魔物相手の戦いは経験があまりありません。 頼りない護身用のナイフを取り出したものの、相手の凶暴な爪を前に、攻めあぐねいています。 そのとき、横っ飛びの強烈なケリが、魔物の側頭部を直撃! 芸人のアクロバティックなアシストです! 魔物にとっては、びっくりもいいところです。慌てて転がった体を立て直します。 その背後に忍び寄る、影。 それは、おばさまでした。おばさま……! 危険です! 手負いとはいえ、その細腕で対抗できる相手ではありませんよ……! おばさまは高く手を振り上げました。その手には、鉄のフライパン。陽の光を受けて、ギラリと輝きます。 迷うこと無く、頭上に、 ゴン いい音が響きました。 起き上がろうとしていた魔物は、逆再生のように再び地面に突っ伏します。やりました! みんなの力で撃退したのです! それを見て怯んだのか、残った魔物たちは門の方へと駆け出しました。 しかし、そのうちの一体が、威嚇するようにこちらに突撃してきます。危ない……! 思わず町人が身構えますが―― 魔物は町人には目もくれず、気絶した魔物を掴んで、ズルズルと引きずって行ってしまいました。奪われてしまいました…… なんにせよ、やりました。 なんとかファーストタウンを守ることができたのです。 [分岐点に戻る](84) 96 **準備は十分ですか? すべてやり終えたでしょうか** -- なし得るすべてを行ったのなら、後は動くのみ。 戦いの場に、向かいましょう。 [戦闘に向かう](83 "!f18") [戦闘に向かう](97 "f18&(!f19)") [戦闘に向かう](104 "f19&(!f21)") [戦闘に向かう](118 "f21") [分岐点に戻る](84) 97 **襲いくる、恐ろしい闇** -- **“ 本気でやらせてもらう……!”** 虚ろな声が、します。それではっと気づきます。いつの間にかナイトメアの姿が見えません。前方には、ぼんやりとした闇、のみ。 一体どこへ…… 戸惑っているうちに、異変に気づきます。闇が、動いているのです! あっと声を上げる間もなく勇者様が飲み込まれ、寸刻後に、悲鳴! 「勇者どの!?」 フォークの叫び。決死の表情で闇の中に飛び込もうとして、 「うわあああ!」 飛び出してきた勇者様と鉢合わせします。 「ご無事ですか!? いや! お怪我を……!?」 見れば、勇者様は右手で左腕を抑えています。指の隙間から滴り落ちる、血……! 「中に、ナイトメアがいる……!」 姿の見えぬ相手との戦いなんてできっこありません。何か。何か秘策はないのでしょうか。二人は周りを見回しました。 「あっ あれは――!」 気づきました。**壁には……ランタンがあります!** 当然、そこは完全な闇にならず、弱くも力強い光が! 勇者様たちは迷いなくそこに飛び込みます。 その直後。闇も勇者様を追いかけて近づいてきます。 けれど壁に近づくにつれて闇は小さくなり、ついにはナイトメアの姿が見えました。わずかに顔をしかめ、しかし次の瞬間には戦斧を振りかぶり、恐ろしい斬撃……! なんとか受けきる勇者様。攻撃の出どころがわかっていればこその、僥倖です。 「誰だ! ランタンなんて設置したやつ! ナイトメア様の舞台だぞ。わかってんのか!」 「あの下っ端のゴブリン! なんかぼーっとしてたからマズいと思ったんだ! 見ろ! ナイトメア様がお怒りだ……!」 ナイトメアは怒号をあげることこそありませんでしたが、青筋を立てています。 勇者様と鍔迫り合いをするナイトメア。誰もその間に入れません。 いえ。そこに、雷光のように走る、もの。 「グッ」 苦悶の表情を浮かべるナイトメア。 フォークの矢です! 今度こそ一撃を与えることができました。 歯茎をむき出し、背筋の凍るような一言。 「やるな……! 矮小なる存在よ……!」 上体をのけぞらせ、大きく息を吸い込みました。 「ではこれで、のたうち回るがいい!」 大きく口を開けたかと思うと、そこから吹き出す闇色の煙……! 直近で浴びた勇者様はうめきながら転がります。 そのスキを見逃すナイトメアではありません。 振り下ろした戦斧。響き渡るフォークの絶叫。 「勇者どのーーーーー!」 まだ、足りない! これだけでは勝てない……! 戻らなくては! [分岐点に戻る](84) 98 **勇者様も、ナイトメアもいない広間** -- 後に戦いが繰り広げられる、問題の館にやってきました。 まだ勇者様も、ナイトメアも来ていないようです。 この屋敷にも、なにか手がかりがあるかも。 もっとも、わたしたちはすでに知り得た場所しか訪れることはできません。ですから、この大広間を探索するのが限界なのですが。 あっ誰か入って来ました。魔物が二人。 「準備は終わったのか。もうじきナイトメア様に 来客があるそうだ。準備は怠らないようにしておけよ」 「わかりました」 どうやら、下っ端の一体に、雑用を言い渡したようです。下っ端の魔物は、部屋をぐるりと見回し、壁に近づきます。 「おっと、あぶねえあぶねえ……ナイトメア様の戦いの場に、 明かりは厳禁だ。このランタンはいらないな……」 魔物はぶつぶつ言いながら、地面に転がった瓦礫をどかしたり、壁を水ふきしたりしています。 どこの世界でも、下っ端は大変なのですね…… [分岐点に戻る](84) 99 **勇者様も、ナイトメアもいない広間** -- 後に戦いが繰り広げられる、問題の館にやってきました。 まだ勇者様も、ナイトメアも来ていないようです。 この屋敷にも、なにか手がかりがあるかも。 もっとも、わたしたちはすでに知り得た場所しか訪れることはできません。ですから、この大広間を探索するのが限界なのですが。 あっ誰か入って来ました。魔物が二人。 「準備は終わったのか。もうじきナイトメア様に 来客があるそうだ。準備は怠らないようにしておけよ」 「わかりました……! うへっ」 どうやら、下っ端の一体に、雑用を言い渡したようです。下っ端の魔物は、部屋をぐるりと見回し、壁に近づきます。 あっあれは――その魔物。見覚えがあります。 **ファーストタウンで撃退された魔物ではありませんか。**何ということでしょう。こんなところでつながってくるなんて。 見れば、頭に包帯を巻き、やや目が飛び出ておりピクピクしています。敵ながら、そんな容態なら休ませてあげなさいよ……とか思ってしまいますね。 **「おも、おもてなしにランタン。 ピカピカの……!」** やや言動が怪しい感じがしますが大丈夫でしょうか……! 頭を強かにぶつけていましたからね。フライパンに。 ともあれ、部屋の準備は終わったようです。 壁には明かりが取り付けられ、煌々と照らされています。 [分岐点に戻る](84) 100 **ベッドに仰向けに転がり漫画を読む姫!** -- やっぱりか! なんとなく想像つきましたけども! 袋からなにか取り出しむしゃむしゃと食べています。ボリボリとした音がここからでも響きます。なんというたくましい歯茎……! ええい、姫はもう当てになりません。わたしたちでなんとかしなくては。 [王宮に戻る](101) 101 **王様とエティスがいつものように会話をしています** -- 王宮に戻って来ました。 姫様は自室に戻られたようです。 [姫の様子を見る](100) [分岐点に戻る](84) 102 **勇者様も、ナイトメアもいない広間** -- 後に戦いが繰り広げられる、問題の館にやってきました。 まだ勇者様も、ナイトメアも来ていないようです。 魔物が二人話しています。 「もうすぐ人間がやってくるらしい」 「ほう、人間が。それはたっぷりもてなしてやらんとなあ」 「いや待て。ナイトメア様が相手になされるらしい。 彼は一騎打ちに拘わられる方だからな。 下手に邪魔したら後が怖いぜ」 「それもそうだな」 ハハハと談笑する二人。 これは……何をすべきか、答えが出ているようなものですね。 [魔物に干渉する](103) [分岐点に戻る](84) 103 **俄然やる気に満ち溢れる魔物たち** -- ちょっと魔物たちの心をくすぐってみました。 徐々に、魔物たちはテンションをあげていきます。 「おい待て待て。そもそも俺たちゃ 人間に何度も煮え湯を飲まされてんだぜ」 一体は肩を怒らせモリモリ。 「ネクストタウンとか言う町のじじいか? あいつには何度もやられてるしなあ」 もう一体は顔を赤くし思い出に怒りを連ね。 「そうだよなあ。俺たちも戦いたいよなあ」 「よっしゃナイトメア様が戦う暁には 俺たちも参戦しようぜ!」 魔物をやる気にさせてみました。 普通に考えたらデメリットにしかならないはず。けれど先程の話がうまく噛み合うのなら、もしかしたら……! [分岐点に戻る](84) 104 **襲いくる、恐ろしい闇** -- **“ 本気でやらせてもらう……!”** 虚ろな声が、します。それではっと気づきます。いつの間にかナイトメアの姿が見えません。前方には、ぼんやりとした闇、のみ。 一体どこへ…… 戸惑っているうちに、異変に気づきます。闇が、動いているのです! あっと声を上げる間もなく勇者様が飲み込まれ、寸刻後に、悲鳴! 「勇者どの!?」 フォークの叫び。決死の表情で闇の中に飛び込もうとして、 「うわあああ!」 飛び出してきた勇者様と鉢合わせします。 「ご無事ですか!? いや! お怪我を……!?」 見れば、勇者様は右手で左腕を抑えています。指の隙間から滴り落ちる、血……! 「中に、ナイトメアがいる……!」 姿の見えぬ相手との戦いなんてできっこありません。何か。何か秘策はないのでしょうか。二人は周りを見回しました。 「あっ あれは――!」 気づきました。**壁には……ランタンがあります!** 当然、そこは完全な闇にならず、弱くも力強い光が! 勇者様たちは迷いなくそこに飛び込みます。 これはいけないと、周りに控えていた魔物たちが動き出しました。 「ぶっ殺してやるぜ人間どもーー!」 **傍観はやめたのでしょうか……!** このままでは挟み撃ちにされてしまう! 「無礼者がッッッ!」 大音声。勇者様たちだけでなく、魔物たちまで震え上がります。 声の主はもちろんナイトメア。 稲妻のような速度で闇から飛び出し、近づいてきた魔物を、ぶん殴りました……!! ぐええという潰れたような音を出して壁にぶち当たり、気絶する魔物。 何ということでしょう。これには場も凍りつきます。 みな唖然とした表情を浮かべます。 その中で一人。平然とナイトメアは語りだします。 **「ここは我と、そこの人間との戦いの場。 横槍など許さん」** 傲慢……! そしてなんといううぬぼれでしょう。 ですがそのうぬぼれはわたしたちにとって大きなチャンス。 確かにナイトメアは強敵です。ですが、周りの介入がないとなれば……? それにいち早く気づくは、やはり従者フォーク。 駆け出し、ナイトメアの裏側に回ろうとします。挟み撃ちです……! そう、二人の利点を最大限に利用するのです。他の魔物がいるとなれば危なかっしくて一人ずつになるなんてできませんでしたが…… 敵がナイトメア一人ならば! 背後から、放つ矢! それはナイトメアの無防備な背中に吸い込まれ…… 信じられぬような体の屈曲! たったそれだけでかわされてしまいした。 けれど今度は勇者様の斬撃。わずかに反応の遅れたナイトメア。 避けるには能わず、腕で受けます。 やった! 通った! ……いえ、何という……! 軽傷です。 わずかに皮膚を傷つけ血を流したのみ。縄のように筋肉を浮かばせ、刃の通りを防いでいます。 しかし、好機……! この機会を逃してはなりません。 畳み掛けるように勇者様は次なる攻撃の準備をします。 が……足払い! お留守になった足元を狙われました。回避の叶わなかった勇者様は、転倒してしまいました。身体能力が違いすぎる! 立ち上がる間もなく振り下ろされる戦斧。 あ………… 何をしても、結果は変わらないのでしょうか…… 戻らなくては。なんとしても、結果を変えなくてはならないのです。 こんなところで立ち止まってはいられない! [分岐点に戻る](84) 105 **魔物はズルり、と転びました** -- ええっなんで。 あ……どうやら、地面に落ちていたフライパンに足を突っ込んでしまい、滑ったようです。フライパン、おばさんがころんだ拍子に手から落とした物のようです。 魔物は両手を上げて地に倒れ目を回しています。魔物とフライパンを交互に見ながら……徐々に、決意の表情を浮かべるおばさん。そして、むんずとフライパンを手に取り、うめく魔物の顔面に、無慈悲な一撃! ガボァン~~…… 「よし」 何がよしなのでしょうか。 それはともかく魔物は当分お休みです。危機を脱しました! [町に戻る](90) 106 **ジョッキを放り投げ、バケツの水をザバリとかぶる** -- パリィン 甲高い音が響き渡ります。見れば、清掃用でしょうか、用意してあったバケツの水を頭からかぶり、両手で頬を叩く姿。 気合の雄叫びとともに、魔物に向かっていきます……! [町に戻る](90) 107 **頭によぎる、猛獣との訓練。命の危険すら感じる、大立ち回り。** -- 「……!」 芸人は我を取り戻します。そう、思い返せば彼はもっと危険な目にあってきたのです。 噛み殺さんと威嚇する猛獣を軽やかに扱ったり。落ちたら大怪我必至なロープ芸を、華麗に決めてみたり。……というのはわたしの想像なので、本当にそれが頭をよぎったかはわかりませんが、決意に満ちた表情を浮かべます。 「へいへい魔物さんよぉ! そんなへっぴり腰で オイラを捉えられるのかァい?」 魔物に向けたお尻を叩き。 「追いかけてごらんよ、のろまァ!」 啖呵……! 挑発に乗ったかのように、魔物は走り出して芸人を追いかけます。ひょいひょいと建物の隙間を軽やかに駆け抜ける芸人。地獄の追いかけっこです。 [町に戻る](90) 108 **比較的穏やかなファーストタウン** -- 再びこの町に来ました。無事、魔物から町を守ることができました。町は、普段の平穏を取り戻したようです。 あたりには、荷台を運ぶ労働者、大道芸人、料理道具を持つおばさんなどが相変わらずいるようです。 [分岐点に戻る](84) 109 **勇者様も、ナイトメアもいない広間** -- 後に戦いが繰り広げられる、問題の館にやってきました。 まだ勇者様も、ナイトメアも来ていないようです。 魔物が二人話しています。 「もうすぐ人間がやってくるらしい」 「ほう、人間が。それはたっぷりもてなしてやらんとなあ」 「いや待て。ナイトメア様が相手になされるらしい。 彼は一騎打ちに拘わられる方だからな。下手に邪魔したら後が怖いぜ」 「それもそうだな」 なるほどなるほど……何かに使えそうな情報ですね。 [分岐点に戻る](84) 110 **勇者様も、ナイトメアもいない広間** -- 後に戦いが繰り広げられる、問題の館にやってきました。 まだ勇者様も、ナイトメアも来ていないようです。 魔物が二人、スクワットをしたり武器の素振りをしたりしています。 「フンッ ハァッ!」 「打倒人間……!」 暑苦しい空間となってしまいました。 [分岐点に戻る](84) 111 **誰もいない執務室** -- 王宮に戻って来ました。 あいにく、執務室には誰もいないようです。王宮の皆さんも、様々な職務に忙殺されているのですね…… 現状では何も起こすことはできそうにありません。機会を待ちましょう。 [分岐点に戻る](84) 112 **工房でパン生地を捏ねるフレッド** -- 先の戦いで、目覚ましい活躍を見せてくれたフレッドの様子を見に来ました。 ここは工房。明日の仕込みでしょうか。力強い拳で、パン生地を捏ねているフレッドの姿がありました。 本当にパン屋なのですね。戦う姿しか見ていなかったので、こんな意外な一面が見られるのもなんだか面白いですね。 おっといけない。そんな野次馬根性を出している場合ではありませんでした…… 工房にはフレッドしかいないようです。干渉できる存在もいなさそうですが……? [パン生地に干渉する](114) [町に戻る](117 "!f22") [町に戻る](88 "f22") 113 **木を相手に、トレーニングをするフォーク** -- 先の戦いで、最後に魔法で助けてくれたおばあさま。メディアさんの様子を見に来ました。 自宅でしょうか、庭先のベンチに腰掛けています。 その瞳がなんとなしに見ているのは――おや、あれは我らがフォークの姿ではありませんか。木を相手に、弓のトレーニングをしているようです。本当に勤勉なものです。この旅も、勇者様と、このフォークがいたからこそ、ここまで成し遂げられたのだと、真に思いますね。 「ふう、ふう……やはりわたしたちの戦法は単調だな…… なにか技を身に付けねば、敵に押し切られてしまう……」 フォークなりに、今後のことを考えているようです。手助けができればよいのですが。 ここにはフォークとおばあさんのみ。どちらもあなたの干渉は受け付けない存在です。 ……いえ、お待ち下さい。おばあさんがいるということは…… [縁の下に干渉する](115) [町に戻る](88) 114 **動き出すパン生地** -- ああ、そんな。 確かにパン生地は生きていると言いますけども。パン生地に干渉しようとするのは、あなたくらいなものですよ。 ともかく。あなたの干渉を受けたパン生地は……元気に跳ね始めました! 「なんだ!? どうなってやがる!」 さすがのフレッドも慌てふためきます。 ……が、それも一時のこと。すぐにニッと口角をあげ、 「こいつはどんなすごいパンが焼き上がるってんだ……!? 暴れまわる……イースト菌がよ! 最高の食感を作るぜ……!」 夢中でこねこねします。たくましい職人根性……! 今までに無いような素晴らしいパンが生まれそうです。わたしたちは食べることができなのが残念でなりませんね……って実はそんなでもありませんが。 集中モードに入っている職人を邪魔してはいけません。立ち去りましょう。 [町に戻る](117 "!f22") [町に戻る](88 "f22") 115 **縁の下から、怪しく光る2つの輝き** -- おばあさんの座るベンチのそば。家はわずかに地面より高く建てられており、縁の下の暗がりが見えました。 なんの変哲もないと思われたその縁の下から、何かが弾丸のように吹き飛んでいきました。 小さく丸いものはフォークの方へすっ飛んでいき――ああ、この流れは…… ガブゥ 「なぜ噛み付くのだぁーー!?」 フォークのスネにがぶりと噛み付く、ワンちゃんの姿でした。 「ジュディア…! 全くお前は!」 メディアおばあさんも慌ててかけてきます。 「うぅーーバウバウ! ガブぅ!」 「またこの犬か! どうでもいいが何でわたしには噛み付くのだ……!? ぐわーー!」 ○--○--○ ひと暴れの後に。 「すまないねえ。怪我はなかったかい」 ワンちゃんの首根っこを捕まえるおばあさんの姿。 「うむ、まあ大したことはない。 次は気をつけてくれさえすれば」 僅かな逡巡の後、おばあさんは言います。 「ところで……お主、戦いについて悩んでいるようだったな」 対するフォークは警戒の表情。じろりと鋭く一瞥される瞳に、おばあさんは静かに首を振ります。 「いやいや、悪気があって 盗み見しようとしたわけじゃない。 たまたま、庭から見える位置で お主が修行をしておったからの……」 「ところで、 お主には魔力があるように見えるの。 今まで魔法を使ったことは?」 意外な一言に、目を瞬かせるフォーク。 「魔力? ……いえ。魔法の習得には 長い月日が必要と聞いているので……」 「さもありなん。そして、 お主らにはその時間もないときた。 そうじゃな……」 よし、と一言。 「この杖を……貸してやろう。 わしからの、せめてもの餞別じゃ」 「そんな! これはご婦人が 時間をかけて作り上げたものでしょう。 わたしごときが……」 「何がわたしごときじゃ。今、お主たち以上に 武具を必要とする者が他におろうか」 両の手の平を向けて断るフォークに、ぐいぐいと杖を押し付けます。 「心配せんでも、他に何本か持っておるよ。 わしの好意を、無下にするつもりかえ?」 そこまで言われてはもはや断ることはできません。 神妙な面持ちで、杖を受け取るフォーク。 「……かたじけない。必ず、役立たせてみせましょう」 これは、大きな変化です。いきなり術を極めることは難しいでしょうが、戦略として大きく幅が広がったことは間違いありません。必ず光明が見えるはず……! [町に戻る](88) 116 **静かにベンチに腰掛けるおばあさん** -- もはや近くに誰もいなくなった庭で、静かに物思いにふけっています。 その表情は悲しそうにも苦しそうにも、かと思えば不思議と懐かしそうにも。なんとも言えぬ色合いを浮かべていました。 きっと、これまでのことを思い返しているのでしょうね。一体どれほどの苦難を乗り越えて来たのでしょう。 気になりますが、それを暴くのはわたしたちの仕事ではありませんね。 すべてはおばあさんの胸のうちに。そして、わたしたちはわたしたちの、向かうべき場所に。 [町に戻る](88) 117 **懐かしきネクストタウン** -- 激しい戦いを勝ち抜いてきたネクストタウンです。 時間帯の問題でしょうか、外には人の姿がないようです。 どなたかの様子を見に行きましょうか? いらっしゃればいいのですが…… [フレッドの様子を見る](114 "f30") [フレッドの様子を見る](112 "!f30") [分岐点に戻る](84) 118 **襲いくる、恐ろしい闇** -- **“ 本気でやらせてもらう……!”** 虚ろな声が、します。それではっと気づきます。いつの間にかナイトメアの姿が見えません。前方には、ぼんやりとした闇、のみ。 一体どこへ…… 戸惑っているうちに、異変に気づきます。闇が、動いているのです! あっと声を上げる間もなく勇者様が飲み込まれ、寸刻後に、悲鳴! 「勇者どの!?」 フォークの叫び。決死の表情で闇の中に飛び込もうとして、 「うわあああ!」 飛び出してきた勇者様と鉢合わせします。 「ご無事ですか!? いや! お怪我を……!?」 見れば、勇者様は右手で左腕を抑えています。指の隙間から滴り落ちる、血……! 「中に、ナイトメアがいる……!」 姿の見えぬ相手との戦いなんてできっこありません。何か。何か秘策はないのでしょうか。二人は周りを見回しました。 「あっ あれは――!」 気づきました。**壁には……ランタンがあります!** 当然、そこは完全な闇にならず、弱くも力強い光が! 勇者様たちは迷いなくそこに飛び込みます。 これはいけないと、周りに控えていた魔物たちが動き出しました。 「ぶっ殺してやるぜ人間どもーー!」 **傍観はやめたのでしょうか……!** このままでは挟み撃ちにされてしまう! 「無礼者がッッッ!」 大音声。勇者様たちだけでなく、魔物たちまで震え上がります。 声の主はもちろんナイトメア。 稲妻のような速度で闇から飛び出し、近づいてきた魔物を、ぶん殴りました……!! ぐええという潰れたような音を出して壁にぶち当たり、気絶する魔物。 何ということでしょう。これには場も凍りつきます。 みな唖然とした表情を浮かべます。 その中で一人。平然とナイトメアは語りだします。 **「ここは我と、そこの人間との戦いの場。 横槍など許さん」** 傲慢……! そしてなんといううぬぼれでしょう。 ですがそのうぬぼれはわたしたちにとって大きなチャンス。 確かにナイトメアは強敵です。ですが、周りの介入がないとなれば……? それにいち早く気づくは、やはり従者フォーク。 駆け出し、ナイトメアの裏側に回ろうとします。挟み撃ちです……! そう、二人の利点を最大限に利用するのです。他の魔物がいるとなれば危なかっしくて一人ずつになるなんてできませんでしたが…… 敵がナイトメア一人ならば! 背後から、放つ矢! それはナイトメアの無防備な背中に吸い込まれ…… 信じられぬような体の屈曲! たったそれだけでかわされてしまいした。 けれど今度は勇者様の斬撃。わずかに反応の遅れたナイトメア。 避けるには能わず、腕で受けます。 やった! 通った! ……いえ、何という……! 軽傷です。 わずかに皮膚を傷つけ血を流したのみ。縄のように筋肉を浮かばせ、刃の通りを防いでいます。 しかし、好機……! この機会を逃してはなりません。 畳み掛けるように勇者様は次なる攻撃の準備をします。 が……足払い! お留守になった足元を狙われました。回避の叶わなかった勇者様は、転倒してしまいました。身体能力が違いすぎる! 立ち上がる間もなく振り下ろされる戦斧。激しい摩擦音を残し、地面に突き刺さり―― **「……!」** 違和感。 それは、誰にとって? ナイトメアの視界の隅、フォークの手には見慣れぬものが。今まで一度も取り出すことのなかった、杖。 「謀ったなッ!?」 幻影! 倒れた勇者様が消えるのと同時に、反対の方向より剣を突き立てる、本物の勇者様。分厚い鎧でも守りきれぬ首筋に、刃が突き刺さります! 戦斧は地面に突き刺さり、ナイトメアに避ける術はありません。それでも勇者様の腕を押し潰さんがごとく握りしめ、引き抜こうとします。勇者様も、歯を食いしばりそれに耐えます。 「うおおおおおおおお!!」 響く、二人分の怒号。そしてついに、剣は、決定的な箇所に届き、吹き上がる、黒い、血潮。握りしめた手は徐々に力を失い、勇者様の腕を滑り落ちて行きました。 ――ただの幻術なら、通らなかったでしょう。幾重にも好機が重なったおかげ。些細な運命の変化が、ついに強敵を倒すに至ったのです。 [次へ](119) 119 **うお、う……うおおおおおおおおおおお!!** -- 最初に鬨の声を上げたのは、フォーク。 「倒したぞ! 敵の幹部ナイトメアを! 我らが勇者様が!」 ざわめく周りの魔物たち。 「ふざ……ふざけるな! お前らを倒せば終わりだ!」 「楽に死ねると思うな! 腸を出したまま町中を引きずり回してやる!」 飛びかかってくる魔物たち。 勇者様は、はぁはぁと、剣に持たれて荒い息を吐いています。ああ、流石に消耗が激しいのでしょうか。応戦できそうにありません……! フォークは矢をつがえ、徹底抗戦の構えです。 そのときです。 フッと、音が消えたような気がしました。 [次へ](120) 120 **「君たちには勝てない」** -- その声は、2階から響くようでした。 その広間、暗くなっていたので気づきませんでしたが、吹き抜け構造になっており、柵つきの手すりに誰かがいるようです。 「その声、ケイオース様か!? だけどよう、ナイトメア様がやられちまったんだぞ! 黙ってみてられるかよ!」 魔物の一人がぼやきます。それを聞いて、勇者様とフォークに緊張が走ります。 ケイオース……! ついに……! 「うおおおおもう我慢出来ない!」 しびれを切らした魔物の一体が飛び出して来ました! 「だから、君たちには勝てない」 そんな声が聞こえたかと思うと。 ……? 魔物が……いません。 先程、勇者様に向かって突撃してきた魔物は……? 姿を忽然と消してしまいました。あまりの異様な出来事に場が凍りつきます。 「いたずらに命を散らすな。 君たちは周りで見ているといい」 そう言うと、2階の人影が、手すりを飛び越えてヒュッと降りてきます。なかなかの身体能力……! ――いえ、よく見れば、大きな傘のようなもので落下の衝撃を殺したようです。 「な、何をケイオース様、もしや仲間を……!?」 魔物はざわめきたてます。 「慌てるな。場所を移動してもらっただけだよ。 今頃、ベッドでお休みだろうさ」 魔物たちを一瞥し、 「あのナイトメアですら歯が立たない相手だぞ。 君たちごときが相手になると、なぜ思った?」 明かりに照らされ、徐々に姿が顕になるケイオース。 その姿は……意外にも小柄。短めに刈り揃えた頭髪、短い耳。体に体毛の類は見られず。麻の簡素な服をまとっています。 [次へ](121) 121 **「その姿……人だと……?」** -- フォークが疑問を投じます。疑問ももっともです。ケイオースの姿はどう見ても平凡な男性の若者の姿にしか見えません。 「人と魔族を隔てる決定的な違いは何なんだろうね。 フフッ 容姿の違いに、どれほどの意味があることか」 謎めくセリフを残しつつ、落下の衝撃でボロボロになった傘を放り投げます。 そして白目をむくナイトメアにそっと近づきます。 「ケイオース様……申し訳……ありま……せん、 御身の大……志を…………」 何ということでしょう。ナイトメアにはまだ意識が……! 「いいよ。やはり君にも荷が重い相手だったか。 敵は無慈悲な繰り者。君という存在をズタズタにしたんだ。 ゆっくりと……お休み」 優しいとも言える声色で語りかけるケイオース。 しかし、その眼差しはこちらを捉えています。なんでしょう。落ち着きません。これは憎悪……? 名状しがたい感情がこちらを襲います。 「さあ、さっさとカタをつけようか? 来たまえよ、勇者くん」 [次へ](122) 122 **対面でにらみ合う、二人** -- 高まる緊張、それが弾けた瞬間。 勇者様は声をあげて突撃します。勇敢なお姿。当初、すぐにお腹を壊してうずくまっていた頃とは比べ物になりません。 「それで、どうやって僕を倒すつもりかな?」 不敵なケイオースのセリフなどに耳を貸さず、勇者様は武器を振り上げます。 振り上げた、銀の輝き、 え……? 目を疑います。それは、お玉、でした。 勇者様はお玉を振り上げ、ケイオースに殴りつけたのでした―― そんなものでは当然、痛痒も与えられず、腕で受け止められた後、逆の拳で顔面をしたたかに打ち据えられます。 あまりのことに受け身も取れずフラフラと視界をさまよわせます。 そうして見つけました。剣。ご自身の武器をありえない位置に。それはフォークのもとに。フォークが携えていたのでした……! そんな、まさか! 勇者様は目を白黒させます。しかしなぜかフォークも全く同じ表情。 「な、何をしているのですか勇者様!? ご自身でわたしにお預けなさってはないですか! なぜそれで突撃されたのです!?」 どうしたというのですフォーク。言っていることが支離滅裂です。 後方で、薄く微笑むケイオース。 もしや……幻術の類!? フォークは欺かれているのでしょうか? 「くっ こうしてはいられぬ……!」 フォークも慌てて武器を構えようとして、弓をハープのように優しく爪弾くケイオース。 「いい弓だ。よくしなり、剛力も強い。 さすが、エルフの道具は一級品だね」 「わたしの弓――! どういうことだなぜ貴様が!?」 「何故も何も、君が僕に渡したんじゃないか。 だろう? 勇者くん」 ためらいがちにうなずく勇者様。 何が……理解が追いつきません。一体何が起きているのか。 「では、さよならだ。 哀れな操り人形くん」 フォークの弓を引き絞り、放たれた矢は、勇者様の胸に―― ああ…… 勝てるのでしょうか。こんな意味のわからない理不尽に。 [分岐点に戻る](125 "f31") [分岐点に戻る](123 "!f31") 123 **光輝く白の世界――運命の分岐点** -- ![光輝く空間](image02.jpg) 最終決戦です。今までのすべてを集結させましょう。 何よりも、ケイオースの能力が不気味すぎます。幻術? 物質転移? それがわからないまま戦うのは、あまりにも危険に思います。 ですが大丈夫。勇者様には、わたしたちがいます。敵の正体を掴むまで、何度だってやり直せるのだから。 [次へ](124) 124 **“ 本当にそうかな?”** -- [次へ](125) 125 **光輝く白の世界――運命の分岐点** -- ![光輝く空間](image02.jpg) 最終決戦です。今までのすべてを集結させましょう。 何よりも、ケイオースの能力が不気味すぎます。幻術? 物質転移? それがわからないまま戦うのは、あまりにも危険に思います。 ですが大丈夫。勇者様には、わたしたちがいます。敵の正体を掴むまで、何度だってやり直せるのだから。 [戻り、ケイオースと戦う](122 "!f23") [戻り、ケイオースと戦う](127 "f23") [ケイオースの館に行く](126 "!f23") 126 **ナイトメアも勇者様も来る前の屋敷** -- 下っ端の魔物たちが広間の準備をしています。 よしよし、頭を強く打った例の魔物は、ランタンを準備していますね。準備OKです。 わたしたちは、2階の吹き抜けの様子を見てみましょう。ケイオースはいつからそこにいたのでしょうか? そこにケイオースはいませんでしたが、やはり準備をする魔物の姿が見えました。手すりを雑巾で拭いているようです。 ひらめきました。 [魔物に干渉する](87) [分岐点に戻る](125) 127 **「君たちには勝てない」** -- **その声は、広間の奥から響きました。** カツカツと靴音をたてて、暗がりから現れたのはケイオース。 「お前は……!?」 フォークの鋭い詰問。 「魔の首魁、ケイオース。 我が屋敷にようこそ」 軽いお辞儀。いっそ優雅ですらあります。 倒すべき相手の登場に、勇者様とフォークはぎりりと奥歯を噛み締めます。 ……? 違和感。 そして、その直後です。頭上から何かが崩れるような大きい音がしたかと思うと、大量の木片が降ってきました……! 残骸は大きな音を立てて地面にぶつかります。 2階の吹き抜け部分の柵の一部。それが落ちてきたようです。 いささか派手すぎる開戦の鐘の音を合図に、勇者様は飛び出します。ケイオースとぶつかり、鍔迫り合い……! おかしくないですか。**なぜケイオースが手すりから落下していないのですか……!** ……一旦疑問は忘れましょう。 右から、左から、フェイントを加えつつ、剣を振るう勇者様。ケイオースも防戦しますが、その動きに精彩はなく、徐々に押されているように見えます。 いける……! 耳障りな、高い摩擦音。空を舞う武器。 勇者様が相手の武器を弾き飛ばしたのです……! 「さようなら、勇者くん」 鮮血、赤。 血を吐いたのは、勇者様でした。 「勇者どのーーーー!?」 背中まで突き抜ける、鈍く光る刃。 なぜ、ケイオースの武器は吹き飛んだはず……近く、地面に転がる武器が見えます。それは、見慣れた、勇者様の剣―― 何が、なんだか…… 戻るしか無い…………戻るしかありません……! [分岐点に戻る](139 "!f27") [分岐点に戻る](129 "f27") 128 **お前が真実だと思っているものは 本当に真実なのか** -- [次へ](129) 129 **光輝く白の世界――運命の分岐点** -- ![光輝く空間](image02.jpg) 最終決戦です。今までのすべてを集結させましょう。 何よりも、ケイオースの能力が不気味すぎます。幻術? 物質転移? それがわからないまま戦うのは、あまりにも危険に思います。 ですが大丈夫。勇者様には、わたしたちがいます。敵の正体を掴むまで、何度だってやり直せるのだから。 ………… ええ、ええ、わかっています……! 明らかにおかしいことが起きていること。ケイオースの術。この空間に声が聞こえること。一体何が。わたしにもわかりません……! ケイオース討伐は目前なのです。何が起きていたとしても、あらゆる手を尽くして勝たなくてはなりません。 [ケイオースと戦う](127 "f27&!(f24&f25&f26)") [ケイオースと戦う](140 "f24&f25&f26") [王宮へ](130 "!f24") [ファーストタウンへ](131 "!f25") [ネクストタウンへ](132 "!f26") 130 **やや慌ただしさを感じさせる王宮** -- 今度こそ、リオナ姫に神託を聞いてもらうようお願いするしかありません。 ケイオースの正体を少しでも掴みましょう。 城の中は何やら色めき立っているようです。 ナイトメア陥落の知らせが早くも届いたのでしょうか? 姫は自室のようです。今度は漫画を読んでいようがなんだろうが、聞き入れてもらわなくてはなりませんよ……! [姫の様子を見る](133) [分岐点に戻る](129) 131 **襲撃の跡がわずかに残る、町並み** -- ファーストタウンに来ました。 前回の襲撃後でしょうか? 町並みを見渡すと、やや崩れた家や、焼け跡の残る家などが見られます。しかし、人々の表情はそれほど暗くありません。瓦礫をどかしたり、崩れた家を木材で補強したりしています。 これをあっちに運べだの、そこは崩れかけで危ねえぞだの、声をかけ合いつつにぎやかに復興作業が行われています。 大変な時でも絶望に囚われてさえいなければ、希望はある。そう信じさせてくれますね…… すぐ近くには、吟遊詩人や、町案内のおじさんがいます。 [おじさんの様子を見る](136) [分岐点に戻る](129) 132 **元気に走り回るワンちゃんとおばあさん** -- ネクストタウンに来ました。 目についたのは、広間のベンチに腰掛けるメディアおばあさんと、その周りを元気に駆け回るワンちゃんです。 憎まれ口を叩きつつも、最後には勇者様たちに力を貸してくれたおばあさま。彼女の培ってきた叡智で、この状況を突破できないでしょうか…… 可能性があるならば、何でも試してみなくては。 [干渉する](138) [分岐点に戻る](129) 133 **一心不乱に机で何かをしている姫** -- 手紙か日記でしょうか。机に向かい、なにか書き物をしているようです。漫画こそ読んでいませんが、これでは水晶に気づいてくれませんね。 何で気を引くことはできないでしょうか。 [メイドを探しに行く](134) [考え直す](130) 134 **窓拭きをしているメイド** -- 以前姫様の気を引くことができたメイドさんなら、今回もなんとかなるはずです。 姫様の部屋を出て、あたりを探しました。 客間や食堂、倉庫などをめぐり……いました。 赤い絨毯のひかれた階段。その踊り場で、メイドさんが雑巾を手に。窓拭きをしているようです。 [干渉する](135) [考え直す](133) 135 **鼻歌を歌いつつ掃除に勤しむ** -- 「お掃除せっせせ、フフンフフ~」 慣れた手付きで拭き掃除をしています。決して楽しい作業ではないでしょうに、そんな中にも楽しみを見つける姿に感心せずにはいられませんね。 「さて、こんなもんかしら。次は……」 そのとき、何かを思い出したように。顔をあげます。 「あっ、そう言えば。お客様から頂いた 菓子折りがあるんでした。姫様に……あっっ」 ズルリ あっ!! 不安定な足場で気が散ったのいけなかったのでしょうか、大きな音を立てメイドさんは階段から落下してしまいした。 どん、がたっ……ぐしゃっ メイドさんは動きません……あ、頭から……ち、血 なんで、そんな……? か、干渉したから……? 戻らなくては――――戻らなくては戻らなくては……! [分岐点に戻る](129) 136 **おなじみの案内おじさん** -- 町の入り口には、いつものおじさんがいました。 今日も、いろいろな人が町を訪れます。そんな中、全員に声掛けするのを己の義務としているようです。 笑顔で返してくれる人、びっくりして避ける人、うるさい、と怒鳴る人。いろんな人がいますが、めげずに頑張っているようです。 [干渉する](137) [考え直す](131) 137 **「ようこそ!! ファーストタウンへ!」** -- おじさんのサービス精神をむくむくと刺激してみます。 左右に首を振り、手を必要とする人がいないか探しているようです。 そのとき、4人組の旅人が町の入口にちょうど到来しました。そこにスススと寄っていき、挨拶です。 「ようこそ! ファーストタウンへ!」 おじさんの元気な挨拶のかいもなく、旅人たちは無言です。関わりを持ちたくないのでしょうか。ローブを目深にかぶり、顔も隠します。 「お荷物持ちますよ! 宿ですか! 食事ですか!」 おじさんは陽気に語りかけながら旅人の手荷物を持とうとします。 「触るんじゃない!」 はねのけられ、尻もちをついてしまいます。目を白黒。そりゃあいけません。やりすぎですよおじさま。荷物を知らない人に預けたくない方もいるでしょう―― その時。その脇を結構なスピードで駆け抜けていった荷馬車。その荒れ狂う馬たちは突然転がり出た人影に対応できず――そのまま、踏み潰してしまいました。 ヒヒヒンと高いいななき。御者が飛び降り様子を見に来ますが、そこには、もう、ぐったりとしたおじさんの、姿―― な、ぜ……事故……? 受け入れることはできません。戻りましょう…… [分岐点に戻る](129) 138 **いつもの元気さへ更におまけをエッセンス** -- ワンちゃんは踊り狂い、町の入口の方に駆けて行ってしまいました。 またどなたかのご訪問でしょうか? いえ……違います! 門からふらりと現れたのは、リザード! はぐれなのか一体しかいませんが、たまたま通りには人の姿はなく。誰も知らせに行く人がいません。 ワンちゃんは恐怖のためか、足をピーンと伸ばして固まってしまいました。ああ、前回はあんなにも勇敢に戦っていたのに。いっときの爆発力。火事場の馬鹿力を何度も期待するのは酷というものでしょう…… リザードは固まるワンちゃんをむんずとつかみ持ち上げます。おばあさんはそれを見て、慌てて飛び出しました。 「フレッドのおやじを……! クッそんな時間もありゃあしない、ね!」 おばあさんは立ち上がり、おぼつかない足取りで町の入り口に向かいます。 大丈夫でしょうか。魔法があるとはいえ、お一人で……! 「ジュディアをお放し、薄汚い魔物!」 おばあさんは近くにあった石ころを拾い、リザードに投げつけます。リザードはのっぺりした瞳をゆっくりと向け、掴んでいたワンちゃんを投げ捨てます。 そして剣を擦り合わせながらおばあさんの方に歩み寄ります。危ない……! おばあさんは杖を取り出し、ハッとした表情。そして、徐々に。 「そういやあのエルフにやったんだったね。最後の一本を」 じゃあ仕方ない、と杖を胸の前で構えます。 一本はどういうことですかおばあさん……!? リザードに向けて振りおろされた杖は虚しく空を切り、簡単な動きでかわされました。反撃の一撃。ぞんざいに突き出される、サーベル。 背中から飛び出る、異物。 そんな。おばあさん。たくさん杖があるって言ってたじゃないですか…… 魔法が使えなくなるとわかっていて、どうして。 そうさせたのは、わたしたち……? [分岐点に戻る](129) 139 **光輝く白の世界――運命の分岐点** -- ![光輝く空間](image02.jpg) 最終決戦です。今までのすべてを集結させましょう。 何よりも、ケイオースの能力が不気味すぎます。幻術? 物質転移? それがわからないまま戦うのは、あまりにも危険に思います。 ですが大丈夫。勇者様には、わたしたちがいます。敵の正体を掴むまで、何度だってやり直せるのだから。 [次へ](128) 140 **なんの打つ手もない……!** -- なんの策もないのに戻ってきてしまいました。 ここはケイオースの館。視界の隅にはすでに下した、ナイトメアの骸。 そして対面でにらみ合う勇者様とケイオース。 一体どうしたら…… 何をしても悪い方向にしかいきません! もしかしてこれもケイオースの能力なのでしょうか? ケイオースは勇者様を見て語ります。 「不思議かい? でも僕は何もしていない」 やはり――間違いありません。 勇者様はなんのことかわからず怪訝な顔。 ケイオースは勇者様を見つめます。正確には、その向こう側。勇者様は途上にいるに、過ぎない。 彼は、我々に、目を向けていたのでした―― ――わたしたち精霊を、認識している―― 「君たちが好き勝手に運命を操るから……世界はむちゃくちゃだ。 栄光を受け取るべき存在が罰を受け、 死ななくていい存在が命を散らす……」 薄ら笑いを一転。射殺すような、眼差し。 「高みから……いい気なもんだな?」 明確な憎悪。気圧されてしまいそう…… しかしその内容は言いがかりです。精霊に運命を捻じ曲げるような力はありません。できるのは、ほんの僅か。僅かな干渉で、変化をもたらすのみ。 「考えたことはないのかな? お気に入りの勇者くんがここまで来るのに、 何度力を使った? それにより周りの人はどうなった?」 メイドさんが、メディアおばあさんの事が頭をよぎります。 あれらはわたしたちが引き起こしたこと……? 「一体何の話をしている!? 勇者どのの愚弄は許さんぞ!」 しびれを切らしたフォークが叫びます。引き絞った弓から放たれる矢。 勇者様とその背後のわたしたちに気を取られていたケイオースは、反応が僅かに遅れます。矢は彼の胸に突き刺さりました! 赤い花が咲き、 ……いえ、無傷です!? たしかに刺さったはず……! 「僕を殺すことはできない。ピンチに意味が無いからな。 君と同様にね」 まさか…………まさかまさかまさか……! やつにも、ケイオースにもいるのですか!? その背後に、我々と同質の……!? 「だからこそ、君を殺すことができないことも わかってしまうのだけど。 じゃあ、その手を封じさせてもらわないとね……!」 何かをポケットから取り出しました。光る、玉。 それを、天井に放り投げ―― そのほのかな光が、壁に大きく備え付けられたステンドグラスを照らし出しました。 その瞬間、丸い玉は爆発し――魔法でも込められていたのでしょうか――ステンドグラスを粉々に打ち砕きます。大きな音を立てて降り注ぐ、大小様々なガラス―― ガラス群は光る暴力となってケイオースに、勇者様に、フォークに、無差別に降り注ぎます。 「ぐうぅぐッ……!」 体を丸め損傷を最小限にしようとするフォーク。交差させた腕を、赤い筋が幾重にも走ります。 ケイオースは無防備に自然体で立ったまま微動だにしません。そしてその間をすり抜けていく光の粒。一切の損傷を受けません。 「がぁぐ――」 潰れたような悲鳴をあげ、勇者様の胸に突き刺さる輝きの破片。そんな! 勇者様……! 勇者様が最後の、わたしたちの希望なのです。 戻らなくては……! [分岐点に戻る](141) 141 **光輝く白の世界――運命の分岐点** -- ![光輝く空間](image02.jpg) 打つ手が……あなたには思いつきますか……? 今までの出来事を統合すれば、自ずと見えてくるもの。 敵が、わたしたちと同様に、運命に変化をもたらせる存在ならば。時をさかのぼり、やり直しを敢行できる存在ならば。 倒すことなど、できるのでしょうか……? 逡巡、それすらも許されること無く。その時。何かが聞こえました。この何もない空間に音……? **“ そこにいるのか。突き止めたぞ”** !!! 前方の空間に、巨大な一筋の線が走ったかと思うと。 隙間をこじ開けて、現れたもの。大きな影。と、そこから生える巨大な爪。なにもないはずのこの空間に、得体のしれない怪物が具現し始めました―― **“ 貴様らが関与していることはわかっていた。 貴様らを始末すれば、全ては終わりだ。 勇者は復活せず。 運命を捻じ曲げられるものはもういない”** まさかまさかまさか……あなたは! **“ 我はケイオース”** **“ そしてさよならだ。 この世界に不要な、精霊たち”** 大きな爪が、薙ぎ払われました。 それは空間を切り裂き、後には何も――残らない。 **“ この爪は、存在を薙ぐ。 貴様らとて無事ではいられない”** **“ 高みから運命をいじっていた身が…… 今や凡百の存在と同じだ。 死が間近にある気分はどうだ……?”** 嫌だ嫌だ やめてやめて……! こんなところ、抜け出さなくては! 行かなくては、勇者様のものとに……! [次へ](142) 142 **気づけば、現実世界。館で対面する勇者様たち** -- はぁはぁ…… お見苦しい姿を見せました。恐怖のあまり、戻ってきてしまいました…… 実際に戦っていた勇者様は、きっとこんな恐怖を何度も経験してきたのでしょうね……。 ケイオースはこちらの様子に気づいたかのように眉根をあげます。語りだしました。 「おや? 戻ってきたのかな?」 「正しい選択だよ。こちらの側では、僕にも 精霊を感じることも、 手出しをすることもできないからね」 しかしケイオースは不敵な表情を崩すことなく。 「でも、そうすれば勇者くんに勝ち目はなく、 何度も繰り返すことになるだろうね」 「お前たちが繰り返せば繰り返すほど、 僕はお前たちの位置を特定していくぞ」 な、何ということでしょう…… 八方塞がり。あの大爪。いまだ身の毛がよだつような、恐ろしい感覚が残っています。あんなものを食らっては、本当にわたしたちも消滅してしまうかもしれません。 繰り返しが封じられてしまったとしたら、どうやってケイオースを倒せばいいのか―― その時、今まで黙っていた勇者様が、ぽつりとこぼしました。 「ケイオース……あなたは、 僕の知らないことをたくさん知っている…… 一体何者なの?」 やや意外そうに、ケイオース。勇者様に視線を向けます。 「興味があるのかな?」 「いけません勇者様! こんな魔物の言うことに、耳を傾けてはなりません!」 フォークが必死に制止します。 「操り人形でいることに不満になったのかな。 君はここで死ぬのに、 そんなことを聞いてどうするのかな」 「死ぬのはお前だ! 悪の頭領め!」 フォークの啖呵にも涼しい顔。 「相手に理由を求めること―― それはある種怠惰でもある。 自分の中に、確かな行動原理がないから、 そうやって相手に求めてしまうんだ」 勇者様はぽつりぽつりと。 「難しい話はわからないけど…… 僕には引っかかってることがあるんだ」 ちらりとフォークを一瞥する勇者様。 「フォークはさ。不思議に思わないの? 僕たちがここまでこれたこと」 「何を言いますか勇者どの。 我らの努力が、旅の途中で出会った人々の支えが、 我らをここまで導いたのではありませんか。 敵を眼前に、弱気になってはいけませんぞ」 ふるふると首を左右に振り、 「そうじゃなくって。 僕は頑張ってきたよ。それは確かにそう。 けど、これまでの道のりは そんな簡単なものじゃなかったはず」 「僕は正直……大したこと無いよ。 技も力も、フレッドさんみたいな戦士に及ばない。 魔法も使えない。 フォークみたいに機転もきかない。 僕にできたのなら、他の人にできなかったはずがない」 「それでも他の人が誰も成し遂げられなかったのは…… ここまでの道のりが予想以上に 厳しいものだったんだろうって思うんだ。 それこそ僕に、成し遂げられるはずがないような」 フォークはこんな勇者様の告白に、苦虫を噛み潰したような顔。ともに苦難を乗り越えて来た身としては、この期に及んで弱気など聞きたくはないのでしょう。 一方のケイオースはむしろ静かな表情。隙だらけの勇者様に手を出さず、次の言葉を促すように待ち続けます。 「つまり、何が言いたいのかな」 一呼吸置き、勇者様。 「僕は、運が良すぎる」 [次へ](143) 143 **突如、飛び込んできたケイオース** -- ぎりぎりのところで、勇者様は武器を構えます。なんとか、敵の攻撃が届く前に防ぐことができました。 息がかかる距離で、ケイオースの詰問。 「大変なうぬぼれだ。くじ引きでは必ず一等。 賭け事では負けなし、かな?」 ぎりぎりと武器を押し込んでいきます。 「それでは聞こう。君に幸運が訪れました。 めでたし。すると、どうなる?」 勇者様は迷いなく。 「誰かが、不幸を、被る」 強く武器を叩きつけ、距離を取る二人。 「そう、それが入り口だ……! 気づいたね。君は己の人生を、操られている!」 高らかにケイオースが声を張り上げます。 「どうだい操り手諸君! 頼みの綱の勇者くんは真実に気づいたよ。 かつての僕と同じようにね」 それは一体、 「自分の人生が、誰かの意図のもとに 操られていると気づいた時。 何度も死んでは、やり直しを させられていると気づいた時」 「僕は己を呪ったよ。 一体この繰り返しは何度続くのだろうとね。 それで、高みの見物を決める精霊を……消滅させた」 ……!? まさか、あなたは、かつての……? 「そして後輩も同じ道をたどるというわけだ。 入門おめでとう。先輩として、祝福するよ」 フォークは何がなんだかわかりません。それでも不穏な気配を感じ、 「何を……! 勇者どのが、お前と同じだと? 馬鹿も休み休み言え!」 馬鹿にするようにケイオース。 「外野は黙っててくれるかな。これは勇者くんと その背後のものの問題だ」 「自分で決めたことが否定され。 何かよくわからない奴の気が済む選択になるまで 好きなだけやり直され。 しかも、それがされたことを気付くすべもない」 かっと目を見開き。 「自分が、何を好きで、なんの信念を持っているか! それは、本当に自分の意志で構築したのか!? そんなもの、何も信じられなくなるぞ……!」 「自分の運命を操る不届き者も。 君をここに送り出した人間どもも。 みな、滅ぶべき敵どもだ。 だから僕は魔物と結託した。 全部滅ぼしてやる……!」 ぽんと勇者様の肩に優しく手を置き。 「さあ勇者くん。自分を取り戻せ。 先輩として、やり方を教えてあげる」 [次へ](144) 144 **腕をはねのけ、決然とにらみつける勇者様** -- ケイオースははねのけられた拍子に武器を取り落し、カンカンカンと高い音が響きます。 「……どういうつもりかな?」 手をさすりながら、ケイオース。 たどたどしくも、たしかに。一言ずつ。 「僕の背後に、何がいても。僕は役目を果たすよ」 「なぜ? それが自分の望みってわけでもあるまい。 君に自分の意志はないのかな」 「どこまでが自分の意志かはわからない。 もしかしたらそう思わせられてるのかも。 けど――」 思い返す。一つ一つ。 「ネクストタウンのみんな…… そして、いろんな町で、 魔物に苦しめられてる人々の姿を見てきたから…… なんとかしてあげたい。 僕にできることがあるなら、 戦いたい。そう思うんだ」 そこで勇者様は一旦言葉を区切り、こう続けました。 「力を貸してくれない……?」 振り向きこそしませんでしたが、それは明確な問いかけ。 こちらに、何がいるか気づいているように。 ああ、ああ…… あなたが勇者様でよかった。今ならはっきり言える。タロ様は、間違いなんかじゃない。器がどうだとか、関係ない。最後の最後まで、導くべき正しい心を持った存在……! ケイオースは薄く瞑目し、 「……その決断は、いずれ後悔するよ。 そして、その決断すら、自分のものじゃないんだ。 正直、同情する――」 [次へ](145) 145 **再び激突** -- いつの間にか取り落したはずの武器を持って、ケイオースが襲いかかって来ていました! それを真っ向から受ける勇者様。 ……? いえ、勇者様が向かっているのはフォーク。なぜか同士討ちをさせられています! 慌てて離れようとして、しかしもう遅い。勇者様の背後に回ったケイオースが刃を出さんとして、 ああ、突き刺さる、 戻らなくては……! 「大丈夫……!」 声が、聞こえた気がしました―― ケイオースの刃は、空を突き刺します。 「!」 僅かな硬直時間。その間に、走る矢。慌てて弾きます。前方にはしっかり弓を構えたフォーク。いつの間に……! そして勇者様が見当たりません。 影。自分に落ちる影に気づいたときには、頭上から勇者様の振りかぶった攻撃。転がって避けるケイオース。 移動する動きが見えましたか!? いつの間に勇者様はあそこに? あなたが干渉したのですか? 「なんとなく、見えてきた気がする……」 荒い息を吐きながら、勇者様。 ケイオースは転がったまま、ギラギラと目を輝かせて笑います。 「くくく、くくくくく……! 忌々しいね……そして楽しいね! どちらの運命が答えを導くか、見せてくれよ……!」 [次へ](146) 146 **ごろごろと転がるケイオース** -- ごろごろと転がっていきます。起き上がって奇襲をかけるつもりでしょうが、なかなか起き上がりません。もう壁の方まで行ってしまいましたが―― 違う! 転がっているのは、気絶した魔物でした。ではケイオースはどこへ…… そんな! フォークの首筋にナイフを突きつけています! 「まずは君が邪魔だ。さよなら」 もがくフォークをためらいもせず、ナイフが突き立てられてしまう……! 「む……」 いいえ。フォークに突き立てられたのはマッチ棒。貫通することなどできず、皮膚を乱暴にこすっただけにとどまりました。 それでも痛かったのでしょう、飛び退いた後、首筋に痛そうに触れるフォーク。 そして、膝をつく、勇者様、ケイオース。 「はあ、はあ……干渉者どうしで戦うのは僕も初めてだよ…… これはなんとも……神経を使うね……」 間違いありません。ケイオースだけでなく。勇者様も、繰り返しを行っている……! わたしやあなたの力を借りず、己の力だけで運命の分岐点に出入りしている! 決定的な致命傷を負わない分岐点を見つけるために、何度も、何度も繰り返しているのでしょう……現実時間としては一瞬ですが、ふたりともものすごい疲労です。 「けど、干渉者の一年生に負ける気は、さらさら無いよ……!」 ケイオースは武器を放り投げます。そして勇者様に掴みかかると、もみくちゃになりながら倒れ込みます。 そしてパラパラと音がしたかと思うと、いけない……! その場所は…… 頭上。ちょうど、吹き抜けの手すりが見える箇所。そこで勇者様たちはもみ合っています。次の瞬間、吹き抜けは崩壊し―――ドシンと大きな音を立てて瓦礫に埋もれました……ケイオースと勇者様はその下敷きに…… 「勇者どのーーー!」 叫ぶフォークの後ろから、ケイオースが現れ、首筋を武器で殴打します。 バタリと倒れるフォーク。 現れたのはケイオースのみ。勇者様は? ……現れません。 勇者様は!? 勇者様は……!? 四の五の言っていられません! 今度こそ戻らなくては……! [次へ](147) 147 **光輝く白の世界――運命の分岐点** -- ![光輝く空間](image02.jpg) どうやら勇者様はケイオースと同様、己自身で時をさかのぼるすべを見つけたようです。とても頼もしい能力。しかし、ケイオースと比べ、年季が違いすぎます。あと一歩でやられてしまう。 そしてやはり現れました。 **“ 居場所を特定したぞ……! もう逃さぬ……!”** 闇より現れる異形の化け物。今度は爪だけでなく、更に隙間を大きく広げ、ギラギラと赤く輝く瞳が現れました。 早く戻らなくては! やつの攻撃を食らっては、あなたもわたしも無事ではすみません……! [戻り、ケイオースと戦う](148) 148 **光輝く白の世界――運命の分岐点** -- ![光輝く空間](image02.jpg) ! ……!? 同じ場所! 戻れない……! そこは相変わらず見慣れた空間。そして異形の化け物。 **“ 逃さないと……言ったはずだ……!”** そしてついに全容を現す怪物。大きく開かれた口からは、わしゃわしゃと触手のようなものがうごめいています。 ああ、どうしようもない……! 振りかぶられた大爪がこの空間を、左から右まで上から下まで切り裂き――― [――――](162) 149 **光輝く白の世界――運命の分岐点** -- ![光輝く空間](image02.jpg) ……! よかった……! 意識を取り戻されましたか……うう、ぐすっ、も、もうだめかと…… ギリギリのところで、あなたという存在が消えてしまう、それを阻止することができました。 彼の――おかげです。 そこにいたのは、ちょうど人ほどの大きさの、まばゆいばかりの光。 「無事……? じゃあ、もう大丈夫だね。 あとは、僕が戦う」 ああ、ああ……その声は…… ここで聞けるとは思いませんでした。 なぜならここは、彼のための分岐点なのだから。彼のために、何度も繰り返し、運命を変えてきたのです。 その分岐点に、ご本人がいらっしゃるなんて、フフ、なんだか変じゃありませんか。 「ケイオースがいて、 僕がいちゃおかしいってことはないでしょ」 「こうして、話すのは初めてだね。 今までずっと助けてくれたんですよね……ありがとう」 それは、それは。勇者様でした。 **“ 最後まで歯向かうか……! 愚か者が……! 自分が操り人形と自覚するのが、そんなに怖いか……!”** 「ケイオース、君の時の事は僕にはわからないけど…… 僕は、そんなに、自分が操られたって思えないんだ。 それすらも、そう思わされてるのかも、だけど」 そうです。 あなたは説明します。精霊にそこまでの力はありません。勇者様自身に干渉するなんてできない。できるのは、周りの人に干渉して、ほんの少しだけ、運命を変えることだけ。 だから、ネクストタウンを救おうとしたのも。魔物に苦しめられる人々を解放しようとしてここまで来たのも。紛れもなく、勇者様、あなたの意思なのです。 **“ 戯言……! 証明のしようがない甘言よ……! いくらでも、己に都合のいい嘘を吐いているがいい!”** 「ケイオース、あなたにも見守っていた守護者が いたんだよね。それは……?」 **“ そんなもの、この分岐点を認識できた時点で、 この手で、消滅させたわ……!”** 「信じ切ることができなかったんだね…… だから」 こちらを振り向くような、仕草。 「こちらには、僕と、あなたがいる。 勝機となるのは、そこなんじゃないでしょうか」 「手伝ってくれませんか」 ……! 言われてしまいましたね。 そしたら、精霊であるわたしたちが言う言葉は決まっています。 [あなたの力を貸してくれませんか](150) 150 **空間を裂く大爪の薙ぎ払い** -- ケイオースは待ってはくれません。先程あなたを消し飛ばしかけた、恐ろしい爪の斬撃。 それを勇者様は輝く武器で迎え撃ちます。 接触、火花……! 目を開いていられないような火花を撒き散らし、ぶつかり合います。 受け止めた……! 空間を裂くケイオースの攻撃を、勇者様はしのぎました。 **“ なんだそれは……!”** 「僕が、考えた武器。 みんなを守れるような」 **“ 何でもありか……! ハッ この空間ならばおかしくもあるまい。 ならば意志力のぶつかり合いというわけだ。 それで何だ、守る? そんなあやふやなもので、 明確な、この憎悪を打ち負かせはしない……!”** さあ、ここが正念場です。「「あなた」」の干渉をお願いします。 [羽を生やす](151 "!f28") [盾を作る](152 "!f29") [ケイオースに挑む](153 "f28&f29") 151 **勇者様の背に、輝く巨大な羽** -- 勇者様の体を十分に包み込めるほど、大きな大きな翼。バサリと大きく羽ばたかせます。輝く星々を飛び越え、ケイオースに肉薄します。 「ケイオース、君を止める……!」 **“ やれるものならな! 八つ裂きにして! 存在を! 消し去ってやる……!”** [次へ](150) 152 **勇者様を守る、大きく、頼りがいのある盾** -- 勇者様は左手を掲げます。流線型を描いた光の筋。それが集まり、半透明の盾を構築しました。 **“ 消えよ……!”** また、空間を裂く大爪が薙ぎ払われます! 勇者様は盾を差し向け防ぎます。 凄まじい音。こちらから感じられるほどの、衝撃。 ですが、守りきりました……! これならば、守りつつも、逆の手で攻撃ができます! [次へ](150) 153 **ケイオースに向け、飛び立つ勇者様** -- バサリと羽ばたかせ、光る海原の中を駆け抜けます。そんな勇者様に、細く鋭く迫るもの。 危ない! 闇の槍です。ケイオースの大きな口がすぼめられ、フシュフシュと連続で吐き出されます。視認性が悪く、剣で迎え撃つのは難しそうです。けれど勇者様には盾があります。身を盾の後ろに小さく隠し、弾丸のように飛び込みます。 幾重にも射出される槍を盾で弾き飛ばしながら、敵に接近し、ついに眼前。 輝く剣でその顔を薙ぎ払います。 顔をしかめるケイオース。効いているのでしょうか……!? 敵も黙ってはいません。 左方からのケイオースの大薙ぎの一撃。盾で受け止めます。しかし、それで終わらず、今度は右方から左手が。盾はもう無い! なんとか剣で受け止めます。 ニヤニヤと笑うケイオース。しまった……! 今の勇者様は無防備です! 仕上げとばかりに吐き出される闇の槍。 自由のきかぬ体をなんとか無理やりねじり、空中で前傾します。串刺しは免れました。ですが、ああっいけない……! 槍の一本が勇者様の翼を貫きました。 衝撃に、肺の中の空気が口から吐き出されます。グラリ、とバランスを崩した勇者様が落下する……! [足場を生成する](154) 154 **形成される、透き通る足場** -- 勇者様の落ちるその下。足場が形成され、それに気づいた勇者様が残った羽でなんとか体をくるりと回転、足場に着地。 キシリ、と音がしました。 間を置かず、膝にぐっと力を貯めバネのように飛び出す勇者様! 空間に光の線を残し、ケイオースと激突します。 **“ 単調だなァ……!”** 簡単にスキなど見せてくれません。ぞんざいに爪で払われ、またしても吹き飛ばされる勇者様。 ――それは、想定内。 吹き飛んだ先、そこにはすでに足場が形成されていました。勇者様は承知していたかのようにその足場を蹴り、対角へ。そこにも新しい足場。そして斜め上に別の足場。 ケイオースの爪は空を切ります。足場を作っては消し、距離も場所もこまめに変えつつ、徐々にケイオースに近づきます。 卓越したチームワーク。伊達に、勇者様のことを今まで見守ってきたわけではありません。 予測のしづらい変則的な動き。さすがのケイオースもそれを全ては追えず、そして、ああ―― **“ うゴァ……!”** ケイオースの巨大な顔。頬に当たる部分の闇を勇者様の一撃が削り取りました……! そこは後ろの空間が透けて見え、元に戻りません。 ダメージを与えています……! 行ける! 畳み込みましょう……! 勢い込んだその瞬間、 **“ ククク……今度はこちらから行くぞ……!”** [次へ](157) 155 **忘れてしまったのですか!? わたしの名前を?** -- 愕然とした彼の顔が思い浮かぶようです。 もう、しっかりしてくださいね。ですが安心してください。わたしがサポートしているのはこういうときのため。 代わりに叫ぶとしましょう。彼の名を。 [フォーク!](158) 156 **王宮の大ホールで勝利の宴** -- ![ホール](image05.jpg) 「よくぞ我らの悲願を成し遂げた。 そなたこそは真の勇者。 国を代表し、礼を言う」 王様の挨拶です。 「今宵はそなたらの活躍をねぎらい、 宴の席を用意した。 そなたの頼みに従い、縁のある者も招待してある。 どうか、存分に楽しんで行ってくれ」 乾杯の挨拶とともに、挙げられる喝采。 その中心にて、我らの勇者様は恥ずかしげに、もじもじしています。 ウフ。持ち上げられることに慣れていないのでしょうか。偉業を成し遂げようとも、そういうところ、とても可愛いですね。 右隣を見れば、フォークが澄ました顔で、でも眉毛をピクピクさせています。勇者たるものの振る舞いは、どうのこうの言いたそうです。勇者様が、彼の合格を得るのはもう少し先、でしょうか。 「お前ならやってくれると信じていたぜ! 勇者どの!」 早速挨拶にやってきた暑苦しい、いえ、熱血の偉丈夫。パン屋のフレッドです。 勇者様の首にきゅーっと太い腕を回し、ガッハッハと笑っています。 「それじゃ窒息しちまうよ。 勇者の座、争奪戦の一番手を名乗るつもりかい? フン」 ローブを羽織ったおばあさん。メディアおばあさんもいらっしゃっていたのですね! フォークは慌てて立ち上がり、杖の礼を言います。 「いいさいいさ。 その様子じゃ役に立ったみたいじゃないか。 とは言え、 老骨の骨董品に頼ってるようじゃ、 あんたらもまだまだじゃがね。 まあ、使えるんなら当分の間、貸しといてやるよ」 顔をそむけ、やや早口。これは……デレてますね。 はっ! 待ってください。おばあさんがいるということは。 「や、やめ、やめ舐め、あぶっばっ くすぐった、くすぐった……!」 あっっもう遅い。勇者様は床に仰向けに倒れ、その上にワンちゃん様がしっぽを振り振り、お顔を舐めている状態でした。 「おや……?」 大魔法使いエティスが通りかかりました。さすが、この状況を見て何事にも動じません。 「そなたはかつて……」 「やべっ 勇者どの、また後でな!」 フレッドはそそくさと退出します。エティスはまだ話をしたそうでしたが、 「俺はもう引退したんだよ~~~ 時効にしてくれ~~」 去りながら手を振り、何か言っています。何でしょうか。昔は王宮の任務を受けたこともあったと言いますし、色々あったのでしょうね。 「勇者様。この度は、大変なお勤め、 大変ご苦労さまでした。 あなたさまのおかげでペンタウァだけでなく、 世界が救われたと言っても過言ではございません」 麗しい金髪の女性。リオナ姫です。しずしずと勇者様にお礼を言います。もっとも、勇者様はワンちゃんに乗っかかれ、転がった状態ですが。 「お陰様で、わたくしも しばらくは神託のお勤めから解放されますわ。 ありがとうございますね♪」 屈んで、片目をチャーミングにウインク。 ですがわたしには、「漫画読めるぞヤッホー」と変換されて聞こえますよ…… ○--○--○ 宴はまだまだ続きます。 バルコニーにて。熱気から逃れて涼みに来た勇者様。 手すりにもたれ、遠くを見ています。 その瞳は、何を映しているのでしょう。 「おや、勇者どの。こんなところにいましたか」 現れたのは、従者フォーク。静かに、勇者様の隣に並びます。二人して、静かに夜風を感じます。 「思い返せば、大変な旅でしたな……」 そうして静かな時間が流れ……意を決したようにフォークが尋ねます。 「勇者どのはこれからどうされるおつもりか? 王宮からも、要職の打診がありましたでしょう? え――? それは断る? なぜ――――」 勇者様は少し微笑んだまま、まだ遠くを見ています。 そして一言。 「僕は、まだこの世界を見ていたいかな」 それを聞いて、ゴクリと喉を鳴らし。 「ではわたしにお供させてもらえませんか。 その旅に」 予め決めていたかのように、淀みなく。いえ、きっと実際に決めていたのでしょう。 それを聞いて、勇者様は、ああ、ああ、とてつもない、笑顔――― 実際に聞くまでもなく、返事は予想できます―― 157 **ケイオースの姿が霞んだかと思うと……** -- 気づけば2体! 同じ顔で笑うケイオースです! いえ、3体……4体!? **“ フフフ……そちらにできるようなこと、 当然にこちらにも可能というわけだ。 ……消えよ――!”** 囲まれてしまった勇者様。一斉に攻撃を受けます。翼でかわし、盾で受け止め、剣で流しますが相手の手数が多い! しかもそれぞれが少しずつタイミングを変えて来て、あっっ ついに一体の攻撃が勇者様を捉え、大きくぐらつく勇者様の体……! ガシリと爪でその体を持ち上げられてしまいます。激しくもがくも逃れられません! **“ 時間切れ――勇者ごっこは楽しかったか……? 後は一捻りでお前の人生は終わり……”** やられてしまう……! ここはすでに分岐点なのです。ここで勇者様がやられてしまってはもう時を遡ることもできない。やり直しは、ない……! 何か! 何か手は……勇者様が捕まってはわたしたちの干渉も意味がありません。ケイオース、こちらは勇者様だけなのに4体なんて、卑怯な……! 勇者様だけ……? 自分の言葉で気づきました。 察しのいいあなたなら、もう気づいていたでしょうか? 勇者様は、お一人でここまで来たわけではありませんでしたね。 厳しくも優しい、頼りがいのある彼の力無くばここまで来れなかったはず。 彼の力を、今こそ借りましょう。 **呼んでください、彼の名を!** [フォーク,158,155](Q) 158 **極太の光の筋が、駆け抜けて** -- 分裂していたケイオースに着火、そして爆発。分身を消し飛ばしました。 その拍子で勇者様は爪から吹き飛ばされ、あなたの用意した足場にタタンと着地します。 **“ なんだと!?”** そんなケイオースの困惑すらも吹き飛ばすような、大音声。 **「勇者どの!! しっかりなされよ……!!」** 勇者様は、感極まり涙を流します。 「その声は……! …………フォーク!!」 実物を呼べたわけではありません。勇者様やケイオースの戦いの場から少し離れて。あなたのそば。 そこに、光り輝く人型。あくまでそれは、フォークの存在を映した、幻影のようなもの。ですが、その戦いぶり、そして心根。そういったものをわたしたちは、ずっと間近で見ていましたから。 そうして生み出された存在は、限りなく本物に近い……! 「わたしが弓でサポートします。 勇者様は迷うこと無くケイオースを……!」 「うん……!」 [次へ](159) 159 **“ こざかしいわ”** -- ケイオースは姿を一層巨大にして、勇者様に襲いかかります。 翼を使い、舞うようにかわす勇者様。その隙間に走る、矢。 煙たげ爪で払うケイオース。その瞬間。そのスキを逃さず、回り込んだ勇者様の斬撃。ケイオースの右爪を切り払います。 やりました! 凶悪な武器の一つを破壊しました! 悲鳴のような、高い音が響くも、動きの止まらぬケイオース。ぷくっと膨らんだかと思うと、全身から棘のような鋭い突起が……! いち早く危険を察知するフォーク。 「勇者様! 身を守ってください!」 ケイオースの、炸裂。棘があたり一面に放射されます。死の嵐……! 至近距離にいた勇者様が危ない! 勇者様はなんとか盾に身を隠し暴風雨を耐えています。守りきれぬ足、翼が棘の群れにやられズタズタになっていきます。ああ、ああ、そんな……! それで終わりではありません。身動きのとれぬ勇者様に向け、薙ぎ払われる大爪。空間を切り裂きつつ、勇者様を飲み込み、ああああ…… **“ !?”** 手応えの無さ。それにケイオースが気づいたときには、頭上にまわった勇者様の、落下速度を乗せた斬撃。防ぐこと叶わず、切り飛ばされる左爪。 **“ ギオオオオオオオオオオ”** 「我々だけでここまで来たわけではないからな。 お借りしてきた力、全て使ってお前を倒す」 いつの間にか、フォークの手には、弓の代わりに杖が握られていました。 メディアおばあさまの幻術……! **“ 許さんぞ……消滅させてやる。 二度と巻き戻しのできぬ恐怖を存分に味あわせて 存在を消し去ってやる……!”** ケイオース。あなたは恐ろしい敵。ですが、あなたになくて、こちらにあるもの。仲間の存在。そしてわたしたち精霊と勇者様のつながり。 あなたはそれを、自分で捨ててしまった。 ですから、勝つのは……わたしたちです。 **“ こざかしいわ。 運命を弄ぶクズも、それをありがたがる無能どもも、 みんな消し去ってやる……!”** 三本の、螺旋を描いた矢がケイオースを穿たんと、飛来します。それを防ぐすべはもうケイオースにはないはず……! いえ。目をギラギラと輝かせたケイオース。波動。それだけで矢の侵攻が徐々に弱まっていきます。押されている……! けれど。その螺旋の中から飛び出してきた、勇者様。謎の波動の中を、勢いを殺されること無く、ケイオースの中心へと飛び込みます。 **“ オガアア ガガガガガガ ギギギアアアア――――――!!”** 閃光。光の渦。 徐々に晴れた視界の先に。 ケイオースは、跡形もなく、姿を消し去っていました。 やったのです―――――― [次へ](160) 160 **ペコリと頭を下げる勇者様** -- 悲願。闇の眷属ケイオースを討伐することができました。 彼は恐ろしい敵でしたが、それと同時に、わたしたちの心にしこりを残すような存在でもありました―― わたしたちは、人々を導く存在。そのために干渉し、運命を捻じ曲げてしまうこともありうる。わたしたちは、勇者様を、操り人形にしてしまったのでしょうか……? 勇者様はケイオースの消えた先の虚空を見つめます。 それもつかの間。こちらを振り返ると。 ペコリと頭を下げ、ただ「ありがとう」と。 信じられません。 ありがとうを言いたいのはこちらです。よくぞ一緒に戦ってくれました。 こちらこそ、本当にありがとうございました…… フフ、わたしまた涙が出てきていましましたよ…… 前が見えなくなってしまいましたけど、もちろんあなたも、勇者様に頭を下げていますよね……? わたし、わかってるんですから…… [次へ](79) 162 **光 運 ** -- ![---](image04.jpg) 様 ! た オース …… 無 **視界全体を覆う、光** [次へ](149) 163 **コーヒーブレイク** -- 少し休憩を入れましょうか。少し話が長くなってきましたからね。お茶でも飲んで、休んでください。 あなたは、この状態を保存してもしなくても構いません。保存したい場合は、SystemからBackupを選んでください。保存しない場合も、最初のシーンからここまでスキップが可能ですので、そちらをお試しください。 [次へ](76)